17 / 19
chrysalis
その後 〜after the tale〜
しおりを挟む
カチッ。
金属器が音を立てて開く。
女は屋上で景色を眺めている。
紙筒を咥えて、透き通った空気を吸い込みながら
銀色のフリントホイールを回す。
ジュボッ
商業区にて提供される純度99.9%の大気を
タールの白煙に染め上げる。
「すうぅ…」
口内に含んだそれで肺を充満させ、
血液中にニコチンを送る。
「はぁぁ…」
今では喫煙という文化は多様化し、
紙や水タバコ、加熱式ですら廃れきっている。
アクセサリーのように悪びれたい、
安全に雰囲気を感じたい者は
香料を焚いたフレーバースティックを嗜好。
ニコチン依存症患者には、報酬系神経回路に作用する
ドーパミンの分泌を促進するレコードでの
対症療法が提案されている。
「…やっぱメンソールは甘えだな…」
やはりコイツに限る、デイライト。
手すりに腕を回してAUVを起動。
およそ100年ぶりと言われる大事件の
プロファイリングを、ーー
「カリーナちゃ~ん!」
初老の少し肥満気味の男性が声をかける。
「はぁはぁ…これから、僕が捜査会議開くから
タバコ休憩中悪いけどウチの本部まで降りてきて!」
「…形式上の、でしょ長さん。
うちの連中が普段やってない様な猿真似したって
ハナシなんて聞かないじゃないっすか。」
「ヤマがヤマだからしっかりやらんと
いけないんだよぉ~。頼む、な?」
デイライトの底を潰してタバコの本数を確認する。
「…あと一本なんで。コレ吸ったら行きます。」
「あと一本って…それにそのタバコ、
タールきっつい奴だろ?今どきそんなの
何処で売ってるのさ…」
無言で手すりの方を向く。
「はぁ…僕一課長なんだぞ…なんでこんな使いっ走り
管理職が自分でやってるんだよ…」
頭を掻きながら呟いて、長さんは屋上を立ち去った。
「…正体不明の大火災、か。」
わたしたちの管轄じゃねぇだろとため息。
餅は餅屋にだ。捜査一課の仕事じゃあない。
事実、メトロフォリアにおいて捜査などという
肩書きは飾りに過ぎなかった。
保安警察の大半は実動部隊とオペレーター。
それもそのはず。住民の手となり足となる
ORTICAが、事件の全容など他愛もなく
すべて明らかにしてしまうからだ。
業務内容の実情は雑用。
人間が形式上立ち会う必要のある場での
事態収集という名のお客様対応が専らだ。
機動部隊様がいらっしゃらないような
みみっちい酔っ払いの沈静化。
気の触れた自殺志願者に対するあの手この手の説得。
配属されてかれこれ7年。
カリーナ・ヴォルコフは始末書の3000字を
30分で埋めるのがすっかり得意になっていた。
「でも、あろうことかあのORTICAが
この事件じゃお手上げときた。」
人類の判断で事態を終息させるべき。
そう判断して本格的な事件が捜査一課に
回ってくることは過去前例がある。
しかし、それは人道に沿った解決を
ORTICAが求めているだけで
完璧にまとめ上げられた報告書に
判を押すようなものだ。
「丸投げじゃねえか、これ。」
昨日一度目を通した内容を再確認。
吐き気を覚えるほどの凄惨なガイシャと
火災と衝突事故で乱れたミエーレストラーダ。
クリアな現場材料と簡潔でいて必要最低限な証言。
だが言ってしまえば、それだけだった。
タバコの火を手すりに押しつけて消す。
「…ヤッパ刑事ってのはこうでなくっちゃなぁ…!」
ベンチに掛けていたジャケットを掴んで羽織り、
早足で会議室へと向かった。
「オラ、準備出来てっか?」
「あなた待ちですよ、カリーナさん。」
眼鏡をかけている男、カマルがコーヒーを
片手に答える。
デスクについていたショートカットの女性の肩越しからモニターを覗く。
「李、状況は?」
「ええ、相変わらず静かです。何もなかったみたいに。」
「コッチも同じく~」
トップで纏めた金髪に目元にピアス、
黒いマスクをつけたゲルダが返す。
「おっはよ!カリ~~ナっ!」
邪な手が紺のパンツに伸びる。
それを、気配で捉えて左の手のひらで合わし、
「あっ…!」
親指、正しくはその付け根のふくらみを掴む。
途端、痴漢魔の右手が捻り上げられる。
「ちょ…!まっ!」
それを手刀で崩して、
「ガッ…」
十文字固め。
「…ダニエル、気安く呼ぶな。」
「クアァァア…!ギブギブギブ!」
「ホラ。たんまだってよ、たんまって。」
長さんが止めに入る。
いや、正しくは取りなすテイで
何も出来ず眺めている。
消え入りそうな声で申し開きをするダニエル。
「ぁ朝のルーティンじゃんか!コミュニケーション!
第一カリーナ、一度だって俺に触らせて…」
強めに…〆る。
「カッ…!」
「かんかんかーん、ダニエル選手TKO!
勝者、女狼 カリーナァヴォルコフゥ!」
私を強引に立ち上がらせて右腕を掲げる
長さん。
「茶番はもう辞めて下さい!
ホラ、会議やるんでしょう?会議。」
待ちかねたカマルの掛け声で捜査会議が始まった。
「事前に送付された資料は見ましたね、皆さん?」
オペレーターである李が進行する。
「あぁ、廃棄区画とはいえ、
過去類を見ない規模の大火災。
死者200名余り、負傷者1名。
過去のテロリストだってここまでのスコアを
メトロフォリアで叩き出した奴はいないだろうね。」
「不謹慎に過ぎるぞ、ゲルダ。集中しろ。」
長さんが強く咎める。
「…確認のため被害者のフィードバックを再生します。
気持ちの準備はよろしいですね?」
気がついたダニエルが体を起こす。
「…っなんだぁ?カマル、
これからみんなで映画でも見るってのか?」
「…ダニエルさん、資料に目を通してないんですね。
ほら、ゴミ箱。使うでしょ?」
「…?」
再生。
ふらふらと歩く。
くたびれたワイシャツにしなびれたネクタイ。
何処にでもいる、一般サラリーマンだ。
片手に安い缶ビールを持って人混みを掻き分ける。
呷る。
キャッチの呼びかけを振り切る。
呷る。
ガタイのいいタトゥー男をかわす。
呷る。
走り抜ける人影、正面から当たる。
「ってえ…」
缶ビールが路面に転がりアルコールを垂れ流す。
「おいっ、どほみへんだこのやろおっ!」
呂律の回らない舌で叫ぶが、もう居ない。
立ち上がって、また歩く。
何処にでもある風俗店の前で立ち止まる。
コース表を見ながら財布と相談。
が、
「へっ?…ねぇっ!無ぇっ!オレのサイフ!」
全身のポケット、自分のパンツの中まで覗き込む始末。
「あぁあ、盗られちまったんだな。
カマル、お前も繁華街の風俗めぐるときは
気をつけた方がいいぜ。」
半笑いで茶化すダニエル。
だが、誰一人として彼に反応を返さない。
「何処っ、何処行ったんだよぉサイフちゃぁん!」
人目を憚らず地に這いつくばって探し始める。
幸いにも足元はいつもより明るく、
視界が通っていた。
アァッ、アッアアァ…
ひゅー、ひゅー。
いぃいいいぃっ
「うるへぇ!みへものじゃねえぞ!」
男が真後ろで音を立てるそれに振り返る。
だが、そこにイタのハ、
すぼんだ場所をおさえて奇っ怪な
空気音をタテるナニかだっタ。
すぼんだ?チガウ。
あレは文化共通のチョークポーズ。
ヒとが苦しイ時に、くビをおさえル…
…ル?
テもとニめヲヤル。
ソコニハ、メラメラ。
メラメラメラメラメラメラメラメラメラメラ
メラメラメラメラメラメラメラメラメラメラ
「ガッ…!アツイ、アツイッ?
アツイィィイイイヤァァァァ!!!」
「…うっぷ。」
ゴミ箱を抱え込むダニエル。
その後全身が炎に撒かれ、
救いを求めて彷徨う映像が20分。
李は目を閉じたまま、強く耳を塞いで震えており、
ゲルダとカマルは青ざめた顔で目を背けている。
「…もう、そこらへんでいいだろう…
李ちゃん、停止を。」
「…はいっ、はいっ…!」
モニターが暗転した。
「ゲルダちゃん、代わりに続けてくれるかい。」
「…そしてこれが今朝の通り。」
全く同じ構図が映し出される。
遺体は回収されている様だ。
屋台が崩れ、黒焦げた跡。
だが、これは…
「レコードの様子より被害規模が軽微だな…」
サラリーマンを取り囲む異常なまでの火力。
その出所も不明だが、通りにはボヤ程度の局所的な焦げしか見受けられない…
「ヲタク、お前の所感を聞かせろ。」
「分かりました。仮説の域を出ませんが…
恐らく、ガイシャは夢を見ていたのだと
ボクは推測します。」
ユメ…?
夢で死人が出るってのか?
「この事件、不明瞭な点は多々ありますが
1番の根拠はその死因です。
ゲルダさん、回収された遺体の資料を。」
画面に黒ずんだソレが映し出される。
あれが、本当に、モノ思う人間だった?
ーーー信じられない。
表面の体組織がすっかり炭化してしまって
説明されなければ、ヒトだと気づくことさえ難しい。
「そして次が、その隣で見つかった遺体です。」
画面を見て、愕然とする。
「これが…同じ夜のガイシャだと…?」
皮膚が爛れ、苦悶に満ちた断末魔の表情。
しかしながら、先程の遺体の火傷のステージを鑑みて
本来確認できるはずのない顔の表情が
良い保存状態で見てとれる。
「オイ…第一コイツ服着てんじゃねえか。
この事件と無関係なホトケだろ。」
口元を拭ってダニエルが意見を述べる。
「…それは無いと言い切れます。」
「李ちゃん、気分が優れないなら外で休憩しても…」
弱音吐いてちゃいられませんから。と
長さんの申し出を断る彼女。
「昨夜すぐに機動隊の方々の協力のもと、
被害者全64名のレコードを確認しています。
彼らは互いに、全身を炎に撒かれ苦しむ姿を
視界に映しているんです。」
「それだけじゃありませんよ。
遺族の協力を得られた遺体の解剖の結果、
死因が多い順で
腹上死、転落死、心肺停止による窒息死。
あれほどの大火力で焼かれながら、
あの現場には誰一人として焼死体がないんです。」
「炭化してるのに…燃えてない?」
馬鹿な…あれだけの地獄、
執拗なまでの煉獄が、
ただの気のせいだと?
「おそらくは、広域に対する認識ジャック。
ボヤは暴れ回ったガイシャのもの。
テロリストは現場偽造のためにその後、
白リン弾を打ち上げたというのが、
機動隊の方々との共通認識です。」
「認識ジャックなんてオレぁ聞いたこともねぇぜ…
ORTICAサマにそんなもん仕掛けられるもんかよ。」
いづれにせよ、とんでもない組織が相手ですよ。
とモニターを見つめながら語るカマル。
「そう、兎に角この事件は100年前の大規模抗争、
いやそれ以上の、未だかつてない大きなヤマだ。
今では我々捜査一課は縮小させられ、
たったの6名のみのグループだがな。
だが今回は機動隊員を指揮する権限が
個々人に与えられ、彼らも渋々だが全面的に
協力する意を示している。
ORTICAから出た令状は、
廃棄区画に位置する事業、及び関連団体の洗い出しだ。
皆、明日の平和のため粉骨砕身の働きを期待する。
以上、解散!」
何年かかるでしょうね。とカマル。
アイツらを鼻で使ってやれるだけマシだな。
と返すダニエル。
カリーナは立ち止まって俯いたまま、
些細な疑問をぶつけた。
「長さん。」
「なんだい、カリーナちゃん?」
「洗い出しなんスか?
犯行グループ逮捕じゃなくて。」
「…そうだ。」
背伸びをし、立ち去ろうとするカリーナ。
だがそこで、李が気になることを口走った。
「カリーナさん、生存者の事なんですが。」
「…続けて。」
「緋翅水冴綺、18歳の女子高校生。
彼女、妙な記録を残してたんです。」
「レコードか。」
「いいえ、レコード自体は視界が霞んでいて、
確認できる状態ではありませんでした。ですが…」
今朝のニュースご覧になりましたか?と李の会話がそれる。
18歳、女子高校生…
「また1人失踪事件の被害者が増えたことか。」
「えぇ。実は彼女がきっかけで
その被害者の失踪が明らかになったんです。」
…それは妙な言い回しだ。
「まるで人1人居なくなったのを
今更になって気づいたみたいな話だな。」
「その通りなんです。彼女が見つけた形見で
とある女の子が交友関係にあった被害者を
思い出したらしくて。
…私、なにかこのニュースについて
モヤモヤするところがあるんです。」
…あまりに特殊すぎる。
唐突に18歳の女生徒が1か月に8人というペースで
消失する常識を逸脱した怪事件。
しかし、このケースだって足取りは掴めなくとも
誰がいつ失踪したかぐらいは
把握できていた。
…それとは別に
被害者遺族や全能のORTICAすら掻い潜った
失踪すら認識できないもう一つの誘拐事件
じゃあなんだ。
この事件が起きるまで水面下で動いてたっていう
機動隊の連中が目をつけていた人攫いとは、
また別件だっていうのか。
「ヲタクゥ!」
「…あのですね。ボクの事そんな愛称で
呼ばないでください!お陰で警察中ヲタクで
イメージ通っちゃってるじゃないですか!」
「万が一、万が一だ。
自分の家族が1人いなくなったとして
それに誰1人として気付けない。なんてこと、
ありえるとおもうか。」
唐突な質問。
余りに突拍子のない仮定。
だがカマルはそれを数秒の間をもって、ーーー
「無い、とは言い切れませんね。」
一つの可能性を、提示してみせた。
「なんだって…」
「いえ、これはあくまで可能性の話です。
認知症という奇病はご存知でしょうか?」
なんだそれ?
「今では根絶された症例ですよ。
生まれ持った先天性のものから
老化や脳の萎縮といった後天性のものなど多岐に渡っていた様ですが、その症状に
記憶障害、見当識障害、実行機能障害。」
歩き回りながら講釈をたれるカマル。
「そして最後の、理解判断力障害のうちの一つ。
相貌失認。」
「あぁ…周囲の人の表情が、視界に入っても分からなくなるって奴だよね?
一課のヲタクことカマル君はなんでも知ってるなぁ。」
「ええ、その通りです、長さん。
まあでも脳の認識を司る部位は
ORTICAの搭載をする際切除してしまって
AUV等使用の為にORTICAが肩代わりしてますから、
症状に悩まされる患者はいなくなったんですがね。」
そうか。
それならORTICAがその認識を拒絶しないかぎり
忘れるなんて不安に駆られる必要はないわけだ。
それに、全能を謳うモノが
無いと定義した概念を
捉える事が出来なくなったところで
いったい何の支障が…
………
………
………
わたし、今一体なにを…
咄嗟にメモを取る。胸ポケットから
ペンを取り出して、ーーー
ピコン。
今日のラッキー占い!
今日のあなたの運勢は★★★☆☆!
ラッキーカラーはスカイブルー!
割って入った通知を削除する。
メモを。
メモ、を、ーー
周囲に目をやる。
照明を反射して光る棒状のそれ。
アレは、万年筆か。
「オイ、これ誰のだ。」
「流石、見る目があるなカリーナ!
それは俺の就職記念にママンが買ってくれた
商業区指折りのブランド…」
「借りるぞ。」
胴軸を掌で握り、力一杯走らせる。
しかし、メモにではなくその左腕に。
「グッ…!」
「ちょ…おいおいおいおいカリーナちゃん?!
いったい何してるんだよぉ?!」
長さんが止めに入る。
止めどない出血。備え付けの救急箱を持ってきて
包帯で緊縛、圧迫。応急で止血する。
見逃すな
「ホラ、ありがとうな。」
「あぁ…ママンのプレゼントが…」
…
……
………ペロッ。
「李、生存者の名前をもう一度。」
「…え?!あっ、再度確認しますね!
緋翅 水冴綺、緋翅 水冴綺です!」
左腕の痛みと共に、しっかりと脳裏に焼き付ける。
「よし、カマルとダニエルは中央駅側から、
わたしは外縁側からだ。
オラ、テメェらぁ!気合い入れろっ!」
「ハイッ!」
「がんばってきてなぁ~!」
そうして彼ら捜査一課は足速に、
正真正銘初任務へと向かったのだった。
金属器が音を立てて開く。
女は屋上で景色を眺めている。
紙筒を咥えて、透き通った空気を吸い込みながら
銀色のフリントホイールを回す。
ジュボッ
商業区にて提供される純度99.9%の大気を
タールの白煙に染め上げる。
「すうぅ…」
口内に含んだそれで肺を充満させ、
血液中にニコチンを送る。
「はぁぁ…」
今では喫煙という文化は多様化し、
紙や水タバコ、加熱式ですら廃れきっている。
アクセサリーのように悪びれたい、
安全に雰囲気を感じたい者は
香料を焚いたフレーバースティックを嗜好。
ニコチン依存症患者には、報酬系神経回路に作用する
ドーパミンの分泌を促進するレコードでの
対症療法が提案されている。
「…やっぱメンソールは甘えだな…」
やはりコイツに限る、デイライト。
手すりに腕を回してAUVを起動。
およそ100年ぶりと言われる大事件の
プロファイリングを、ーー
「カリーナちゃ~ん!」
初老の少し肥満気味の男性が声をかける。
「はぁはぁ…これから、僕が捜査会議開くから
タバコ休憩中悪いけどウチの本部まで降りてきて!」
「…形式上の、でしょ長さん。
うちの連中が普段やってない様な猿真似したって
ハナシなんて聞かないじゃないっすか。」
「ヤマがヤマだからしっかりやらんと
いけないんだよぉ~。頼む、な?」
デイライトの底を潰してタバコの本数を確認する。
「…あと一本なんで。コレ吸ったら行きます。」
「あと一本って…それにそのタバコ、
タールきっつい奴だろ?今どきそんなの
何処で売ってるのさ…」
無言で手すりの方を向く。
「はぁ…僕一課長なんだぞ…なんでこんな使いっ走り
管理職が自分でやってるんだよ…」
頭を掻きながら呟いて、長さんは屋上を立ち去った。
「…正体不明の大火災、か。」
わたしたちの管轄じゃねぇだろとため息。
餅は餅屋にだ。捜査一課の仕事じゃあない。
事実、メトロフォリアにおいて捜査などという
肩書きは飾りに過ぎなかった。
保安警察の大半は実動部隊とオペレーター。
それもそのはず。住民の手となり足となる
ORTICAが、事件の全容など他愛もなく
すべて明らかにしてしまうからだ。
業務内容の実情は雑用。
人間が形式上立ち会う必要のある場での
事態収集という名のお客様対応が専らだ。
機動部隊様がいらっしゃらないような
みみっちい酔っ払いの沈静化。
気の触れた自殺志願者に対するあの手この手の説得。
配属されてかれこれ7年。
カリーナ・ヴォルコフは始末書の3000字を
30分で埋めるのがすっかり得意になっていた。
「でも、あろうことかあのORTICAが
この事件じゃお手上げときた。」
人類の判断で事態を終息させるべき。
そう判断して本格的な事件が捜査一課に
回ってくることは過去前例がある。
しかし、それは人道に沿った解決を
ORTICAが求めているだけで
完璧にまとめ上げられた報告書に
判を押すようなものだ。
「丸投げじゃねえか、これ。」
昨日一度目を通した内容を再確認。
吐き気を覚えるほどの凄惨なガイシャと
火災と衝突事故で乱れたミエーレストラーダ。
クリアな現場材料と簡潔でいて必要最低限な証言。
だが言ってしまえば、それだけだった。
タバコの火を手すりに押しつけて消す。
「…ヤッパ刑事ってのはこうでなくっちゃなぁ…!」
ベンチに掛けていたジャケットを掴んで羽織り、
早足で会議室へと向かった。
「オラ、準備出来てっか?」
「あなた待ちですよ、カリーナさん。」
眼鏡をかけている男、カマルがコーヒーを
片手に答える。
デスクについていたショートカットの女性の肩越しからモニターを覗く。
「李、状況は?」
「ええ、相変わらず静かです。何もなかったみたいに。」
「コッチも同じく~」
トップで纏めた金髪に目元にピアス、
黒いマスクをつけたゲルダが返す。
「おっはよ!カリ~~ナっ!」
邪な手が紺のパンツに伸びる。
それを、気配で捉えて左の手のひらで合わし、
「あっ…!」
親指、正しくはその付け根のふくらみを掴む。
途端、痴漢魔の右手が捻り上げられる。
「ちょ…!まっ!」
それを手刀で崩して、
「ガッ…」
十文字固め。
「…ダニエル、気安く呼ぶな。」
「クアァァア…!ギブギブギブ!」
「ホラ。たんまだってよ、たんまって。」
長さんが止めに入る。
いや、正しくは取りなすテイで
何も出来ず眺めている。
消え入りそうな声で申し開きをするダニエル。
「ぁ朝のルーティンじゃんか!コミュニケーション!
第一カリーナ、一度だって俺に触らせて…」
強めに…〆る。
「カッ…!」
「かんかんかーん、ダニエル選手TKO!
勝者、女狼 カリーナァヴォルコフゥ!」
私を強引に立ち上がらせて右腕を掲げる
長さん。
「茶番はもう辞めて下さい!
ホラ、会議やるんでしょう?会議。」
待ちかねたカマルの掛け声で捜査会議が始まった。
「事前に送付された資料は見ましたね、皆さん?」
オペレーターである李が進行する。
「あぁ、廃棄区画とはいえ、
過去類を見ない規模の大火災。
死者200名余り、負傷者1名。
過去のテロリストだってここまでのスコアを
メトロフォリアで叩き出した奴はいないだろうね。」
「不謹慎に過ぎるぞ、ゲルダ。集中しろ。」
長さんが強く咎める。
「…確認のため被害者のフィードバックを再生します。
気持ちの準備はよろしいですね?」
気がついたダニエルが体を起こす。
「…っなんだぁ?カマル、
これからみんなで映画でも見るってのか?」
「…ダニエルさん、資料に目を通してないんですね。
ほら、ゴミ箱。使うでしょ?」
「…?」
再生。
ふらふらと歩く。
くたびれたワイシャツにしなびれたネクタイ。
何処にでもいる、一般サラリーマンだ。
片手に安い缶ビールを持って人混みを掻き分ける。
呷る。
キャッチの呼びかけを振り切る。
呷る。
ガタイのいいタトゥー男をかわす。
呷る。
走り抜ける人影、正面から当たる。
「ってえ…」
缶ビールが路面に転がりアルコールを垂れ流す。
「おいっ、どほみへんだこのやろおっ!」
呂律の回らない舌で叫ぶが、もう居ない。
立ち上がって、また歩く。
何処にでもある風俗店の前で立ち止まる。
コース表を見ながら財布と相談。
が、
「へっ?…ねぇっ!無ぇっ!オレのサイフ!」
全身のポケット、自分のパンツの中まで覗き込む始末。
「あぁあ、盗られちまったんだな。
カマル、お前も繁華街の風俗めぐるときは
気をつけた方がいいぜ。」
半笑いで茶化すダニエル。
だが、誰一人として彼に反応を返さない。
「何処っ、何処行ったんだよぉサイフちゃぁん!」
人目を憚らず地に這いつくばって探し始める。
幸いにも足元はいつもより明るく、
視界が通っていた。
アァッ、アッアアァ…
ひゅー、ひゅー。
いぃいいいぃっ
「うるへぇ!みへものじゃねえぞ!」
男が真後ろで音を立てるそれに振り返る。
だが、そこにイタのハ、
すぼんだ場所をおさえて奇っ怪な
空気音をタテるナニかだっタ。
すぼんだ?チガウ。
あレは文化共通のチョークポーズ。
ヒとが苦しイ時に、くビをおさえル…
…ル?
テもとニめヲヤル。
ソコニハ、メラメラ。
メラメラメラメラメラメラメラメラメラメラ
メラメラメラメラメラメラメラメラメラメラ
「ガッ…!アツイ、アツイッ?
アツイィィイイイヤァァァァ!!!」
「…うっぷ。」
ゴミ箱を抱え込むダニエル。
その後全身が炎に撒かれ、
救いを求めて彷徨う映像が20分。
李は目を閉じたまま、強く耳を塞いで震えており、
ゲルダとカマルは青ざめた顔で目を背けている。
「…もう、そこらへんでいいだろう…
李ちゃん、停止を。」
「…はいっ、はいっ…!」
モニターが暗転した。
「ゲルダちゃん、代わりに続けてくれるかい。」
「…そしてこれが今朝の通り。」
全く同じ構図が映し出される。
遺体は回収されている様だ。
屋台が崩れ、黒焦げた跡。
だが、これは…
「レコードの様子より被害規模が軽微だな…」
サラリーマンを取り囲む異常なまでの火力。
その出所も不明だが、通りにはボヤ程度の局所的な焦げしか見受けられない…
「ヲタク、お前の所感を聞かせろ。」
「分かりました。仮説の域を出ませんが…
恐らく、ガイシャは夢を見ていたのだと
ボクは推測します。」
ユメ…?
夢で死人が出るってのか?
「この事件、不明瞭な点は多々ありますが
1番の根拠はその死因です。
ゲルダさん、回収された遺体の資料を。」
画面に黒ずんだソレが映し出される。
あれが、本当に、モノ思う人間だった?
ーーー信じられない。
表面の体組織がすっかり炭化してしまって
説明されなければ、ヒトだと気づくことさえ難しい。
「そして次が、その隣で見つかった遺体です。」
画面を見て、愕然とする。
「これが…同じ夜のガイシャだと…?」
皮膚が爛れ、苦悶に満ちた断末魔の表情。
しかしながら、先程の遺体の火傷のステージを鑑みて
本来確認できるはずのない顔の表情が
良い保存状態で見てとれる。
「オイ…第一コイツ服着てんじゃねえか。
この事件と無関係なホトケだろ。」
口元を拭ってダニエルが意見を述べる。
「…それは無いと言い切れます。」
「李ちゃん、気分が優れないなら外で休憩しても…」
弱音吐いてちゃいられませんから。と
長さんの申し出を断る彼女。
「昨夜すぐに機動隊の方々の協力のもと、
被害者全64名のレコードを確認しています。
彼らは互いに、全身を炎に撒かれ苦しむ姿を
視界に映しているんです。」
「それだけじゃありませんよ。
遺族の協力を得られた遺体の解剖の結果、
死因が多い順で
腹上死、転落死、心肺停止による窒息死。
あれほどの大火力で焼かれながら、
あの現場には誰一人として焼死体がないんです。」
「炭化してるのに…燃えてない?」
馬鹿な…あれだけの地獄、
執拗なまでの煉獄が、
ただの気のせいだと?
「おそらくは、広域に対する認識ジャック。
ボヤは暴れ回ったガイシャのもの。
テロリストは現場偽造のためにその後、
白リン弾を打ち上げたというのが、
機動隊の方々との共通認識です。」
「認識ジャックなんてオレぁ聞いたこともねぇぜ…
ORTICAサマにそんなもん仕掛けられるもんかよ。」
いづれにせよ、とんでもない組織が相手ですよ。
とモニターを見つめながら語るカマル。
「そう、兎に角この事件は100年前の大規模抗争、
いやそれ以上の、未だかつてない大きなヤマだ。
今では我々捜査一課は縮小させられ、
たったの6名のみのグループだがな。
だが今回は機動隊員を指揮する権限が
個々人に与えられ、彼らも渋々だが全面的に
協力する意を示している。
ORTICAから出た令状は、
廃棄区画に位置する事業、及び関連団体の洗い出しだ。
皆、明日の平和のため粉骨砕身の働きを期待する。
以上、解散!」
何年かかるでしょうね。とカマル。
アイツらを鼻で使ってやれるだけマシだな。
と返すダニエル。
カリーナは立ち止まって俯いたまま、
些細な疑問をぶつけた。
「長さん。」
「なんだい、カリーナちゃん?」
「洗い出しなんスか?
犯行グループ逮捕じゃなくて。」
「…そうだ。」
背伸びをし、立ち去ろうとするカリーナ。
だがそこで、李が気になることを口走った。
「カリーナさん、生存者の事なんですが。」
「…続けて。」
「緋翅水冴綺、18歳の女子高校生。
彼女、妙な記録を残してたんです。」
「レコードか。」
「いいえ、レコード自体は視界が霞んでいて、
確認できる状態ではありませんでした。ですが…」
今朝のニュースご覧になりましたか?と李の会話がそれる。
18歳、女子高校生…
「また1人失踪事件の被害者が増えたことか。」
「えぇ。実は彼女がきっかけで
その被害者の失踪が明らかになったんです。」
…それは妙な言い回しだ。
「まるで人1人居なくなったのを
今更になって気づいたみたいな話だな。」
「その通りなんです。彼女が見つけた形見で
とある女の子が交友関係にあった被害者を
思い出したらしくて。
…私、なにかこのニュースについて
モヤモヤするところがあるんです。」
…あまりに特殊すぎる。
唐突に18歳の女生徒が1か月に8人というペースで
消失する常識を逸脱した怪事件。
しかし、このケースだって足取りは掴めなくとも
誰がいつ失踪したかぐらいは
把握できていた。
…それとは別に
被害者遺族や全能のORTICAすら掻い潜った
失踪すら認識できないもう一つの誘拐事件
じゃあなんだ。
この事件が起きるまで水面下で動いてたっていう
機動隊の連中が目をつけていた人攫いとは、
また別件だっていうのか。
「ヲタクゥ!」
「…あのですね。ボクの事そんな愛称で
呼ばないでください!お陰で警察中ヲタクで
イメージ通っちゃってるじゃないですか!」
「万が一、万が一だ。
自分の家族が1人いなくなったとして
それに誰1人として気付けない。なんてこと、
ありえるとおもうか。」
唐突な質問。
余りに突拍子のない仮定。
だがカマルはそれを数秒の間をもって、ーーー
「無い、とは言い切れませんね。」
一つの可能性を、提示してみせた。
「なんだって…」
「いえ、これはあくまで可能性の話です。
認知症という奇病はご存知でしょうか?」
なんだそれ?
「今では根絶された症例ですよ。
生まれ持った先天性のものから
老化や脳の萎縮といった後天性のものなど多岐に渡っていた様ですが、その症状に
記憶障害、見当識障害、実行機能障害。」
歩き回りながら講釈をたれるカマル。
「そして最後の、理解判断力障害のうちの一つ。
相貌失認。」
「あぁ…周囲の人の表情が、視界に入っても分からなくなるって奴だよね?
一課のヲタクことカマル君はなんでも知ってるなぁ。」
「ええ、その通りです、長さん。
まあでも脳の認識を司る部位は
ORTICAの搭載をする際切除してしまって
AUV等使用の為にORTICAが肩代わりしてますから、
症状に悩まされる患者はいなくなったんですがね。」
そうか。
それならORTICAがその認識を拒絶しないかぎり
忘れるなんて不安に駆られる必要はないわけだ。
それに、全能を謳うモノが
無いと定義した概念を
捉える事が出来なくなったところで
いったい何の支障が…
………
………
………
わたし、今一体なにを…
咄嗟にメモを取る。胸ポケットから
ペンを取り出して、ーーー
ピコン。
今日のラッキー占い!
今日のあなたの運勢は★★★☆☆!
ラッキーカラーはスカイブルー!
割って入った通知を削除する。
メモを。
メモ、を、ーー
周囲に目をやる。
照明を反射して光る棒状のそれ。
アレは、万年筆か。
「オイ、これ誰のだ。」
「流石、見る目があるなカリーナ!
それは俺の就職記念にママンが買ってくれた
商業区指折りのブランド…」
「借りるぞ。」
胴軸を掌で握り、力一杯走らせる。
しかし、メモにではなくその左腕に。
「グッ…!」
「ちょ…おいおいおいおいカリーナちゃん?!
いったい何してるんだよぉ?!」
長さんが止めに入る。
止めどない出血。備え付けの救急箱を持ってきて
包帯で緊縛、圧迫。応急で止血する。
見逃すな
「ホラ、ありがとうな。」
「あぁ…ママンのプレゼントが…」
…
……
………ペロッ。
「李、生存者の名前をもう一度。」
「…え?!あっ、再度確認しますね!
緋翅 水冴綺、緋翅 水冴綺です!」
左腕の痛みと共に、しっかりと脳裏に焼き付ける。
「よし、カマルとダニエルは中央駅側から、
わたしは外縁側からだ。
オラ、テメェらぁ!気合い入れろっ!」
「ハイッ!」
「がんばってきてなぁ~!」
そうして彼ら捜査一課は足速に、
正真正銘初任務へと向かったのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 人造人間の誕生日又は恋人の居ない星のクリスマス
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第五部
遼州人の青年神前誠(しんぜんまこと)が司法局実働部隊機動部隊第一小隊に配属になってからほぼ半年の時が過ぎようとしていた。
訓練場での閉所室内戦闘訓練からの帰りの途中、誠は周りの見慣れない雪景色に目を奪われた。
そんな誠に小隊長のカウラ・ベルガー大尉は彼女がロールアウトした時も同じように雪が降っていたと語った。そして、その日が12月25日であることを告げた。そして彼女がロールアウトして今年で9年になる新しい人造人間であること誠は知った。
同行していた運用艦『ふさ』の艦長であるアメリア・クラウゼ中佐は、クリスマスと重なるこの機会に何かイベントをしようと第二小隊のもう一人の隊員西園寺かなめ大尉に語り掛けた。
こうしてアメリアの企画で誠の実家である『神前一刀流道場』でのカウラのクリスマス会が開催されることになった。
誠の家は母が道場主を務め、父である誠一は全寮制の私立高校の剣道教師としてほとんど家に帰らない家だった。
四人は休みを取り、誠の実家で待つ誠の母、神前薫(しんぜんかおる)のところを訪れた。
そこで待ち受けているのは上流貴族であるかなめのとんでもなく上品なプレゼントを買いに行く行事、誠の『許婚』を自称するかなめの妹で両刀遣いの変態マゾヒスト日野かえで少佐の訪問、アメリアの部下である運航部の面々による蟹パーティーなどの忙しい日々だった。
そんな中、誠はカウラへのプレゼントとしてイラストを描くことを思いつき、様々な妨害に会いながらもなんとか仕上げることが出来たのだが……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅
シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。
探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。
その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。
エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。
この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。
--
プロモーション用の動画を作成しました。
オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。
https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ
夜空に瞬く星に向かって
松由 実行
SF
地球人が星間航行を手に入れて数百年。地球は否も応も無く、汎銀河戦争に巻き込まれていた。しかしそれは地球政府とその軍隊の話だ。銀河を股にかけて活躍する民間の船乗り達にはそんなことは関係ない。金を払ってくれるなら、非同盟国にだって荷物を運ぶ。しかし時にはヤバイ仕事が転がり込むこともある。
船を失くした地球人パイロット、マサシに怪しげな依頼が舞い込む。「私たちの星を救って欲しい。」
従軍経験も無ければ、ウデに覚えも無い、誰かから頼られるような英雄的行動をした覚えも無い。そもそも今、自分の船さえ無い。あまりに胡散臭い話だったが、報酬額に釣られてついついその話に乗ってしまった・・・
第一章 危険に見合った報酬
第二章 インターミッション ~ Dancing with Moonlight
第三章 キュメルニア・ローレライ (Cjumelneer Loreley)
第四章 ベイシティ・ブルース (Bay City Blues)
第五章 インターミッション ~ミスラのだいぼうけん
第六章 泥沼のプリンセス
※本作品は「小説家になろう」にも投稿しております。

【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
地球連邦軍様、異世界へようこそ
ライラック豪砲
SF
巨大な一つの大陸の他は陸地の存在しない世界。
その大陸を統べるルーリアト帝国の第三皇女グーシュ。
21世紀初頭にトラックに轢かれ、気が付いたら22世紀でサイボーグになっていた元サラリーマンの一木弘和。
地球連邦軍異世界派遣軍のルーリアト帝国への来訪により出会った二人が、この世界に大きな変革を引き起こす!
SF×ファンタジーの壮大な物語、開幕。
第一章
グーシュは十八歳の帝国第三皇女。
好奇心旺盛で民や兵にも気さくに接するため、民衆からは慕われているが主流派からは疎まれていた。
グーシュはある日、国境に来た存在しない筈の大陸外の使節団への大使に立候補する。
主流派に睨まれかねない危険な行為だが、未知への探求心に胸踊らせるグーシュはお付きの騎士ミルシャと共に使節団が滞在するルニ子爵領へと赴く。
しかしその道中で、思わぬ事態が起こる。
第二章
西暦2165年。
21世紀初頭から交通事故で昏睡していた一木弘和はサイボーグとして蘇生。
体の代金を払うため地球連邦軍異世界派遣軍に入り、アンドロイド兵士達の指揮官として働いていた。
そして新しく配属された第049艦隊の一員として、一木はグーシュの暮らす惑星ワーヒドに赴く。
しかし美少女型アンドロイドの参謀や部下に振り回され、上官のサーレハ大将は何やら企んでいる様子。
一般人の一木は必死に奮闘するが……。
第三章~
そして、両者の交流が始まる……。
小説家になろうで連載中の作品の微修正版になります。
最新話が見たい方は、小説家になろうで先行して公開しておりますので、そちらをご覧ください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる