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桜花が咲く季節に
六話
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繭を連れて、洋右は栃木の実家を訪れたのは四月の初めてだった。
「大丈夫、でしょうか」
「何が」
「私は女中として、洋右さんの元へ来たのに。こんな関係になって」
不忠義もいいとこ。
「堅いな、繭は。どんな十五年を過ごしたんだ」
「どんな・・って、親が死んで、おばさんに引き取られて、学校に行かないから漢字も読めなくて」
けして、幸せではなかった。繭の目に、悲しみと不安が浮かぶ。
「私、奥様や旦那様に引き取られなかったら、私は・・」
「もう、いい」
「洋右さんにも、出会えませんでした!死んでいたかも」
虐待とも言える寂しい日々。心が何度も折れ、希望を失くした。
「もういい、言わなくていい」
一人じゃ生きていけません、と繭は泣いた。
「何も持ってなかった、何も!」
だから、捨てられた。だから、売られた。上田家に拾われ、御飯と新しい服を与えられた。
「頑張るのよ、繭。うちの女中頭は厳しいけど、見込みのない娘に厳しくしないから」
「奥様が、そう言って下さいました。タツノさんは怖いけど、女中のお母さんだって」
料理と掃除、繕い物から洗濯まで。全て、タツノと女中たちに鍛えられた。
「私、上田家に来て良かった。洋右さんに会えて、幸せです」
「そうか」
(そう、私は洋右さんの事が好き。それは嘘じゃないと、自信を持って言える)
繭は洋右に続いて、上田家の門をくぐった。
「・・・・」
長い、沈黙だった。
メイドが着る服ではない、女性らしい装いの繭に、美幸と権蔵は驚いた。
「繭・・なの、よね?」
「はい」
「驚いたな、一年でこんなふうに成長するとは!」
「オレは繭が二十歳になれば、籍を入れるつもりです」
堂々と宣言した洋右に、権蔵はうむと頷く。
「私達からは、言うことはない。繭、・・いや、繭さん。不肖の倅だが、頼んだよ」
「お願いしますね」
「はい!」
繭は頷く。
「オレが、世話になるんですか?」
「そうだろ、お前は料理や繕い物が出来るのか?一番、肝心だ。第二に、子供を生むのは誰だ?みろ、繭さんがいないと駄目だろう」
・・・子供。
繭の頬が、紅く染まる。
(そうだわ、結婚って・・洋右さんの、赤ちゃんを産むってことよね)
これまで、避妊薬を飲まされたが、籍を入れれば洋右は・・。
(か、考えてなかった)
恥ずかしいやら、幸せやらで、実家での時間は過ぎた。
「大丈夫、でしょうか」
「何が」
「私は女中として、洋右さんの元へ来たのに。こんな関係になって」
不忠義もいいとこ。
「堅いな、繭は。どんな十五年を過ごしたんだ」
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けして、幸せではなかった。繭の目に、悲しみと不安が浮かぶ。
「私、奥様や旦那様に引き取られなかったら、私は・・」
「もう、いい」
「洋右さんにも、出会えませんでした!死んでいたかも」
虐待とも言える寂しい日々。心が何度も折れ、希望を失くした。
「もういい、言わなくていい」
一人じゃ生きていけません、と繭は泣いた。
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だから、捨てられた。だから、売られた。上田家に拾われ、御飯と新しい服を与えられた。
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「奥様が、そう言って下さいました。タツノさんは怖いけど、女中のお母さんだって」
料理と掃除、繕い物から洗濯まで。全て、タツノと女中たちに鍛えられた。
「私、上田家に来て良かった。洋右さんに会えて、幸せです」
「そうか」
(そう、私は洋右さんの事が好き。それは嘘じゃないと、自信を持って言える)
繭は洋右に続いて、上田家の門をくぐった。
「・・・・」
長い、沈黙だった。
メイドが着る服ではない、女性らしい装いの繭に、美幸と権蔵は驚いた。
「繭・・なの、よね?」
「はい」
「驚いたな、一年でこんなふうに成長するとは!」
「オレは繭が二十歳になれば、籍を入れるつもりです」
堂々と宣言した洋右に、権蔵はうむと頷く。
「私達からは、言うことはない。繭、・・いや、繭さん。不肖の倅だが、頼んだよ」
「お願いしますね」
「はい!」
繭は頷く。
「オレが、世話になるんですか?」
「そうだろ、お前は料理や繕い物が出来るのか?一番、肝心だ。第二に、子供を生むのは誰だ?みろ、繭さんがいないと駄目だろう」
・・・子供。
繭の頬が、紅く染まる。
(そうだわ、結婚って・・洋右さんの、赤ちゃんを産むってことよね)
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恥ずかしいやら、幸せやらで、実家での時間は過ぎた。
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