MOON~双子姉妹~

なにわしぶ子

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82話~再会~

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真琴は通信の終えた部屋で、暫く呆然と動けずにいた。

その真琴の膝の上では、寝てしまい真琴に全身を委ねている、安心しきった希望の姿があった。

遥は色々をもう妖精達から聞いて疑っていた事もあり、状況を一瞬で理解したようだった。


真琴は泣きながら、慈しむ様に希望を見る遥の姿に安堵しながらも、落ち込んでいる自分に驚いてもいた。


「希望の馬鹿……これで私があなたの母親だって、大和の子供は私の子供だって、みんなに言えなくなっちゃったじゃない……」


真琴は希望の柔らかな髪の毛を優しく手で撫でると、今度は両手で抱きしめ続けた。






通信を終えた遥は、機関の上層部施設の廊下を足早に歩いていた。

希望の事を、ホワイトは知っているはず。

もしそれが帰還出来ない理由なら、3人で今すぐ帰還出来る様にしてほしいと、直談判するつもりだった。

ホワイトの部屋の前に着いた遥は、息を整えつつ大きく深呼吸すると、ドアに手をかざした。


認証を終えた事を報せる淡い光が、ドアからぼんやりと発せられると、静かにその扉は開き始めた。


「遥!?あれ?一体どうしたの?」


扉の向こうには、遥の登場に驚く懐かしい顔があった。


「ベイ………どうしたの?こちらにはいつ?」

「さっき移動してきた所。ホワイトがこきつかうからさぁ……もうお腹ぺこぺこだよ」


相変わらずの旧友の言葉に、笑顔になりながら遥は部屋の中を見渡した。

シンプルで、特に何も置かれていない無機質なルーム内には、肝心のホワイトはいなかった。


「ホワイトは不在なようね……」


「もう少ししたら戻るはずだよ。ワッカもここに呼び出されてるし」

「ワッカも来るのね。じゃあ私は少しお邪魔かしら……」


すると、背後の扉が開く音がした。
そこには、ワッカとホワイトの姿があり
遥を見つけたワッカが、懐かむ笑顔で駆け寄ってきた。


「久しぶりですね、驚きました」

「えぇ本当に、全く同じ所属なのに会えないんだもの。元気だったかしら?」

「えぇ元気でした。久しぶりに【2%】のメンバーと会えて嬉しいですね。語り合いたい所ですが……」

ワッカはそう言うと、ホワイトに視線を投げかけた。

「私との話が終わったら、後はオフで構わない」

ホワイトがそう言い終わらないうちに、ベイは
自分の端末を操作し始めた。

「有り難うございます。じゃあ今ベイが端末で注文した食事が届く前に、早速お話を聞かせて頂きましょう」

ワッカが笑顔でそう言うと、遥はベイの相変わらずの食いしん坊ぶりに呆れながら、そして可笑しくなり吹き出し始めた。


「任務はまず食事から!これ鉄則だろ!」


ベイはおどけた口調でふくれながらも、その久々に味わう光景を楽しんでいた。


「ベイの為に、では手短かに話す事にしよう。【2%】の皆に、月に一度戻ってもらいたい」


ホワイトからの突然の指令に、沈黙の時間が暫し流れた。


「それはつまり、大和と真琴の治療の為でいいのかしら?」


遥はこちらからの要望通りの展開に喜んだものの、希望の話はどう切り出していいものかと悩んだ。今はまだ話さない方がいい、そんな気がした。


「居住区の売買で、移民も増える。その前に此方に戻しておきたいのだ」

ホワイトは表情を変えず、淡々とそう呟いた。


「大和と真琴の事はずっと気がかりだったし、俺達は喜んで月に行くさ、ワッカも遥も同じ気持ちだよね?」

ベイはそう言うと、ふたりに問いかけた。
遥とワッカは、言わずもがなと力強く頷いた。

「では話はそれだけだ。此方は早速、スケジュールを組みはじめる事としよう」

「了解、じゃあワッカと遥。食事が届くし俺の部屋に行こうよ。それともワッカの部屋にする?」

「ベイの部屋でかまいませんよ。じゃあ遥も行きましょうか」

ベイとワッカに促された遥は、その場で黙り込んだまま床をじっとみつめ続けていた。


「先に行ってて?私、ホワイトに少し話が……」


その言葉に何かを察したワッカは、「では先に行ってますから」と、ベイと共に早々に部屋から退出しようとした。


「ベイとワッカも聞いてくれてかまわない」


ホワイトは突然そう言うと、ベイとワッカを引き留めた。何とも言葉に出来ない空気が流れるのを感じながら、ベイとワッカがまた部屋の中へと戻ってきた。


ふたりを引き止めた事で、遥はホワイトが希望の事を既に知っている事を確信した。

ホワイトは一体どうするつもりなのだろう……希望をどうするつもりなのだろう…

聞きたい言葉のはずなのに、いざとなるとうまく言葉に出来ず、遥はしどろもどろになった。


「あ、あの………月にいる存在の事なんだけど……」


初耳な話に、ベイとワッカは全く意味がわからず、遥の言葉をただ黙って待ち続けた。

ホワイトは驚く事もなくその言葉を受けると、静かに語りはじめた。


「わかっている。ただ、あの子供は母星では受け入れる事は出来ない」


遥は、その言葉に打ちのめされると、暫くその場に動かず立ち尽くし続けた。


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