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ずっと一緒にいたいから
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「あ、カエデくん。シャワー、借りてもいい……?」
「うん、何でも好きに使ってくれていいよ~」
「ありがと」
「だって、もう亜矢さんの家も同然だからね?」
「……はぁ???」
「え。だって、一緒に住むでしょ? 別々に住む意味、ないでしょ?」
「……意味、って」
「それはまた後で話そ。とりあえずシャワーどうぞ。晩ご飯作ってくるね」
「……」
一緒に住む……?
あまりにもくすぐったい気持ちになりながら、カエデくんが部屋から出て行くのを見送った。
相変わらず豪華な浴室でシャワーを浴びながら、私はさっきの会話を考えていた。
そりゃあ、一緒に住めば私にはいっぱいメリットがある。毎日カエデくんの作る美味しいご飯が食べられる。会社にもすごく近い。何より、いつもカエデくんと一緒に過ごせる。あのふわふわの笑顔を見て、毎日しあわせになれる。
でも……。私と一緒に住んで、カエデくんに何かメリットある? 何もないんじゃないかな。与えてもらうばかりで、私はカエデくんにしてあげられるものが何もない。
そんなの公平じゃない。
そもそも私のどこが良いのか、さっぱり分からない。それは過去に付き合ってきた人たちにも言えるし、彼らがそれを証明しているとも言える。なぜなら、結局みんな私に愛想が尽きて別れているのだから……。
そう考えるとますます「私なんかどこが良いんだろう?」と思ってしまう。
一緒に住むことで彼が被るデメリットが大きすぎて、首を縦に振るという選択ができそうにない。私だけがおいしい思いをするのはどう考えたって不公平だ。
私のために用意してくれていたらしい部屋着に身を包みカエデくんの元へと行くと、美味しそうな料理をたくさん用意して私を待っていてくれた。相変わらずとても美味しくて、本当にしあわせな気分になる。
カエデくんは天才すぎる。自分には絶対に出来ないから、ますます強くそう思う。
デザートまで美味しくいただいて、一緒に後片付けをしながら楽しくおしゃべりをして……。
こんな風に毎日穏やかに過ごせたらきっととてもしあわせで楽しいだろう。
「……それでさぁ、亜矢さん」
「うん、なに?」
「もう、今日から一緒に住むのでいいよね?」
「……はい??」
「亜矢さんの借りてる部屋にある荷物はゆっくりこっちに運んでくれればいいから」
「……ええ??」
「……ん?」
いやいや、「ん?」じゃないのよ。
どうしてそうなる……?
「おかしいおかしいっ。私の意見も聞こうよ!?」
「いいじゃん。一緒に住んだ方が、毎日こうやってイチャイチャ出来るよ?」
布巾でテーブルを拭いていた私を、カエデくんが後ろからギュッと抱きしめる。耳元で「ね、どう?」と甘い声で囁かれて一気に体温が上昇した。
心臓に悪い。
普段はその辺でふわふわ可愛さを振りまいてるのに、こうやって一気に距離を詰めて密着してくるの、本当にズルい。
「一緒に、住もう?」
「でも……」
「亜矢さんは何が気になってるの? 僕と一緒に住むの、不安?」
「そ、そうじゃないけど……」
「ん?」
後ろから私を抱きしめたまま顔をのぞき込まれ、すぐ真横にカエデくんの綺麗な顔が迫る。
「気になってることがあるなら遠慮なく言って?」
「それは、その……」
「ん?」
「私、カエデくんの足手まといにしかならないし……」
「え、なんで?」
「だって……料理出来ないし」
「だからそれは僕がやるってば」
「それに、仕事を優先しがちだし」
「体を壊さない程度なら問題ないよ? もちろん僕のこともちゃんとかまってね?」
「そ、それはまぁ、もちろん……」
「ふふっ。はい、じゃあ決まりっ。えへへ、やったー」
「……」
完全に私の負けだ。心の準備も出来ないまま敗北を認めることになるとはね。
諦めて小さくため息をついたところで手に持っていた布巾を取り上げられて、頬に軽くキスをされた。
「じゃ、早速イチャイチャしちゃお?」
「……ええ?」
私の手から奪った布巾をテーブルの上にポイと放り投げ、ヒョイと私を抱き上げた。
慌ててもがく私に「暴れるのはベッドの上で、ね?」なんて恥ずかしい言葉を吐いて、そのままベッドルームへと向かう。
「か、カエデくん……っ」
「んー? なぁに?」
何、と聞きながら、これは聞く耳を持たないやつだ……。さすがにそろそろ彼のパターンが分かってきて、私は諦めて彼にギュッとしがみついた。
私の反応を見て「ふふっ」って笑っている。
「うん、何でも好きに使ってくれていいよ~」
「ありがと」
「だって、もう亜矢さんの家も同然だからね?」
「……はぁ???」
「え。だって、一緒に住むでしょ? 別々に住む意味、ないでしょ?」
「……意味、って」
「それはまた後で話そ。とりあえずシャワーどうぞ。晩ご飯作ってくるね」
「……」
一緒に住む……?
あまりにもくすぐったい気持ちになりながら、カエデくんが部屋から出て行くのを見送った。
相変わらず豪華な浴室でシャワーを浴びながら、私はさっきの会話を考えていた。
そりゃあ、一緒に住めば私にはいっぱいメリットがある。毎日カエデくんの作る美味しいご飯が食べられる。会社にもすごく近い。何より、いつもカエデくんと一緒に過ごせる。あのふわふわの笑顔を見て、毎日しあわせになれる。
でも……。私と一緒に住んで、カエデくんに何かメリットある? 何もないんじゃないかな。与えてもらうばかりで、私はカエデくんにしてあげられるものが何もない。
そんなの公平じゃない。
そもそも私のどこが良いのか、さっぱり分からない。それは過去に付き合ってきた人たちにも言えるし、彼らがそれを証明しているとも言える。なぜなら、結局みんな私に愛想が尽きて別れているのだから……。
そう考えるとますます「私なんかどこが良いんだろう?」と思ってしまう。
一緒に住むことで彼が被るデメリットが大きすぎて、首を縦に振るという選択ができそうにない。私だけがおいしい思いをするのはどう考えたって不公平だ。
私のために用意してくれていたらしい部屋着に身を包みカエデくんの元へと行くと、美味しそうな料理をたくさん用意して私を待っていてくれた。相変わらずとても美味しくて、本当にしあわせな気分になる。
カエデくんは天才すぎる。自分には絶対に出来ないから、ますます強くそう思う。
デザートまで美味しくいただいて、一緒に後片付けをしながら楽しくおしゃべりをして……。
こんな風に毎日穏やかに過ごせたらきっととてもしあわせで楽しいだろう。
「……それでさぁ、亜矢さん」
「うん、なに?」
「もう、今日から一緒に住むのでいいよね?」
「……はい??」
「亜矢さんの借りてる部屋にある荷物はゆっくりこっちに運んでくれればいいから」
「……ええ??」
「……ん?」
いやいや、「ん?」じゃないのよ。
どうしてそうなる……?
「おかしいおかしいっ。私の意見も聞こうよ!?」
「いいじゃん。一緒に住んだ方が、毎日こうやってイチャイチャ出来るよ?」
布巾でテーブルを拭いていた私を、カエデくんが後ろからギュッと抱きしめる。耳元で「ね、どう?」と甘い声で囁かれて一気に体温が上昇した。
心臓に悪い。
普段はその辺でふわふわ可愛さを振りまいてるのに、こうやって一気に距離を詰めて密着してくるの、本当にズルい。
「一緒に、住もう?」
「でも……」
「亜矢さんは何が気になってるの? 僕と一緒に住むの、不安?」
「そ、そうじゃないけど……」
「ん?」
後ろから私を抱きしめたまま顔をのぞき込まれ、すぐ真横にカエデくんの綺麗な顔が迫る。
「気になってることがあるなら遠慮なく言って?」
「それは、その……」
「ん?」
「私、カエデくんの足手まといにしかならないし……」
「え、なんで?」
「だって……料理出来ないし」
「だからそれは僕がやるってば」
「それに、仕事を優先しがちだし」
「体を壊さない程度なら問題ないよ? もちろん僕のこともちゃんとかまってね?」
「そ、それはまぁ、もちろん……」
「ふふっ。はい、じゃあ決まりっ。えへへ、やったー」
「……」
完全に私の負けだ。心の準備も出来ないまま敗北を認めることになるとはね。
諦めて小さくため息をついたところで手に持っていた布巾を取り上げられて、頬に軽くキスをされた。
「じゃ、早速イチャイチャしちゃお?」
「……ええ?」
私の手から奪った布巾をテーブルの上にポイと放り投げ、ヒョイと私を抱き上げた。
慌ててもがく私に「暴れるのはベッドの上で、ね?」なんて恥ずかしい言葉を吐いて、そのままベッドルームへと向かう。
「か、カエデくん……っ」
「んー? なぁに?」
何、と聞きながら、これは聞く耳を持たないやつだ……。さすがにそろそろ彼のパターンが分かってきて、私は諦めて彼にギュッとしがみついた。
私の反応を見て「ふふっ」って笑っている。
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