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「ごちそうさま」
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そんなことを考えている間もけたたましく音を鳴らし続けているスマホの画面を軽く睨みつけ、私は大きめのため息を一つついて、コールに応じた。
「……はい」
『出るの遅すぎっ』
は? 文句言われる筋合いないし!
そう思い、イラッとして自らの髪をぐしゃりとかき乱した。
「……どちら様?」
『はぁ? 俺だよ、分かってるくせに』
昔ながらのオレオレ詐欺か、さようなら。と、ここで通話を切ることが出来たらどんなにいいか。
「……何の用?」
『話があるんだけど』
「ふうん。私は無いんだけど?」
『俺はあるから。今からそっち行っていい?』
「……は? ダメに決まってるでしょ?」
何言ってんの、この男。ふざけるのも大概にして欲しい。
『じゃあ俺ん家、来る?』
「いや行かないし……」
『……じゃあどこなら会えるんだよ』
は? この人、何言ってるの? 話、通じてる? もしかして宇宙人?
「どこだろうと、会いませんっ。言っておくけど、あんたの物は全部捨てて良いって言われたから本当に処分したからねっ、残ってないから!」
『……いや、そうじゃなくて。話したいことがあるって言ってんじゃん?』
通話相手のこの男、つい最近まで私と付き合っていた、孝治と言う男だ。そう、浮気した上に私を振ったって言う、あの男。
別れ際に「俺の物は全部捨ててくれて良いから」なんて格好つけたこと言ってたんで、ムカッときて、本当にこの男に関する物は全部捨てた。お泊まりの時に部屋着として着てたトレーナーはもちろん、もらったプレゼントとかも、全部。なにひとつ残さず、綺麗さっぱり。
未練なんてない、残ってるのは言いようのない虚しさだけだ。
「私は話すことなんてないの。もう電話してこないで!」
『俺は、』
孝治が何かを話しかけていたけれど、私はそんなことは構わずに通話を終了させた。
今さら何も聞きたくない。話の内容だけでなく、もう、声すらも聞きたくない。
そもそも本当になんで私の携帯番号を消してなかったのか、謎でしかない。私を振った時に消しといてよ。その程度の決意だったの? ほんと呆れる。
はぁ、とため息をつく――よりも前に、もう一度孝治からの電話がかかってきて……。コール音が鳴り響く中、私は今度こそ大きなため息をついた。
電話を取らずに通話を切る選択をして、ついでにスマホ本体の電源も落とす。私がもう電話を取らないと分かれば、孝治も諦めるだろう。
電源が入っていないから他の電話やメッセージの類いも受け取れないけど……それはもう仕方ない。
「……」
仕方ない、と思った次の瞬間、メープルくんのことを思いだして、あぁ彼からの電話も取れないな……なんて思いが浮かんでしまい……私は慌てて頭をブンブンと左右に振った。
べつに……メープルくんからの電話なんて、待ってないしっ。そもそも昨夜会ったばかりだし、彼が電話をかけてくる理由もないはずだ。
ほんの少し胸の辺りがモヤモヤしたけど、しばらくはスマホの電源を落としたままにしておくことにした――。
「……はい」
『出るの遅すぎっ』
は? 文句言われる筋合いないし!
そう思い、イラッとして自らの髪をぐしゃりとかき乱した。
「……どちら様?」
『はぁ? 俺だよ、分かってるくせに』
昔ながらのオレオレ詐欺か、さようなら。と、ここで通話を切ることが出来たらどんなにいいか。
「……何の用?」
『話があるんだけど』
「ふうん。私は無いんだけど?」
『俺はあるから。今からそっち行っていい?』
「……は? ダメに決まってるでしょ?」
何言ってんの、この男。ふざけるのも大概にして欲しい。
『じゃあ俺ん家、来る?』
「いや行かないし……」
『……じゃあどこなら会えるんだよ』
は? この人、何言ってるの? 話、通じてる? もしかして宇宙人?
「どこだろうと、会いませんっ。言っておくけど、あんたの物は全部捨てて良いって言われたから本当に処分したからねっ、残ってないから!」
『……いや、そうじゃなくて。話したいことがあるって言ってんじゃん?』
通話相手のこの男、つい最近まで私と付き合っていた、孝治と言う男だ。そう、浮気した上に私を振ったって言う、あの男。
別れ際に「俺の物は全部捨ててくれて良いから」なんて格好つけたこと言ってたんで、ムカッときて、本当にこの男に関する物は全部捨てた。お泊まりの時に部屋着として着てたトレーナーはもちろん、もらったプレゼントとかも、全部。なにひとつ残さず、綺麗さっぱり。
未練なんてない、残ってるのは言いようのない虚しさだけだ。
「私は話すことなんてないの。もう電話してこないで!」
『俺は、』
孝治が何かを話しかけていたけれど、私はそんなことは構わずに通話を終了させた。
今さら何も聞きたくない。話の内容だけでなく、もう、声すらも聞きたくない。
そもそも本当になんで私の携帯番号を消してなかったのか、謎でしかない。私を振った時に消しといてよ。その程度の決意だったの? ほんと呆れる。
はぁ、とため息をつく――よりも前に、もう一度孝治からの電話がかかってきて……。コール音が鳴り響く中、私は今度こそ大きなため息をついた。
電話を取らずに通話を切る選択をして、ついでにスマホ本体の電源も落とす。私がもう電話を取らないと分かれば、孝治も諦めるだろう。
電源が入っていないから他の電話やメッセージの類いも受け取れないけど……それはもう仕方ない。
「……」
仕方ない、と思った次の瞬間、メープルくんのことを思いだして、あぁ彼からの電話も取れないな……なんて思いが浮かんでしまい……私は慌てて頭をブンブンと左右に振った。
べつに……メープルくんからの電話なんて、待ってないしっ。そもそも昨夜会ったばかりだし、彼が電話をかけてくる理由もないはずだ。
ほんの少し胸の辺りがモヤモヤしたけど、しばらくはスマホの電源を落としたままにしておくことにした――。
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