異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

タジリユウ

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第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?

第207話 パイ作り

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「イド殿、こんな感じで大丈夫でしょうか?」

「は、はい! 大丈夫だと思いますよ」


 馬車の運用を始めてから数日が経ったが、今のところは問題もなく順調だ。さすがにまだそこまで馬車を利用するお客さんが増えたわけではないが、今後は口コミなどで少しずつ増えていくだろう。

 今日は第三王女のエリザさんがキャンプ場に来ているわけだが、新しくできたパン窯を見て、お菓子を作ってみたいという話になった。そこでパン窯を使ったスイーツを調べてみたところ、パイはどうかという話になったわけだ。

 果物や野菜や小麦粉などの材料のほうはキャンプ場のほうで用意することができたので、材料費を払ってもらってみんなでパイを作ることにした。

 そして今は女騎士団のみんなと俺とイドでパイ生地を作っている。女騎士団の隊長であるベレーさんとイドが隣同士でパイ生地をこねている光景はなかなか新鮮だな。

「ありがとうございます。ですが思ったよりも料理をするというのは大変な作業なんですね」

「そうなんですよね。僕も力がないからこういう作業は大変で……でも、完成した料理やお菓子がおいしくできていたら、とっても嬉しいですよ」

「なるほど、それを聞くと完成が楽しみですね」

「はい! 頑張って作りましょう」

 そう、パイ生地は一から作ると結構手間がかかるのだ。最近ではパイシートなんてものを簡単に購入できるが、実際にパイ生地から作るとなると、生地を作ったあとに少し寝かせて、そのあとに何度も伸ばして折りたたまないといけない。

 ぶっちゃけ家やキャンプ場で作るのなら、普通にパイシートを購入したほうがいい気がする。

 俺もパイ生地を一から作るのは初めてだが、結構力も必要になるんだよな。確かにこれはイドやサリアだと結構きつい作業になるかもしれない。ベレーさん達女騎士団みんなは余裕そうであるがな。

「よし、これでパイ生地のほうは完成だな。生地を少し寝かせるから、その間にパイの中身を作ることにしよう」

「ユウスケ殿、寝かせるとは?」

「ああ、生地を涼しいところでしばらく置いておくって意味ですよ」

「生地を作ってすぐに焼くよりも生地が均一になってサクサクになるんですよ」

「なるほど」

 どうやら女騎士団長のベレーさんは料理やお菓子作りをほとんどしたことがないらしく、いろいろと俺やイドに聞きながら作業をしていた。

 イドも最近は少しずつキャンプ場で料理だけでなく、外での作業も積極的におこなうようになってきた。もう体調が悪くて休むようなこともほとんどない。今日もお客さん達とお菓子を作る人を募集したところ、すぐに手を挙げてくれた。

 新たに従業員の手伝いができるアリエスもキャンプ場で働いてくれることによって、アリエスが街に出かけている時間や食事時以外の時間帯なら数人が抜けても大丈夫になったからな。

「それじゃあ、こっちは果物を切っていくから、イドとベレーさんはそっちの野菜を温めてから潰してペースト状にしてくれ」

「はい」

 今回は3種類のパイを作ってみることにした。これだけあれば一種類くらい失敗しても大丈夫だろうからな。

 ひとつ目はこちらの世界で購入したリンゴのような果物を使ったアップルパイだ。リンゴを小さく切って、砂糖とレモン汁と一緒に鍋へ入れて加熱する。しんなりとしてきたら火からおろして、できあがったパイ生地の上にのせてパン窯で熱して完成だ。

 ふたつ目はイド達に任せたパンプキンパイ。熱したかぼちゃをくりぬいて、砂糖やバターや生クリームを加えて混ぜていく。この時に裏ごしすると食感が滑らかになるとレシピ本には書いてあった。それをパイ生地に乗せて焼く。

 みっつ目はチョコレートパイ。これはシンプルにパイ生地にチョコレートを挟むだけだ。他のふたつと違ってこっちは小さめのサイズのをいくつも作る。こっちのパイは準備する必要がない。

「ベレーさん、こっちの野菜をこうやって切ってくださいね」

「うむ、了解した」

 エリザさんやベレーさん、執事のルパートさん達はイドが亜人であることを気にしたりしないのかとも思ったが、全然気にしていないようだ。むしろメイド服姿のイドをめちゃくちゃ可愛がっていた。

 一応ルパートさんに大丈夫なのか聞いてみたら、主人であるエリザさんが亜人を差別していないので、騎士団や執事であるルパートさんも気にしないらしい。主人にそこまで合わせるのはある意味騎士団と執事の鏡であると言うべきなのかな。

 なんにせよ、イドやウド達みたいな亜人が気にならないようなのでなによりである。

「よし、あとはさっき休ませていたパイ生地に盛り付けてと……サリア、その間にパン窯を熱しておいてくれ」

「はい、ユウスケさん」

 サリアに頼んでパン窯に火を入れてもらう。

 なんだかんだでエリザさん達にキャンプ場の従業員の手をたくさん貸している。しかし言っておくがエリザさんが第三王女だからではないぞ。純粋に俺達従業員もパン窯で焼いたパイが食べたいからである。

 だって焼き立てのパイとか超食べてみたいじゃん! そりゃストアで購入したケーキや和菓子なんかもとてもおいしいが、自分達で作った焼き立てのパイとか絶対おいしいに決まっている!

 そのあたりは従業員の総意だったので、エリザさん達に協力しているというわけだ。というわけで、みんなの分もたくさん作ってあるので、焼き上がったら従業員のみんなでもおいしくいただくぞ。

「……焼き色はいい感じですね。良い香りもしますし、これくらいでどうでしょうか?」

「うん、これで完成だな! さて、それじゃあ早速みんなで食べてみよう!」
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