3 / 13
現代淑女のエスケープ
idling
しおりを挟む
コンクリートに打ち付けられる排出。
ハネル水玉。
ユルみ切ってタガが外れた
タツノオトシゴ。
「………ふぅ」
殺菌も消毒もナシ。
勝手極まる維持管理費の無駄遣い。
御手洗い
御手洗い
御手洗い
ふと動きを止めてソレを見つめる。
ニンゲン様を霊長たらしめる希代の発明品。
仰向けたり翻したり
組んだり離したり
閉じたり開いたり
勢い含んでホワイト添加した流れの中で
「そりゃあ、」
寒さの未だ健在な季節の昼下がり
ちょっぴり辛辣な冷たさにあてがいながら
「汚れたりは、しないだろうけどさ。」
体裁だけでも綺麗になった両手を
眺めて呟いてみる。
……………………
ピシャん。
止めどなく供給される上水をたたえたまんま。
空を掬った両のひらを
重力で緩んだ表情筋に打ち付けた。
「おねぇちゃん……?」
はっと振り返る。
見れば小さな子。
ぱっと見、小学校にも入ってなさそう。
「あ~、どうしたのボクたち?」
ん。と手を突き出す。
あるのはカラフルな弾力のある生地。
ーー、どうしたのってのは彼のセリフだったみたいだ。
「あ~ね、どうぞどうぞ!
アタシもう済んだから!」
つかえるよぉ~
わらわらと遠くから眺めていた子供らが3人ほど。
さっきまで殺風景だった水道周りが
途端に歓声にあふれる。
この残冬の3月に水風船かぁ…
子供は風の子、とはいうけれど。
まだあるんだ?そんな昔遊び。
流石のアタシもちょっと距離を置いて
苦笑いこぼしながら感心してる。
「スゴいですよね、ホント。」
横から入ってきた可愛げなパッチワークの
エプロンを着こなした女性。
「あっ、ごめんなさい邪魔しちゃって…」
ここいらで失礼しようかしら、ーーー
「いえいえ!此方こそごめんなさい。
ここ、団地付きの公園で
広いには広いんですが、その分目が
隅々には行き届かないこともあって…」
「…今日日、なんかあったんですか?」
よくぞ聞いてくれました!と
うれしそうに両手を合わせる彼女。
「そうなんです。近隣の保育園幼稚園主導で
フリーマーケット!やってるんですよ。」
待機児童とかナントカあるでしょう?と
フワッとしたニュアンスでにこやかに語る。
「ーー、んで!厳密には幼稚園は教育機関なんですが、
皆んな近所の子ぉなんだから
年齢とか所属とかまどろっこしいでしょう?
いっそ、フリマで交流会しようなんて
はじめたんですぅ~!」
……へぇ、気づかなかった。
ホントに手ぇ洗いに来ただけだから
アタシがいるのは集合住宅の入り口未満だけど
イベントスペースはもっと中に位置しているのだ。
「売るのも買うのも眺めるだけもOK!
今日だけなので気が向いたら行ってみてください!」
…帰らなきゃ
なんだけど…
子供たちが群がりはじめたゴルフバックを回収して。
立ち去るアタシのつま先は、
常緑樹の茂る方を向いていた。
ハネル水玉。
ユルみ切ってタガが外れた
タツノオトシゴ。
「………ふぅ」
殺菌も消毒もナシ。
勝手極まる維持管理費の無駄遣い。
御手洗い
御手洗い
御手洗い
ふと動きを止めてソレを見つめる。
ニンゲン様を霊長たらしめる希代の発明品。
仰向けたり翻したり
組んだり離したり
閉じたり開いたり
勢い含んでホワイト添加した流れの中で
「そりゃあ、」
寒さの未だ健在な季節の昼下がり
ちょっぴり辛辣な冷たさにあてがいながら
「汚れたりは、しないだろうけどさ。」
体裁だけでも綺麗になった両手を
眺めて呟いてみる。
……………………
ピシャん。
止めどなく供給される上水をたたえたまんま。
空を掬った両のひらを
重力で緩んだ表情筋に打ち付けた。
「おねぇちゃん……?」
はっと振り返る。
見れば小さな子。
ぱっと見、小学校にも入ってなさそう。
「あ~、どうしたのボクたち?」
ん。と手を突き出す。
あるのはカラフルな弾力のある生地。
ーー、どうしたのってのは彼のセリフだったみたいだ。
「あ~ね、どうぞどうぞ!
アタシもう済んだから!」
つかえるよぉ~
わらわらと遠くから眺めていた子供らが3人ほど。
さっきまで殺風景だった水道周りが
途端に歓声にあふれる。
この残冬の3月に水風船かぁ…
子供は風の子、とはいうけれど。
まだあるんだ?そんな昔遊び。
流石のアタシもちょっと距離を置いて
苦笑いこぼしながら感心してる。
「スゴいですよね、ホント。」
横から入ってきた可愛げなパッチワークの
エプロンを着こなした女性。
「あっ、ごめんなさい邪魔しちゃって…」
ここいらで失礼しようかしら、ーーー
「いえいえ!此方こそごめんなさい。
ここ、団地付きの公園で
広いには広いんですが、その分目が
隅々には行き届かないこともあって…」
「…今日日、なんかあったんですか?」
よくぞ聞いてくれました!と
うれしそうに両手を合わせる彼女。
「そうなんです。近隣の保育園幼稚園主導で
フリーマーケット!やってるんですよ。」
待機児童とかナントカあるでしょう?と
フワッとしたニュアンスでにこやかに語る。
「ーー、んで!厳密には幼稚園は教育機関なんですが、
皆んな近所の子ぉなんだから
年齢とか所属とかまどろっこしいでしょう?
いっそ、フリマで交流会しようなんて
はじめたんですぅ~!」
……へぇ、気づかなかった。
ホントに手ぇ洗いに来ただけだから
アタシがいるのは集合住宅の入り口未満だけど
イベントスペースはもっと中に位置しているのだ。
「売るのも買うのも眺めるだけもOK!
今日だけなので気が向いたら行ってみてください!」
…帰らなきゃ
なんだけど…
子供たちが群がりはじめたゴルフバックを回収して。
立ち去るアタシのつま先は、
常緑樹の茂る方を向いていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

もしもしお時間いいですか?
ベアりんぐ
ライト文芸
日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。
2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。
※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。
狗神巡礼ものがたり
唄うたい
ライト文芸
「早苗さん、これだけは信じていて。
俺達は“何があっても貴女を護る”。」
ーーー
「犬居家」は先祖代々続く風習として
守り神である「狗神様」に
十年に一度、生贄を献げてきました。
犬居家の血を引きながら
女中として冷遇されていた娘・早苗は、
本家の娘の身代わりとして
狗神様への生贄に選ばれます。
早苗の前に現れた山犬の神使・仁雷と義嵐は、
生贄の試練として、
三つの聖地を巡礼するよう命じます。
早苗は神使達に導かれるまま、
狗神様の守る広い山々を巡る
旅に出ることとなりました。
●他サイトでも公開しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
とある女房たちの物語
ariya
ライト文芸
時は平安時代。
留衣子は弘徽殿女御に仕える女房であった。
宮仕えに戸惑う最中慣れつつあった日々、彼女の隣の部屋の女房にて殿方が訪れて……彼女は男女の別れ話の現場を見聞きしてしまう。
------------------
平安時代を舞台にしていますが、カタカナ文字が出てきたり時代考証をしっかりとはしていません。
------------------
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
きみと最初で最後の奇妙な共同生活
美和優希
ライト文芸
クラスメイトで男友達の健太郎を亡くした数日後。中学二年生の千夏が自室の姿見を見ると、自分自身の姿でなく健太郎の姿が鏡に映っていることに気づく。
どうやら、どういうわけか健太郎の魂が千夏の身体に入り込んでしまっているようだった。
この日から千夏は千夏の身体を通して、健太郎と奇妙な共同生活を送ることになるが、苦労も生じる反面、健太郎と過ごすにつれてお互いに今まで気づかなかった大切なものに気づいていって……。
旧タイトル:『きみと過ごした最後の時間』
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※初回公開・完結*2016.08.07(他サイト)
*表紙画像は写真AC(makieni様)のフリー素材に文字入れをして使わせていただいてます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる