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自分の選んだ道
3.
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――季節は秋から冬へと移り変わり、12月も半ばになった頃。
街はすっかりクリスマスの装いで、夜ともなればあちこちで煌びやかな光の装飾が施され、街ゆく人々を明るく照らしている。
しかしオフィスの中に入れば一転、いつも通りの空気で、私は安堵の息を吐いた。
……の、だけど。
「……若月ちゃーん、今日の夜、お暇、ですか……?」
「の、野村さん、どうしたんですか……っ?」
朝からなぜだかグロッキーな先輩に、私は一瞬たじろいだ。
どんな時でも明るくてサッパリとした爽やかさの野村さんと、とても同一人物とは思えないほどだ。
「……ふられ、た……」
「……え?」
「う、浮気された上に、振られたっっっ!!!」
えええ!?
野村さんほどの女性を振る男性がこの世に存在するだなんて、信じられない……!!
――今夜も特に何も予定が入っていない私は、昼休憩の間に伊吹さんに【今夜は野村さんと外食する事になりました】とメッセージを送っておいた。
そして……私たちは定時で会社を退社し、いまは駅近くの居酒屋で野村さんの話を聞いているところだ。
「ま、まさか、そんな……」
「……ほんとなのよー。もう、私、何のために頑張ってるんだか分からなくなってさぁ……」
野村さんはビールジョッキを持ち上げ、グビリとビールを喉に流し込んだ。
私は聞き手に徹するために、ソフトドリンクだ。聞き手が酔ってしまっては意味をなさない。
「若月ちゃんが秘書課に来てくれてからはさぁ、ほぼほぼ定時に上がれてたじゃーん? それなりに仕事帰りにもデート出来てたのよー。だから、もう大丈夫だと思ってたのにぃー」
野村さんの話によると、デートのたびになんだか様子のおかしい彼を問い詰めると、全然会えない時期に会社の後輩とそう言うことになってしまった、と言うことらしい……。
野村さんは「……まぁ、よくある話だよねー」と言って、ビールをグイッと飲み干した。
いくら会えない時間が長かったとは言え、こんなに素敵で仕事も出来る野村さんを振るなんて、私には本当に信じられなくて、どう言葉を返して良いかも分からなかった。
「ごめんねー若月ちゃん、突然食事に誘って。彼氏、怒ってない??」
「あ、いえ、大丈夫です、ちゃんと連絡しておいたので……」
「……ふぅん。やっぱり、彼氏、いるんだ!」
「ええ?」
「ふっふっふ。そうだと思ったんだよねー、若月ちゃん、こんなに可愛いんだもん、いないわけが、」
「野村さんっ!?」
「いや、私の失恋話もアレなんだけどさー、やっぱ、若月ちゃんの彼氏の話も、聞きたいじゃんー?」
そう言って不敵に微笑んだ野村さんは、とても美しかった……。こんな美人を振るだなんて、最低。
とか、そんな事を考えている場合ではなさそうだった。
まさかこんな風にあげ足を取られるとは思いもしなくて、あまりにも分かりやすく狼狽えてしまう私……。
「あ、あの、彼氏なんかじゃなくてですね……」
しかしジョッキ3杯目の野村さんは、さすがに酔い始めており……。
「若月ちゃんっ! この亜矢さんの目は、誤魔化せないんだからねーっ!?」
「いえ、あの、誤魔化しているわけでは、」
「さぁ白状しなさい! 彼は、どんな人ー???」
「……ええっと、」
「ほらほら、さぁさぁ……!!」
「の、野村さん~~~っ」
酔った野村さんの気迫に気圧された私は、結局、男の人と同居している事を白状させられてしまった。
もちろん、その同居相手が専務の篠宮伊吹さんだと言うことは、絶対に口を割らなかったけど……。
「そっかぁー、同棲してるんだぁー。いいねー、羨ましいなー!」
「いえ、あの、だから、同棲じゃなくて、同居ですっ」
「同じ、同じー!!」
野村さんのことを慰められればと思ってこの場にいるはずなのに、なぜか私の話になってしまい、結局野村さんを慰めることが出来たのかどうか分からないままこの場はお開きとなってしまった……。
自分の、全ての能力の低さに心の底からがっかりしながら帰宅する。
街はすっかりクリスマスの装いで、夜ともなればあちこちで煌びやかな光の装飾が施され、街ゆく人々を明るく照らしている。
しかしオフィスの中に入れば一転、いつも通りの空気で、私は安堵の息を吐いた。
……の、だけど。
「……若月ちゃーん、今日の夜、お暇、ですか……?」
「の、野村さん、どうしたんですか……っ?」
朝からなぜだかグロッキーな先輩に、私は一瞬たじろいだ。
どんな時でも明るくてサッパリとした爽やかさの野村さんと、とても同一人物とは思えないほどだ。
「……ふられ、た……」
「……え?」
「う、浮気された上に、振られたっっっ!!!」
えええ!?
野村さんほどの女性を振る男性がこの世に存在するだなんて、信じられない……!!
――今夜も特に何も予定が入っていない私は、昼休憩の間に伊吹さんに【今夜は野村さんと外食する事になりました】とメッセージを送っておいた。
そして……私たちは定時で会社を退社し、いまは駅近くの居酒屋で野村さんの話を聞いているところだ。
「ま、まさか、そんな……」
「……ほんとなのよー。もう、私、何のために頑張ってるんだか分からなくなってさぁ……」
野村さんはビールジョッキを持ち上げ、グビリとビールを喉に流し込んだ。
私は聞き手に徹するために、ソフトドリンクだ。聞き手が酔ってしまっては意味をなさない。
「若月ちゃんが秘書課に来てくれてからはさぁ、ほぼほぼ定時に上がれてたじゃーん? それなりに仕事帰りにもデート出来てたのよー。だから、もう大丈夫だと思ってたのにぃー」
野村さんの話によると、デートのたびになんだか様子のおかしい彼を問い詰めると、全然会えない時期に会社の後輩とそう言うことになってしまった、と言うことらしい……。
野村さんは「……まぁ、よくある話だよねー」と言って、ビールをグイッと飲み干した。
いくら会えない時間が長かったとは言え、こんなに素敵で仕事も出来る野村さんを振るなんて、私には本当に信じられなくて、どう言葉を返して良いかも分からなかった。
「ごめんねー若月ちゃん、突然食事に誘って。彼氏、怒ってない??」
「あ、いえ、大丈夫です、ちゃんと連絡しておいたので……」
「……ふぅん。やっぱり、彼氏、いるんだ!」
「ええ?」
「ふっふっふ。そうだと思ったんだよねー、若月ちゃん、こんなに可愛いんだもん、いないわけが、」
「野村さんっ!?」
「いや、私の失恋話もアレなんだけどさー、やっぱ、若月ちゃんの彼氏の話も、聞きたいじゃんー?」
そう言って不敵に微笑んだ野村さんは、とても美しかった……。こんな美人を振るだなんて、最低。
とか、そんな事を考えている場合ではなさそうだった。
まさかこんな風にあげ足を取られるとは思いもしなくて、あまりにも分かりやすく狼狽えてしまう私……。
「あ、あの、彼氏なんかじゃなくてですね……」
しかしジョッキ3杯目の野村さんは、さすがに酔い始めており……。
「若月ちゃんっ! この亜矢さんの目は、誤魔化せないんだからねーっ!?」
「いえ、あの、誤魔化しているわけでは、」
「さぁ白状しなさい! 彼は、どんな人ー???」
「……ええっと、」
「ほらほら、さぁさぁ……!!」
「の、野村さん~~~っ」
酔った野村さんの気迫に気圧された私は、結局、男の人と同居している事を白状させられてしまった。
もちろん、その同居相手が専務の篠宮伊吹さんだと言うことは、絶対に口を割らなかったけど……。
「そっかぁー、同棲してるんだぁー。いいねー、羨ましいなー!」
「いえ、あの、だから、同棲じゃなくて、同居ですっ」
「同じ、同じー!!」
野村さんのことを慰められればと思ってこの場にいるはずなのに、なぜか私の話になってしまい、結局野村さんを慰めることが出来たのかどうか分からないままこの場はお開きとなってしまった……。
自分の、全ての能力の低さに心の底からがっかりしながら帰宅する。
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