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あなたを探して
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はぁ、とため息をついて、私は昨日と一昨日に来たのとは違う道へと入っては出て、また違う道へ入っては出て……を繰り返した。それでも結局、彼の家を探し始めて三日目の今日も見つからず仕舞い。
私が方向音痴だからなのか、それとももしかして、あの人は実在せず、想像上の人物だったのでは……と思うほど。
平日で月曜日の今日はさすがに迷子になるわけにはいかないのでかなり慎重に歩いた結果、迷子にはならなかったけど、見つけることも出来なかった。
失意のまま電車に揺られ、自宅へと帰還。
「……はぁ、疲れたーっ!」
ため息と共にソファへとダイブする。私のカバンの中には相変わらず持ち主からはぐれてしまった男物の腕時計が入ったままだ。
ふと思い立って、私はその腕時計を手に取った。傷などが付かないようにと手持ちのハンカチで包んであり、私はそれをそっと開く。
私は文字盤や裏に書かれた文字などからネット上で検索をかけてみることにした。装飾品などには興味が無いし、ましてや男物なんてどれぐらいの価値のあるものかと言うことに私はとても疎い。
検索ワードを入力すると、いくつかの検索結果が表示される。有名な高級腕時計、らしい。
価格は…………。
「……はぁっ?」
ゼロを数え間違えたかな?
私は思わずもう一度ゼロの数を確認する。
一、十、百、千、万――。
……ねえ、腕時計の相場って、どれぐらいだと思う?
ちなみに私が普段仕事に着けて行っているのが、三万円ほどのもの。仕事用だし、文字盤が大きめでしっかり時間が確認できるシンプルなタイプのものだ。
友人の結婚式なんかに着けていくためのデザイン重視のブレスレットタイプのものは五~六万円ぐらいだったと思う。
服装や着けていく場所によって使い分けることは一応私も分かっていて実践しているけれど……こんな高級な時計は一体いつどこで着けるんです!?
何度ゼロの数を数え直しても、その腕時計は、百万円もする代物だった。
は? 意味が分からない。これが、あの、飲食店勤務の綺麗な男の持ち物、ですって……!?
自己紹介の時に一瞬私の頭を過ぎった考えが再び現実味を増す。
あの時、こう思ったのだ――
ホスト?
――って。
一介の会社員が、しかも私より年下の男の子が持てるような時計じゃない。普通の会社員にはきっと絶対に無理だ。そりゃ、何十回払いのローンにすれば買えるだろうけど……。
でもそれって、やっぱりかなり分不相応だと思う。
たとえばそこまでして買った腕時計を、あっさり無くしたり出来る? 私なら無理だ、外した途端にケースに入れて仕舞い込む。
無理、心臓に悪すぎて。
そんな無造作に扱えるほど普段から高級品を身につけているのだとしたら……やっぱり彼はホストなんだろうな。女性からの貢ぎ物なのかも。
……あり得る。
まあ彼の職業はともかく……。
ハンカチの上に乗せた腕時計が思いがけず高級品すぎて、私は慌ててクローゼットから新品のハンカチを取り出し、それにくるみ直す。
もちろんさっきまで包んでいたハンカチもちゃんと綺麗に洗濯はしてあったけど、新品なわけじゃない、とても高級な腕時計を包んで良いものとは思えないから。
思わず腕時計を持つ手が震え、緊張で冷や汗が……。
これでますます早く持ち主に返さなくては、と言う思いが強くなった。持ち主である彼は、きっとこれを探してるだろう。
仕事終わりから何も食べずに探し歩いて空腹だったはずなのに、一気にその空腹がどこかへ飛んでいってしまった。今日はもう何も喉を通りそうにない。
私は、新しいハンカチに包み直したそれを再びカバンの中へと戻し、かいてしまった嫌な汗を洗い流すべく浴室へと向かった――。
私が方向音痴だからなのか、それとももしかして、あの人は実在せず、想像上の人物だったのでは……と思うほど。
平日で月曜日の今日はさすがに迷子になるわけにはいかないのでかなり慎重に歩いた結果、迷子にはならなかったけど、見つけることも出来なかった。
失意のまま電車に揺られ、自宅へと帰還。
「……はぁ、疲れたーっ!」
ため息と共にソファへとダイブする。私のカバンの中には相変わらず持ち主からはぐれてしまった男物の腕時計が入ったままだ。
ふと思い立って、私はその腕時計を手に取った。傷などが付かないようにと手持ちのハンカチで包んであり、私はそれをそっと開く。
私は文字盤や裏に書かれた文字などからネット上で検索をかけてみることにした。装飾品などには興味が無いし、ましてや男物なんてどれぐらいの価値のあるものかと言うことに私はとても疎い。
検索ワードを入力すると、いくつかの検索結果が表示される。有名な高級腕時計、らしい。
価格は…………。
「……はぁっ?」
ゼロを数え間違えたかな?
私は思わずもう一度ゼロの数を確認する。
一、十、百、千、万――。
……ねえ、腕時計の相場って、どれぐらいだと思う?
ちなみに私が普段仕事に着けて行っているのが、三万円ほどのもの。仕事用だし、文字盤が大きめでしっかり時間が確認できるシンプルなタイプのものだ。
友人の結婚式なんかに着けていくためのデザイン重視のブレスレットタイプのものは五~六万円ぐらいだったと思う。
服装や着けていく場所によって使い分けることは一応私も分かっていて実践しているけれど……こんな高級な時計は一体いつどこで着けるんです!?
何度ゼロの数を数え直しても、その腕時計は、百万円もする代物だった。
は? 意味が分からない。これが、あの、飲食店勤務の綺麗な男の持ち物、ですって……!?
自己紹介の時に一瞬私の頭を過ぎった考えが再び現実味を増す。
あの時、こう思ったのだ――
ホスト?
――って。
一介の会社員が、しかも私より年下の男の子が持てるような時計じゃない。普通の会社員にはきっと絶対に無理だ。そりゃ、何十回払いのローンにすれば買えるだろうけど……。
でもそれって、やっぱりかなり分不相応だと思う。
たとえばそこまでして買った腕時計を、あっさり無くしたり出来る? 私なら無理だ、外した途端にケースに入れて仕舞い込む。
無理、心臓に悪すぎて。
そんな無造作に扱えるほど普段から高級品を身につけているのだとしたら……やっぱり彼はホストなんだろうな。女性からの貢ぎ物なのかも。
……あり得る。
まあ彼の職業はともかく……。
ハンカチの上に乗せた腕時計が思いがけず高級品すぎて、私は慌ててクローゼットから新品のハンカチを取り出し、それにくるみ直す。
もちろんさっきまで包んでいたハンカチもちゃんと綺麗に洗濯はしてあったけど、新品なわけじゃない、とても高級な腕時計を包んで良いものとは思えないから。
思わず腕時計を持つ手が震え、緊張で冷や汗が……。
これでますます早く持ち主に返さなくては、と言う思いが強くなった。持ち主である彼は、きっとこれを探してるだろう。
仕事終わりから何も食べずに探し歩いて空腹だったはずなのに、一気にその空腹がどこかへ飛んでいってしまった。今日はもう何も喉を通りそうにない。
私は、新しいハンカチに包み直したそれを再びカバンの中へと戻し、かいてしまった嫌な汗を洗い流すべく浴室へと向かった――。
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