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ずっと一緒にいたいから

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 カエデくんが着ていたニットを裾からたくし上げて脱がせ、改めてその肌へと手を伸ばす。堅く引き締まった筋肉に直に触れ、やっぱりたまらくなった。
 彼の肌を指の腹でゆっくりとなぞる。なめらかな肌触りを堪能している途中で視界に入ったその色に、胸の奥がギュッとなった。

「やっぱりここ、赤くなってる……」
「え? ああ、ほんとだ」

 カエデくんの左腕。私を孝治からかばってくれた時のもの。

「冷やしたほうが……」
「大丈夫だよ」
「ごめん。ごめんね……」
「なんで亜矢さんが謝るの? 全然大丈夫だよ。ね、それより、ほら、続き、どうぞ?」
「……もうっ」

 カエデくんは私の手を取って、自らの肌へと触れさせる。
 彼の引き締まった肌に触れ、私は一瞬でまた身体の奥が熱く焦げる衝動へと引き戻された。

 この男は、どこまでもズルい。こんなにも一瞬で、私を彼の魅力の沼に突き落としてしまう。二度と抜け出せないと覚悟しなければならない。
 そんなことを考えながら、彼の肌をまたそっとなぞる。

 手の平に伝わる彼の体温が、私の体温を上昇させていく。身体の奥がじわりと熱くなる。

 暑くて、熱い――。

 私が自分が着ているブラウスのボタンに手をかけたところでカエデくんの手にそれを遮られた。思わずムッとしてカエデくんを軽く睨むと、いつもとは少し違う笑みを浮かべていて……。

「ダメ……。それ、僕が、やりたい」

 私が手を離すと、カエデくんの手がゆっくりと私の服のボタンを外していく。カエデくんの綺麗な指が、ひとつひとつ……。

 たまらず、私はカエデくんへと口づける。お互いの舌を絡め合うようにするだけでまるでひとつに溶け合うような感覚に陥って、気が遠くなりそうだ……。
 いつの間にか私もカエデくんも一糸纏わぬ姿となって、お互いの熱さを確かめあって、今度こそ本当にひとつに溶け合う。

「……カエデくん、カエデ、くん……っ」

 何度も何度も、彼の名前を呼ぶ。
 好き、愛してる。そんな言葉では、到底足りない。
 けれど、だからこそ、その想いを込めて――。

「カエデく、ん……っ」
「……亜矢さんっっ」

 普段の優しい声とは違う、カエデくんの少し切羽詰まったような呼び声に、思考が焦げつく。私と同じぐらいに彼も私を求めてくれているのだと思うと、胸の奥の奥が、どうしようもなく熱くなった。

 ひとつになって、どろどろに溶けて、二人で高みに昇って……。
 あなたを好きだと、愛していると、強く強く思う、心の底から――。


 ――「……ごめん亜矢さん、おなか空いてた、よね……?」

 互いの呼吸がようやく落ち着いた頃、ベッドの中で私を抱きしめながらカエデくんが私に問いかけた。
 そう言えば帰って来てすぐに抱き合ったんだっけ……。夢中ですっかり忘れていた。

「あの時は空腹なんかより、カエデくんが欲しかったから……」

 思ったままを口にすると、嬉しそうに微笑んだカエデくんに優しく口づけられた。

「……ほんと、亜矢さんってズルい」
「え……? どこが? 狡いのはカエデくんでしょ?」

 だって、いつもふわふわ笑ってるくせに。ベッドの中では全然別人。優しく笑ってるいつものあの表情は、本当は全部誰かを騙すためのものなんじゃないの……?
 ジロリと睨むと、やっぱりもう私を騙す準備ができていて、ふわりふわりと笑っている。

 そんな風に騙す気満々っぽい彼の頬に手を伸ばし、むにゅ、と頬をつまむ。それでもなお笑ってる彼に、今度は私から軽く口づけた。
 唇が離れると、カエデくんが少し不服そうに口をとがらせる。

「……ほら、やっぱり亜矢さんの方がズルいっ」
「違うでしょ、カエデくんがそんなズルい顔して笑ってるからでしょう?」
「そんなこと言って……。また襲っちゃうよ?」
「もう……っ、ばかっ」

 彼の肩のあたりをポカリと叩く。
 やっぱり「ふふっ」と笑ったカエデくんは「晩ご飯の用意してくる」と言ってベッドからスルリと抜け出した。
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