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第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?

第162話 肉の交換

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「ユウスケさんサンドラさんがいらっしゃいましたけれど、入ってもらって大丈夫ですか?」

 そういえばいつもなら今日はサンドラが来る週末だったか。昨日と今日は変異種がこの辺りに現れたということで、新しくキャンプ場にやってきたお客さんはいなかったが、この辺りにいなかったサンドラは知らなかったのだろう。

「ありがとう、サリア。入ってもらって大丈夫だ。というか良い時に来てくれたな!」

 そうだ、サンドラがいたな! あの食いしん坊の古代竜なら、結構な量を食べてくれるはずだ。余って処分できなくなるなるくらいなら、サンドラに食べてもらおう。



「ユウスケ、また来たぞ!」

「ああ。今日はよく来てくれたな、サンドラ!」

「な、なんじゃ。今日はやけにニヤニヤしておるな……何か企んでおるのではないか?」

「いやいや、企むだなんてとんでもない。良いタイミングで来てくれたものだからさ」

 ちょうど良いタイミングでサンドラが来てくれたから少しニヤニヤしてしまったようだ。しかし、何か企んでいるわけではない。むしろサンドラにとってもいい話である。

「良いタイミング……そういえば、なにやら良い匂いがするのう」

 おっと目ざとい、というよりは鼻ざといとでもいうのかな。変異種料理の匂いをすでに嗅ぎつけているようだ。

「サンドラは変異種って知っているか?」

「うむ。突然変異した魔物のことじゃろ。普通の魔物よりも強かったり、知能が高いことが多いようじゃな。まあ妾からしたら他の魔物と大して変わらんがな」

 サンドラも変異種のことを知っているらしい。しかし、古代竜であるサンドラにとってはそれほどの脅威にはならないらしい。

 とはいえ今回討伐したあの巨大な変異種は、変異種の中でも相当強いとみんなも言っていたし、特にあの黒い光線を防げるのかはわからないと思うけどな。

「そして何より、普通の魔物よりもうまいのじゃ!」

「………………」

 どうやらサンドラにとっては変異種もただの食糧らしい。そもそも空を自在に飛べる巨大なドラゴンということで、戦闘でサンドラに対抗できる相手はそうそういないだろう。

「実はな、昨日その変異種がこのキャンプ場を狙ってきたんだ。俺の結界やお客さん達の力を借りてなんとか討伐することができた」

「ほう、やるではないか! まあ妾のブレスを防げたのじゃから、当然じゃな」

「今回討伐したのは巨大なイノシシ型の変異種だったけれど、かなり強かったと思うぞ。それで討伐できたのは良いけれど、あまりに巨大すぎてみんなで食べきれなくてな。せっかくだから食べていかないか?」

「おお、良いのか! もちろん食べるぞ!」

「ああ。ただし、ひとつだけ条件がある。今回変異種の料理をあげる代わりに、今度珍しい食材を手に入れたら分けてくれないか?」

 先程みんなとこの件について話をした。余った変異種の肉をサンドラに渡す代わりとして、以前分けてもらったアースドラゴンの肉のように、今度珍しい食材を手に入れたら分けてもらおうということになった。

 そしてサンドラからもらった食材を以前に行ったサービスデーのように提供するわけだ。サンドラの持っている高価な物と交換してもらってもいいのだが、どちらも価値がわからないし、お金に換金する手間もある。

 サンドラが古代竜であることをみんなには話していないが、以前に提供した特別メニューの謎肉を提供してくれたのはサンドラだと伝えたところ、みんな快くオッケーしてくれた。

「うむ、そんなことなら構わんぞ。また珍しい肉を手に入れたら持ってくる!」

 目をキラキラ輝かせながら即答する赤い髪の少女。相変わらずこの小さな少女が、巨大な古代竜ということは信じられないな。

 どうやら変異種の肉にものすごく期待しているようだ。やはりサンドラでも変異種の肉には興味があるらしい。



「お待たせ。いろいろな料理を作ったから楽しんでくれ」

「おお、すごい量じゃな! それにとても良い匂いじゃ!」

 みんなで手分けをして、昨日と同様に変異種の肉を使って様々な料理を作った。管理棟の前に置いた料理とは別にサンドラ用の料理の山を数人で大きなテーブルに広げていく。

 他のみんなも変異種の解体作業を終えて、温泉に入ったあとは昨日の宴会の続きである。2日連続となってしまうが、それでも変異種の肉はうまいからな。

「おお、これはうまいのじゃ! 変異種の肉を食べたのは数十年ぶりかもしれんのう!」

 相変わらずとてもおいしそうに食べてくれるな。こちらも作る甲斐があるというものだ。

「俺達が倒したのは山みたいなイノシシ型の魔物だったけど、他にはどんなのがいるんだ?」

「妾が食べたことがあるのは少し大きなシカとヘビの変異種じゃな。体内の魔力が他の魔物とは明らかに違うからすぐにわかるぞ」

 なるほど、変異種は魔力で判断するのか……まあ魔力なんて俺には分からないんだけどね。

「大きさ的には竜の時のサンドラよりも大きかったりするのか?」

「そんなわけないじゃろ。せいぜいユウスケの数倍くらいじゃな」

 今回の変異種は竜の時のサンドラよりも全然大きかった。やはり今回の変異種の大きさが異常だったらしい。

「ふ~む、普通にブレスで焼くよりも全然うまいのじゃ。相変わらず人間の作る料理は不思議じゃな」

「人は長い歴史をかけていろんな調味料や調理方法を編み出してきたわけだからな。今度サンドラも料理とかしてみるか?」

「もぐもぐ……妾は食べるだけで十分なのじゃ!」

 ……まあそんな感じはするよな。

「ユウスケ殿、サンドラ殿。少しお邪魔して良いかのう?」

「よう、ユウスケさん、お嬢ちゃん」

「お邪魔するぜ」

「ええ、もちろん。サンドラもいいよな?」

「うむ、構わんのじゃ」

 オブリさんとランドさんとバーナルさんが、サンドラのいるテーブルへとやってきた。
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