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99話~漆黒の天使~
しおりを挟む地球が見える…………
青色の星は、当たり前にいつもそこにあった……
地球の絵を描きたいな……
また、おとうさんのお仕事してる傍で
真琴ちゃんは、きっと「上手ね」って誉めてくれる……
そんな朦朧とした意識の中で、希望はゆっくりと
目を覚ました。
そこは知らない部屋の中だった。
そうだ、僕は倒れたんだった……
ホワイトさんに墓地って所に連れていかれて
そこで、おかあさんが………
そう、おかあさんがもう居ないって…………
そして、僕は………僕は………
すると希望は顔をくしゃくしゃにして
大粒の涙を流しながら、ベッドの上で起き上がると
両手で、頭を抱えこんだ。
おとうさんどうして…………?
クローンの僕を作り出したりしたの……?
実験………僕は実験だったの??
真琴ちゃんもなんで教えてくれなかったの……??
実験だったから??
だから、僕は育つまで月で隠されてきたの??
嘘つきばかりだ………
母星の人も…………みんな………みんな……………
希望は、突然糸が切れたかの様に脱力すると
両手をだらりと抱えていた頭から離し、天を
仰ぐ様に顔を天井に向けた。
「結局……みんな僕を騙していたんだ……」
そう小さく呟くと、希望は哀しく微笑んだ。
すると、希望の背後で気配がした。
「しかしさっきから、賑やかな坊主だな」
突然話しかけられて、希望は咄嗟に
毛布の中へと潜りこんだ。
「ふーん。坊主、お前俺様がわかるのかい?そんな風変わりは、この星じゃここの老いぼれじいさんぐらいだと思ってたんだが………」
「ぼ、僕を食べても美味しくないからね!!」
希望は毛布を被りながら、カタカタと震えた。
「あいにく、俺様の食は子供じゃないから安心しなって。さぁ、出てくるといいさ」
「ほ、ほんとう???」
希望は毛布からまずは頭だけをぴょこっと出すと
その声の主を見上げた。
そこには、背は高く、目をギョロつかせ
全身黒い出で立ちの存在が、宙に浮かんでいた。
「う、浮かんでる…………何で???」
希望は頭が混乱しながらも、もはやその存在から
目を反らす事が出来なくなっていた。
「逆にお前は何で浮かんでないんだ?どうだ答えられないだろう?それと同じで俺様も答えられない、生まれた時からこうだったって事だけしかね」
その存在は、大きな口で豪快に笑いながら
希望の前に今度はドカッと座り込んだ。
「羽があるの??本で読んだ事ある……」
「へぇ案外物知りじゃないか。そう、立派な羽だろう?触ってみるかい?」
「う、うん………」
希望は毛布からおずおずと出てくると、その存在の
背中に生えている、立派な漆黒の羽にそっと触れた。
「綺麗だなぁ…………」
希望が目をキラキラさせて、その羽を見ていると
今度は羽が背中に溶けていくかの様に、吸い込まれ
消えていった。
「き、消えたよ!!??なんで??」
「何でって………そんな種族だから以外答えようがないさ。つまり自由自在って事」
「へぇ…………」
希望はさっきまで泣いていたのも忘れて
この存在の登場に釘つけになっていた。
「おい坊主、お前の名前はなんだ?」
「ぼ、僕は………希望だよ………」
自分の名前を口にして、希望は顔を曇らせた。
「ふーん………まぁ名前なんてどうでもいいか。
お前は坊主だから、坊主でさ」
その存在は、希望の気持ちを汲み取ったかの様に
細い腕で腕組みをすると、そう言い放った。
「おじさんは、名前何て言うの???」
「お、おじさん!?まぁいい………名前なんてないさ」
「どうして??」
「理由なんてないが理由」
「そっか…………おじさんも大変なんだね」
「決して大変ではないが……」
その存在はそう否定した後に、ニヤリと微笑んだ。
「まぁ退屈してた所だ、暫くお前の傍で共に過ごすとしよう」
「本当に??傍にいてくれるの?月に……僕が月に還る事になっても??」
するとその存在の背中から、また立派な羽が
生え始めると、部屋の空間を埋め始めた。
「俺様のこの羽があれば、宇宙空間なんてひとっ飛びさ」
そう言うと、その存在の羽は更に大きく
豊かに広がり始めた。
その光景に完全に目を奪われた希望は
好奇心いっぱいの眼差しで、その変化に釘つけになっていた。
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