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第5章 いろんな客とトラブルがやってきた!?

第151話 防壁

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 土魔法によってできた巨大な防壁。高さは変異種の高さを超え、横には数百m広がっている巨大な壁である。下のほうには俺達が通れる大きさの通路があり、それを通って防壁の中へと入る。

 とりあえずここまで変異種を誘い出すことには成功した。次の問題はこの防壁が変異種の体当たりに耐えられるかだが……

「フゴ!? フゴオオオ!」

 よし、問題なさそうだ。変異種が防壁を壊そうと、その巨体を押し当てているが、この防壁はびくともしていない。もちろんこの土魔法によってできた防壁自体に、それほどの強度はない。

 土魔法を使える者が協力して作り上げた巨大な土の壁。そこに俺の結界能力を使うことによって、絶対に壊れない防壁ができあがったというわけだ。とはいえ俺の結界能力の範囲には限度があるので、変異種が左右に動いたら結界の位置を調整しないといけないけどな。

「よし、防壁は問題ない。防壁の上に登って攻撃を開始してくれ!」

「「「おお!」」」

 防壁から離れて、変異種が防壁を壊せないことを確認してから、防壁の上より攻撃を開始する。結界の外からの攻撃は通さないが、結界の中から外への遠距離攻撃は通ることを利用した今の俺達が取れる無敵の戦法だ。

「よし、ここからはワシらもいくぞ!」

「おう、いくぞ!」

「いくっす!」

 防壁の上に設置したバリスタなどの弓兵器から大型の矢が発射される。大親方達がたった1日で作り上げた、普通のバリスタの何倍の大きさもある特大バリスタだ。

「フゴオオ!」

 おお、効いている! ちゃんとあの変異種の身体に巨大な矢が突き刺さっている!

 バリスタだけではなく矢も特別製で、巨大な金属製の鋭い矢にオブリさんが作った魔道具が組み込まれている。矢が刺さると同時に、先端から水属性や風属性の魔法が炸裂するといった具合だ。

 ……とんでもない兵器をたった1日で作ってくれたもんだよ。この威力なら街の大きな防壁も易々と突き破れそうだ。いや、そんなことはしないけれども。

「おっしゃあ! 次弾装填するぜ!」

「ああ!」

 合計で3つある巨大バリスタをランドさんやゴートさん達が手伝い、次々と次弾を装填して発射していく。

 本来なら街の防壁も一発で破壊できそうなほどの威力だが、巨大な変異種にとってはそこまで大きなダメージではないらしい。しかし確実にダメージは入っており、変異種の身体に次々と巨大な矢が突き刺さって、血が流れていく。

「私も本気で行きますよ! 風の戦鎚よ、穿て!」

 風を纏ったソニアの矢が変異種の身体に突き刺さる。ソニアの矢は変異種の身体からしたら、ほんの小さなトゲくらいの大きさだが、矢に風魔法を付与しているため、変異種の身体に当たると同時に周囲の肉をえぐり取っていく。

 さらに恐ろしいことに、あれほどの威力の弓矢を相当なスピードで連射している。あんな速くて威力のある弓矢をこのスピードで連射されたら、普通の人ならソニアに近付く前に消し飛んでいるな……

 逃げようとしてもソニアの弓の精度は以前に見せてもらった通りだ。おそらく逃げ出すこともできないだろう。これがAランク冒険者の中でもトップクラスの実力の持ち主なのか……うん、今後はソニアをあまり怒らせないようにしておこう。

「さて、ここからはワシらも本気でいくぞ! ウォーターレイル!」

「私達もいきます! ストーンブラスト!」

「最初のは手加減していただけだからね! ウインドブラスト!」

 エルフのみんなやシャロアさん達の魔法攻撃の威力もすさまじい。ものすごい数の威力の高い攻撃魔法が変異種を襲う。

 先程までの魔法攻撃は、変異種を防壁があり有利に戦えるこの場所におびき寄せるためだったので、威力はだいぶ落としてもらっていた。しかし今は熟練の魔法使い達の本気の魔法が変異種を襲う。

「フゴオオ……」

 いくら巨大な変異種とはいえ、これだけの集中砲火を浴びて無事なわけがない。大きな傷をいくつも負って、たまらず膝をついた。

 こちらの狙いは持久戦でもある。あれほどの巨大な身体に一撃で大きなダメージを与えることは難しいが、安全な防壁からひたすら攻撃することによって、変異種に傷を作り血を流させる。

 どんな巨大であっても、生物は生物だ。身体を流れる血液の量には限度があるに違いない。そのためここにきてからは傷口を焼いて塞がないように、火魔法以外の魔法で攻撃をしてもらっている。そして、一度傷を作って血を流させたら、別の部位を狙って、さらに傷を増やすことを狙ってもらっている。

 巨大な身体というのも大きな力だが、手数による攻撃の連打も戦闘では脅威だ。……まあ今回の場合は強い威力の武器や魔法や弓の使い手がこのキャンプ場に大勢いたからできたことでもあるがな。

「よし、いい感じだ!」

「ええ、このまま押し切りましょう!」

 しかし、この変異種は全然引かないな。この先にあるキャンプ場や街を狙わずに引くようなら、リスクを考えてこちらから深追いする気はなかったのだが、今もみんなの攻撃を受けつつ、防壁をなんとかしようと体当たりをしている。

 だが、結界の能力により、防壁はびくともしていない。どうやらこの戦い方で正解だったようだ。
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