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第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?
第206話 馬車の利点
しおりを挟む「それにしても、あの馬車の乗り心地はなんなの! うちの商業ギルドで使っている馬車よりもよっぽど良かったよ!」
「ええ、私も本当に驚きました。椅子が柔らかいのもそうですが、あの振動の少なさは他の馬車とまったく異なっておりましたよ」
ジルベールさんとザールさんを案内して、テントやテーブルを組み立てるのを手伝っている。
「ドワーフのみんなが張り切ってくれましたよ。見た目は木造ですけれど、その中は軽くて丈夫な素材を使っていて弓矢や魔法にも強いらしいので、盗賊とかに襲われても大丈夫です。振動の少なさは振動を抑える機能やちょっと高級なソファのおかげですよ」
さらにはオブリさんの魔道具なんかも搭載されているということは秘密にしておこう。
「商業ギルドの馬車も新調したほうがいいかもしれないね。さすがに宿泊施設の馬車に負けていたら、いろいろとねえ……」
「確かにギルドマスターの言う通りかもしれません……」
「まあ、うちのキャンプ場は少し特殊なので。それに変異種の素材を売却したお金のほとんどをつぎ込んだので、かなりお高いですよ」
「う~ん、さすがに今は無理かな。まだユウスケくんから買い取った例の変異種の牙も売却できてないからね」
「あっ、そうなんですね」
「結局有名な貴族や王族達の間でオークションを開催することになったから、他国の有力者の人達に招待状を送ったり、いろいろと時間も手間がかかっているからね。あれだけ巨大な変異種の牙だから、きっと大勢の人がほしがると思うよ」
「うわあ……」
多少安くてもジルベールさん達商業ギルドに売却して良かったな。そんな面倒なオークションなんて絶対に関わりたくない。
「他の冒険者の方々から買い取った変異種の素材も冒険者ギルドや商業ギルドを通して市場に出て、久しぶりに街も賑わっておりますよ。これもユウスケさん達のおかげです」
「そう言っていただけると嬉しいですね」
どうやら他の冒険者が冒険者ギルドや商業ギルドに売却した変異種の素材が街を賑わしているらしい。あれだけ大きな変異種の素材だからな、いろいろと役に立つに違いない。
「それにしてもあのイノシシの変異種はとってもおいしかったなあ」
「そうですね。ユウスケさんにいただいた変異種の燻製肉はとてもおいしかったです。妻もとても喜んでくれました」
「それはよかったです。あれだけおいしいお肉もめったに食べられませんからね」
変異種を倒してみんなで宴会したのも、実際には少し前なんだよな。本当にあの変異種の肉はうまかったなあ。
「さて、今日は日帰りだしどうしようかな。いつものカレーでもいいけれど……」
「私も何にしましょうかね」
今日はジルベールさんもザールさんも日帰りで、夕方の馬車に乗って帰るらしい。
商業ギルドにこのキャンプ場で新しく馬車を購入したという告知を見て、大親方達が協力して作った馬車がどんな馬車か気になったようだ。量産が可能かや、どんな技術が使われているかが、商業ギルドとしても気になったのかもしれない。
どちらかというと今日は仕事で来たのだろうな。相変わらず商売の匂いには敏感なようだ。
「新しいメニューだと、果物を使ったデザートを試しに出しています。それとこのキャンプ場に新しくパン窯を設置しましたので、焼き立てのパンを使った料理を限定数で出していますよ」
「へえ~パン窯なんて作ったんだ! 焼き立てのパンが食べられるなんていいね」
「さすがに毎日パンを焼いて販売するのは手間なので、気が向いたら少しだけ販売する感じですね。まあ、個人的な趣味みたいなものです」
なのでいつもキャンプ場で朝食に出しているホットサンドのパンも普通に市場で購入してきたパンを使う。市販のパンは少し硬いが、保存期間は長いし、ホットサンドのパンとして使うならこのパンで十分である。
「それはせっかくなら食べておかないとね! ふ~ん、メニューに書いてあるのはワインとかに合うつまみなんだ。それじゃあ今日はワインとそのパン料理に他のおつまみをいくつかもらおうかな」
「……ギルドマスター、街に戻ったらまだ仕事が残っておりますよ」
「相変わらずザールは真面目だなあ。ワイン1杯くらいなら絶対にバレないから大丈夫。それに帰りはまた馬車に乗せてもらうからね。仮に酔っぱらってしまったとしても街までは安全に帰れるから大丈夫だよ」
そう、馬車にはもうひとつ利点があって、日帰りでこのキャンプ場に来た場合でもお酒を飲むことができるようになる。
街からこのキャンプ場までは歩いて約2時間はかかる。さすがに酒を飲んで酔っ払った状態でその距離の移動は難しい。それにキャンプ場までの道のりには盗賊や魔物が出てくる可能性もある。この世界で酔っ払って森の中や道を歩くのは自殺行為だ。
大親方達が作ってくれた馬車なら、このキャンプ場に来てくれるお客さんを安全に運ぶことができるからな。
「はあ……本当に一杯だけですよ。それでは私もこのパンの料理とフルーツのデザートをいただきますね。飲み物はミルクでお願いします」
「はい、ありがとうございます。少々お待ちください」
ちなみにこのあとジルベールさんはワイン1杯で止めることができずに3~4杯を飲んで帰っていき、酒の臭いで副ギルドマスターに酒を飲んだことがバレてしまって怒られたと後日ザールさんから聞いた。
せっかく変異種の素材を最速で大量に仕入れることができて大手柄を上げたのに、ジルベールさんらしいと言えばジルベールさんらしい。
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