異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

タジリユウ

文字の大きさ
上 下
69 / 165
第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?

第198話 変異種の牙の短刀

しおりを挟む

「それにしても相変わらず大親方達は仕事が早いな」

「ええ。あの大きなアリエスの厩舎をたった数時間で建てた時はさすがに驚きましたね」

 ソニアの言う通り、木材を用意していたとはいえ、あれだけ立派な厩舎をあの短時間で建てたのは本当にすごかった。

 そして昨日お弟子さんから連絡があったのだが、馬車やアルジャの短剣が完成したらしい。今日は街に行って買い物をするついでにそれらを受取りに行く予定だ。

「ブルルル!」

「街に行くのは楽しみだって言っているニャ!」

「アウルクも馬と一緒で普通に街に入れるはずです」
 
「大人しくしていれば街に入っても問題ないらしいからな。あんまりはしゃぎすぎないように気を付けるんだぞ」

「ブルルル」

 今回は俺とソニアとアルエちゃんとアルジャと一緒に街へ向かっている。

 大親方達から馬車と短剣を受取るから、アリエスの言葉が分かるアルエちゃんと、短剣の調整が必要になるかもしれないアルジャが同行してくれている。



「ブルルル!」

「人がいっぱいいて驚くだろ。とりあえず先に買い物に行くとしよう。そういえばアリエスも何かほしい物があったら声を掛けてくれよ」

「ブルルル」

 街の中にはアリエスと一緒に問題なく入ることができた。アーロさんの工房に行く前に先に買い物をすませておくとしよう。



 買い物を終えてアーロさんの工房へとやってきた。結局アリエスがほしいものは市場では見つからなかったな。またほしい物があれば買ってあげるとしよう。

「おお~ダルガの工房も大きかったけれど、アーロさんの工房もかなり大きいな」

「この街では御三方とも、鍛冶師としてとても有名ですからね」

 いつもキャンプ場ではお酒を飲み、料理を食べて将棋をしているだけに見えるが、3人とも元は有名な鍛冶師の親方なんだよな。

 目の前にあるアーロさんの工房はこの前見たダルガ工房と同じくらい大きな工房だった。アリエスの馬車とアルジャの短剣はここで作っていたらしい。

「おお、ユウスケ。こっちじゃ、こっちじゃ!」

 中に入って受付の人にアーロさん達の居場所を聞こうとしたところ、工房の中にいたダルガに呼び止められた。どうやら俺が頼んだものはアーロさんの工房の裏で作っていたらしい。

「ユウスケ殿、すまんな。なにぶん引退した身だから、工房の裏を借りておったのだ」

「こちらこそ、こんなに早くお願いしたものを作ってくれてありがとうございました」

 工房の裏に行くと、アーロさんやセオドさんやいつもキャンプ場に来てくれているお弟子さん達も一緒にいた。

「さて、まずはアルジャ殿の短刀からであるな。こいつは例の変異種の牙を研いで鍛えあげたものだ。もとにした素材が良いから、なかなか良いものができたと思うぞ」

「こ、これはなんと見事な!」

 アルジャがアーロさんから受け取った刀はイノシシ型変異種の真っ黒な牙からできた漆黒の短刀であった。牙から作る刀とはどんなものになるのかと思っていたが、黒い刀身をした斬れ味のよさそうな短刀に見える。

「これは素晴らしい刀ですね。一級のAランク冒険者がもつ武器と同等かそれ以上のものと見ます」

「………………」

 どうやらこの短刀のすごさが分かっていないのは俺だけのようだ。普段戦闘なんかしないから武器の良し悪しなんてわからんよ。

「ふむ、ソニア殿にもそう言ってもらえると心強いのう。アルジャ殿、持ち手部分の調整をするので、試し斬りをしてみてくれんか?」

「はい、もちろんです」

 お弟子さん達が丸太を何本か持ってきてアルジャの前に置いた。結構太い丸太だけれど、小型の短刀であんなものを斬れるのだろうか。普通なら刃こぼれしたり、刃が曲がってしまいそうなところだ。

 アルジャが変異種の短刀で軽く素振りをしている。アルジャも元Bランク冒険者だったこともあって、その軽い素振りですら、俺にはまともに目で追うことができない。

 シュッ、シュッ

「……素晴らしい斬れ味ですね。これほどの大きさの丸太がまるで手ごたえなく両断できました」

 アルジャが消えたと思ったら、立ててあった丸太が一瞬で両断されていた。それも一本の丸太を真っ二つに両断するのではなく、1本の丸太が4つに斬れていた。

「ふむ、見事な腕前であるな」

「いえ、アーロさんが鍛えてくれたこの短刀の斬れ味が凄まじいだけです。やはり私には不釣り合いな気が……」

「なあに、ワシが見る限り、アルジャ殿にその資格は十分にあるぞ。これだけできれば十分すぎるわい」

「あ、ありがとうございます! この刀に恥じぬよう、精進を続けていきます」

「うむ。じゃが所詮武器は武器だからのう。どうしたって折れるものは折れるし、刃こぼれしたり曲がるのも仕方のないことだ。あんまり気負うものでもないぞ」

「はい!」

 どうやら武器の性能的にもアルジャの腕的にも問題がないようでなによりだ。

「それでは握り心地や細かい調整をするとしよう。ダルガ、セオド、馬車のほうの説明は任せたぞ」

「おう、任せておけ。それじゃあユウスケ、馬車はこっちにあるぞ」
しおりを挟む
感想 434

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。