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靴擦れするほどに
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「なるべくそっとやるから、ちょっとだけ我慢してね」
そう言って彼は私の足の前にしゃがみ込んだ。
「えっ、あのっ、貸してくれれば自分でするのでっ」
「ダメ。自分じゃやりづらいでしょ? 僕がやるから、そのまま座ってて。ね?」
歩いている時は私が見上げていたけど、いまは彼が私の足元にしゃがみ込んでいるので私の方が彼を見下ろす格好だ。
その綺麗な顔で、上目遣い、しかも優しく微笑むとか……反則だ。クリティカルヒットを受けて、私、大ダメージ。ヒットポイント、ほぼゼロ。
なんなの、この子……!
綺麗な顔して、茶色くてふわふわ柔らかそうな髪で、可愛い笑顔で上目遣いして、時々甘い言葉とか吐いたりするんでしょ!? きみだけだよ、とか言ったりするんでしょ!? こっちが無防備な時に甘く囁き落としたりするんでしょ!?
…………ホストかっ!?
こちとらアラサーで彼氏に浮気されるようなダメ女だし、もともとヒットポイント低めだからあっという間に瀕死で、簡単な追加攻撃で死にますけど!? 反撃能力もないし、アッサリ死に至りますけど!? 速攻ゲームオーバーですけど!?
だめだ、勝てる気がしない。
……なんてくだらないことを考えている間に、彼は手際よく私の靴擦れの傷の手当てを終わらせてしまった。今更、男の人に足を触られたことが恥ずかしくなってくる。
冬でもちゃんと足の爪の手入れをしておいて良かった、なんて思ってしまう自分はどうかしてる。
別に好きでもない男だし、なんならこんなチャラそうな見た目のキラキラした男、どっちかって言うと苦手だし、そんな男にどう思われようと、どうでもいい。
そう思うくせに、やっぱり格好の悪いところは見せたくないとも思ってしまう。
矛盾してる。
「はい、出来た」
「あ、ありがとう……」
「ふふ、どういたしまして」
靴擦れしていた箇所を見るととても綺麗に手当てをしてくれていて、手先が器用なんだなと感心した。
私は手先もかなり不器用で、絆創膏貼るときもいつも粘着の部分をグチャグチャにさせてしまう。こんなにピシッと綺麗にテープを貼れることなんてないから、思わず患部をまじまじと見つめてしまった。
それに気づいた彼が「ごめん、雑だった?」と不安そうに口にする。
「あ、いや、違うの、綺麗に手当てしてくれたなって、感心してて……」
思ったままを口にすると、彼はホッとしたように表情を緩めた。不安そうな顔も、ホッとして緩んだ顔も、可愛いこの男はもしかすると、怒った顔も可愛かったりするんだろうか。
そんなことを考えていると、タイミングが良いのか悪いのか、私のお腹がグーと鳴る。
「……」
「僕もお腹空いた~っ。すぐ晩ご飯の準備するね。もう温めるだけだから。ちょっとだけ待ってて」
お腹が鳴った恥ずかしさで、思わず顔が熱くなる。
……そう、顔があっついのは、恥ずかしいからなんだからね……! 決して、「僕もお腹空いた~っ」が、びっくりするぐらい可愛かったから、なんかじゃないんだから!
そう言って彼は私の足の前にしゃがみ込んだ。
「えっ、あのっ、貸してくれれば自分でするのでっ」
「ダメ。自分じゃやりづらいでしょ? 僕がやるから、そのまま座ってて。ね?」
歩いている時は私が見上げていたけど、いまは彼が私の足元にしゃがみ込んでいるので私の方が彼を見下ろす格好だ。
その綺麗な顔で、上目遣い、しかも優しく微笑むとか……反則だ。クリティカルヒットを受けて、私、大ダメージ。ヒットポイント、ほぼゼロ。
なんなの、この子……!
綺麗な顔して、茶色くてふわふわ柔らかそうな髪で、可愛い笑顔で上目遣いして、時々甘い言葉とか吐いたりするんでしょ!? きみだけだよ、とか言ったりするんでしょ!? こっちが無防備な時に甘く囁き落としたりするんでしょ!?
…………ホストかっ!?
こちとらアラサーで彼氏に浮気されるようなダメ女だし、もともとヒットポイント低めだからあっという間に瀕死で、簡単な追加攻撃で死にますけど!? 反撃能力もないし、アッサリ死に至りますけど!? 速攻ゲームオーバーですけど!?
だめだ、勝てる気がしない。
……なんてくだらないことを考えている間に、彼は手際よく私の靴擦れの傷の手当てを終わらせてしまった。今更、男の人に足を触られたことが恥ずかしくなってくる。
冬でもちゃんと足の爪の手入れをしておいて良かった、なんて思ってしまう自分はどうかしてる。
別に好きでもない男だし、なんならこんなチャラそうな見た目のキラキラした男、どっちかって言うと苦手だし、そんな男にどう思われようと、どうでもいい。
そう思うくせに、やっぱり格好の悪いところは見せたくないとも思ってしまう。
矛盾してる。
「はい、出来た」
「あ、ありがとう……」
「ふふ、どういたしまして」
靴擦れしていた箇所を見るととても綺麗に手当てをしてくれていて、手先が器用なんだなと感心した。
私は手先もかなり不器用で、絆創膏貼るときもいつも粘着の部分をグチャグチャにさせてしまう。こんなにピシッと綺麗にテープを貼れることなんてないから、思わず患部をまじまじと見つめてしまった。
それに気づいた彼が「ごめん、雑だった?」と不安そうに口にする。
「あ、いや、違うの、綺麗に手当てしてくれたなって、感心してて……」
思ったままを口にすると、彼はホッとしたように表情を緩めた。不安そうな顔も、ホッとして緩んだ顔も、可愛いこの男はもしかすると、怒った顔も可愛かったりするんだろうか。
そんなことを考えていると、タイミングが良いのか悪いのか、私のお腹がグーと鳴る。
「……」
「僕もお腹空いた~っ。すぐ晩ご飯の準備するね。もう温めるだけだから。ちょっとだけ待ってて」
お腹が鳴った恥ずかしさで、思わず顔が熱くなる。
……そう、顔があっついのは、恥ずかしいからなんだからね……! 決して、「僕もお腹空いた~っ」が、びっくりするぐらい可愛かったから、なんかじゃないんだから!
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