MOON~双子姉妹~

なにわしぶ子

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96話~サイコメトリー~

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沙羅と真琴の父親の家の前に、ゆっくりと着陸した円形の小型飛行体からは、ホワイトを先頭にして、李留と希望が順に外へと出てきた。

広大な敷地には、こじんまりとした新しい家がポツンと建っていて、ここで沙羅と真琴の父親は1人で暮らしているとの事だった。

「だいぶ街は様変わりしましたね、全く面影もない……」

李留は周囲を見渡すと、そう感想を述べた。

ただ、殺風景ではあったけれど、一度壊滅した街が新しく息吹いていく、そんなエネルギーは感じ取る事は出来た。

「李留は、今暫くここで待っていて欲しい。希望を先に墓地へ連れて行ってこようと思う」

「わかりました。では、僕は先におじさんのお宅に伺う事にします。色々先に説明も兼ねて」

「任せよう」


そんな2人の様子を不安そうに見つめていた希望が、恐る恐る尋ねてきた。


「墓地って………一体、何があるの?」

「そ、それは……」

李留は言葉を詰まらせると、俯いた。


「行けばわかる。さぁ、こっちだ」

ホワイトはそう告げると、さっさと墓地へと歩き始めた。


「ま、待ってよ!!じゃあ、行ってくるね!!」

希望は慌ててホワイトの背中を追いかけながらも、李留に向かって手を振ってみせた。

李留はそれに、手を振りながらこたえると
姿が見えなくなるまで、希望の背中を見送り続けた。








その広い墓地には、誰も居なかった。

時折、強く吹き付ける風を顔に受けながら
ホワイトは、希望に構う事なくただひたすらに
目的地に向かって、歩みを進めた。

希望は、声をかける事もままならず
ただはぐれない様に、必死でホワイトを追いかけた。


「うわっ!」


いきなり立ち止まったホワイトの背中にぶつかった希望は、よろけながら周囲を見渡した。


そこには、沢山の四角い何かが規則正しく並んでいて、綺麗な何かが、その上に飾られている様子だった。


「こ、ここは………何なの?」


希望はホワイトを見上げなから、そう不安気に質問をした。


「ここに来なさい」


ホワイトに促され、ある四角い何かの前に立たされた希望は、何が何だかわからなかった。
そして、その四角い何かには、文字が刻まれているようだった。


「沙…………羅??おかあさんの名前だ…………」

「ここには沙羅、つまりお前の母親が眠っている」

「どういう事??僕、意味がわからないよ……」

「では、その石におでこをつけてみるといい」


ホワイトは淡々と、でも希望をしっかりと見つめながらそう言った。


希望は、混乱しながらも言われた通り跪くと、その沙羅の石碑に、自分のおでこをつけ目を閉じた。


途端に、希望の肩が小刻みに揺れ始め、両目からは大粒の涙が溢れ始めた。


「お……おかあ……さん………ヒック……お……かあさん…………ヒック……」


石に刻まれた沙羅の文字が、ぽたりぽたりと落ちる希望の涙を無言で受け止めた。


「やはり来て正解であった。お前の能力は更に計り知れないものとなるであろう」

ホワイトはそう言うと、希望の両肩を掴み立ち上がらせた。

「どこまでサイコメトリーで理解したかを教えて欲しい。出来るか?」

「ヒック………ヒック………で、出来る……ヒック……」


今尚、泣き続ける希望の身体を支えながら、ホワイトは、希望をただ黙って見守った。


「おかあさんは死んじゃったんだね……月で……ずっと前にもう………ヒック……」

「それで?」

「おかあさんが………僕の名前をつけてくれた……希望って…………ヒック………」

「あとは?」

「でも………僕はじゃあ一体誰なの??おかあさんと一緒に亡くなったんじゃないの?僕、わからないよ……こんなのわからない!!!!」

「落ちつきなさい!!」

ホワイトは混乱し始めた希望の正面に立つと跪き、希望の視線より目線を下にして、両肩を掴んだまま語りかけ始めた。


「沙羅は……お前を身ごもった母親は月で亡くなり、ここに眠っている」

「そんなのもうわかってるよ!!でもそれだとおかしいよ!!僕はいつ生まれたの!?」

「言葉より、この方がお前は理解が早いだろう」

ホワイトはそう言うと、自分のおでこを希望のおでこにつけて目を閉じた。


希望は新たに流れこんでくる膨大な情報を、小さな身体で一身に受けながら、もはや流れ落ちる
涙もそのままに、両目を見開き続けた。


「おかあ………さん………僕は、クローンなんだね……」


その瞬間、全身の力が抜ける様に、希望はその場に崩れ落ちた。
そんな希望をホワイトはしっかりと受け止めると
抱きかかえた。


「すまなかった………荒療治だがこうするしかもはや手はなかった。許して欲しい」

目を閉じ、苦しそうに肩で呼吸をする希望に、ホワイトは語りかけながら、身体を支え続けた。

誰も居ない墓地に小さく吹く風が、希望の
柔らかな髪を優しく揺らした。


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