MOON~双子姉妹~

なにわしぶ子

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105話~突然の来訪者~

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「希望君…………君は一体…………」


李留は突然、妖精を視る能力を身に付けた希望に、正直たじろいでいた。

勿論、クローンとはいえ、あの大和と沙羅の遺伝子を受け継いだ子供のクローンなのだ。

とてつもない能力者になる可能性を秘めていても
全然おかしくはなかったけれど、それをあからさまに目の前で見せ付けられた事で、李留の中に
言葉にならない感情が沸き起こっていた。


「寝る前になると、いつも真琴ちゃんが物語を読んでくれたんだ。その中には妖精さんのお話もあった。本当に妖精さんはいたんだね。僕が今まで見えてなかっただけなのかぁ」


希望は、周囲を飛び回ったり、肩に座ったりしてくる妖精を目で追いながら、不思議そうに呟いた。


「月の子、あなたの事は月の仲間達から聞いてるわー。あなたを見守ってくれって♪だから、あなたを見守る事にするわー♪」

「月の仲間??」

「月が私達のホームなのよー♪だから仲間は他にも沢山いるわー♪そしてみんな、貴方が可愛いって言ってたー♪」

「本当??何だか僕、恥ずかしいな………」

希望は顔を赤らめながら、首をすくねると
李留に助けを求めるべく、視線を投げかけた。


「いや、本当に驚きました。こんなにいきなり能力って覚醒するんですね、妖精さんの言う通りです。月にも沢山存在していました。僕も希望君の事は頼まれましたよ、守ってくれって」


「あぁ!シャトルに乗りこむ前のあの言葉ってそういう意味だったのか!!僕、やっと意味がわかったよ!」


希望は、嬉しそうに微笑むと、ベッドにバウンドする様に飛び乗った。


「ところで、地球が危ないって何処でそれを?」

李留は改めて、希望の横に座ると真剣な眼差しで問いかけた。

「夢を見たの……まだ遠いけど地球に何かがぶつかる夢を………だから僕、月に早く還りたい」

「なるほど………予知夢ってわけですか。。機関がまだ察知出来ていない話なら早急に動く方がいいのはわかりますが、現状、すぐは無理かもしれませんね。。ひとまず、ホワイトさんに話だけはしておきましょう」

「駄目だよ!!すぐじゃないと!!まずは、おとうさんに知らせなきゃ………おとうさんさんならきっと何とかしてくれる!」

「ここが機関なら動けますが、今はホワイトさん次第ですね、さっき送信したデータもまた未読みたいですし、早急には僕だけのちからではなかなか……」

「そんな…………」

希望ががっかりした様子で俯くと、
同時に、ガラガラガラガラ!!!!!と、窓の外から大きな音と振動が鳴り響いた。

慌てて窓を開けて、李留が外を覗き込むと、裏にある物置小屋に置かれた、色々なバケツやスコップが散乱していて、辺り一面砂ぼこりが舞っていた。


「痛ぇぇ…………着地点にこんな物置小屋無かったぞ!?上層部なら、地図データくらい、ちゃんと最新に更新しとけよな!!」


砂煙の中から、文句を言うその大きな声に、李留は聞き覚えがあった。


「ベイさん!?ど、どうしてここに??」

「やぁ李留、今日もすこやかかい?」


頭を痛そうに擦りながら現れたベイは、ヨロヨロと立ち上がると、両手で身体についた、砂をはらい始めた。


「あ!ベイさんだ!!!」


希望は、窓の外に突然現れたベイに向かって、大声で呼びかけると、大きく笑顔で手を振った。


「希望も、元気そうで何より。ホワイトからの指示で折角テレポートして来たってのに、これじゃあカッコ悪すぎだろ」

「指示って………何かあったんですか?」


李留は急な展開に、一抹の不安を覚えた。


「あぁその通り。月とのコンタクトが途絶えてる」

「え?大和さんと真琴さんの身に何か!?」

「いや、監視システムで生命存在確認は出来ている。ただ、何度コールしても、コンタクトが取れないらしい」

「なるほど……真琴さんに何かあったはずですね。真琴さんはそんな無責任な事をする人じゃありませんから」


李留はあらゆる可能性を思い巡らせると、更に不安な面持ちになった。

「そこで、急だけどシャトルを飛ばす事になった。つまり、直接乗り込むってわけだ」

「わかりました、僕も行きます」

「あぁそう言うだろうと思った。だから、俺様が直接迎えに来たってわけ」

「では急いで支度をします。おじさんにまずは説明もしないと。。ベイさんは、少しそこで待っててくれませんか?」

李留は表情を固くしながら、身支度を整えるべく動き始めた。すると、李留の服を握りしめている希望の姿に気づいた。

「希望君………手を離してもらえませんか?僕、今からおじさんに話をしにいかないと」

「僕も………僕も連れていって?」

希望の目は、真剣そのものであった。

李留は暫く考え込んだ後、ゆっくりと頷くと


「とりあえず、ホワイトさんに会いに、一緒に機関に一度戻りましょう。準備をひとりで出来ますか?」

「わかった!僕、すぐにおじいちゃんから貰ったお絵描きの道具を箱に詰めてくるよ!」


希望は元気な声でそう言うと、跳ねる様に自分の部屋へと駆けていった。


「月の子待ってよー!!」


その後を、妖精が宙返りをしながら、パタパタと羽を羽ばたかせて、追いかけていった。





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