MOON~双子姉妹~

なにわしぶ子

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76話~希望~

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少しウェーブのかかった、髪の毛のその男の子は
窓から地球が見えるその部屋に、ひとりでいた。

真っ白いひとつなぎのワンピースの様な
長袖の洋服を着て、裸足の足を放り出して
床に直に座り込んでいた。

その少年は、思い付いたかの様に
棚から真っ白い紙を引っ張りだしてくると
床にひろげ、歌を歌いながら、
クレヨンで絵を描きはじめた。

「おとうさんのかお~♪」

完成した似顔絵の描かれたその白い紙を
両手で持つと、少年は満足気に頭上に掲げてみせた。


少年は、その紙をくるくると丸めると
右手にしっかりと握りしめて、部屋から出ると
廊下を走って出て行った。







あれから、少しの時間が流れた。


月には、大和と真琴のふたりが今も尚
常駐し、月の管理の任務を遂行していた。

避難の為に建築してきた居住区は、街が復興次第
民間に売りに出される事に決まった
その為の色々な設備を、大和と真琴は日々整えていた。



一方、母星に戻った、他の【2%】のメンバー達は、粒子の除去を受けて、現在は上層部として
最前線で活躍していた。


特にベイはあと少し処置が遅ければ、手遅れになっていたみたいだ。
今はそのテレポート能力を生かし、母星の全滅した街の復興に全力を尽くしていた。


ワッカはそんなベイの補佐役として、サポートをしながら、同じく復興に携わっていた。


李留は、上層部の中で新しく花の遺伝子改良をはじめたらしい。花屋で勤務していた経験を生かしながら、オーナーであった鞍馬の助言を受けつつ、荒廃した母星に花と緑を再生する使命に燃えていた。

遥は上層部の中で、今も尚【2%】のリーダーとして月と母星のパイプ役を努めていた。


治療を終えて、真琴と大和の治療の為に
月に戻り交代したいと、メンバー皆が望んだけれど、それはホワイトにより、却下をされた。
そして、その理由は決して教えてもらえなかった。


その代わり、上層部から粒子除去の際の色々なデータが月の大和の元に送られた。


そんな大和から、色々な母星でしか手に入らない
材料の支援要望がくる度に、遥はそれらを乗せて
すぐに無人飛行型の貨物シャトルを飛ばした。


大和と真琴の容態が悪くなったとかの
連絡はない。
あの大和の事だから、きっと新しく開発をして
不可能を可能にしたに違いない。


遥は、不安になりながらも、心の奥底で大和の【ちから】を信じていた。


沙羅と暖の遺体は、家族の元に引き渡されたあと
墓地に隣り合わせに埋葬された。

沙羅と真琴の父親は憔悴し、笑顔を失った。
そんな父親の元を、鞍馬が頻繁に訪れた。
父親は元気を取り戻し、ふたりで真琴の帰還を待つ事にしたのだった。







少年はそっと扉を開くと、トコトコとその部屋の中へと入っていった。

キョロキョロと見渡して、誰もいない事がわかると、さらにその奥にある棚の所まで裸足でかけていった。


「ヨイショ……ヨイショ……」


棚に両手をかけて、少年はそれを手慣れた様子で
横にスライドさせた。

すると、扉が現れた。

少年は右手を大きくひろげると
スイッチを、力強く押し込んだ。

扉は静かに開きはじめた。

少年はにっこりと笑顔になると

「おとうさん!!!!」

と、大声で叫びながら、中へと走っていった。




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