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第56話 新たな希望
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地下鉄の駅構内に足を踏み入れたハイネ一向。
「ここは魔族の町と同じ空気がする」
ふと同行している魔族がそう言った。
「魔族の町と同じ空気?」
ハイネは魔族に尋ねる。
「あぁ、魔族の町には必ず“月の滴”と言う植物が植えられている。その植物は魔素を吸い込むんだ。」
「ちょっと待って。魔素って何?」
しばらく考え込む魔族。口で説明するには難しいようだ。
「これの事か?」
ゾッドは瓶に入った蠢く(うごめく)邪悪な個体を取り出す。アンデッドのコアだ。
「近いがちょっと違うな。瘴気を濃くした感じかな」
「待って・・・」
不意にハイネが言う。そしてゾッドから瓶を奪うと蓋を開けた。すると瓶の中のものが塵となって消えた。
「そうだ・・・間違いない。この空気に漂うものがアンデッドのコアを壊すんだ!」
ハイネは興奮したように言う。
「やあ、みんな何しているの?」
不意に暗がりから誰かがやってくる。
「・・・カブ?」
ハイネは声を掛ける。
「みんな揃ってどうしたの?」
カブは暢気に聞いてくる。
「いや・・・地下鉄の構内を調べに・・・カブは何を?」
「溶岩地帯とトンネルの中ってこの苔が良く育つんだ。一応許可を貰って育てているけど」
何やら光り輝くものを手にするカブ。
「おい・・・それは処女厨苔じゃないか?」
不意にグレンが言う。処女厨苔とはユニコーンが女性に張る結界に近い形と色をしていることから名付けられた苔だ。
「うん。この苔は綺麗だし出す聖素がいろいろ便利なんだよね。腐食を防いだり瘴気を消滅させたり。妖精の町でも栽培されているけどここだと育ちが早くて」
「カブ・・・それがあればアンデッドを町に近付けなく出来るよ!」
シエルはそう言いながらカブに抱き着く。カブはポカンとしている。
「その苔なら魔物の町にもあるな」
ドロスが言う。
「つまりその苔がアンデッドを近付けない結界になっていたという事か」
勇者は合点がいったという顔をする。
「カブ、それを町でも栽培できない?」
シエルが訪ねる。
「栽培キットがあれば出来るけど・・・」
「よし、俺が栽培キットを作ろう」
ゾッドが言う。
「それにしてもカブ様は暢気ですわね。あれだけのアンデッドが押し寄せてきたというのに」
イリアが呆れたという声を出す。
「え?アンデッド?僕は2週間程地下に潜っていたから世情に疎くて・・・」
ハイネは最近の地上の事をカブに伝えた。カブはびっくりした顔をするが直ぐに真顔になる。
「だったらゾッド、妖精の町へ行くんだ。そこに栽培ノウハウがある。それと火山岩地帯の岩を持っていくと良い。あれは苔の成長を早くする。僕も協力するよ」
そうカブはゾッドに言った。
「それでは輸送手段も必要だな。俺の空間保管魔法で出来るだけ持っていくとして妖精の町まではどうするか」
ゾッドが唸り声をあげる。
「転生術式を稼働させます」
シルキーが言った。術式は最低限しか起動できない。貴族たちでは難しいだろう。
「大丈夫?」
「ダメもとでもやるしかないでしょ?」
シルキーが答える。しかし確実性に乏しい。
「俺が動こう」
不意に勇者が言った。
「俺は神から特権を与えられている。今の俺の言葉は神に等しい。俺が許可するよ。すべての責任も俺が負う」
そうと決まれば実行するのみ。町の皆の協力を得て火山岩地帯の岩を採取していく。3日ほど採取した時
「これくらいあれば十分かな」
ゾッドが言った。そして空間保管魔法で火山岩をしまう。
「それでは魔術式転送装置へ」
シルキーがそう言うとゾッドとカブは魔術式転送装置に向かう。
「それではしばしお別れだ」
そう言うと2人は転送装置に消えていった。
「問題も解決したし町にも処女厨苔を配置できたから魔族の土地へ行こう」
ハイネはミュウジィと魔族にそう言う。
「俺も同行させてくれないか?」
不意に勇者がそう言った。
「勇者様も行ってくださるのですか?」
ハイネが訪ねる。
「あぁ、魔族の町周辺の失踪事件が気になる」
「俺も行こう」
グレンが立ち上がる。
「僕たちは処女厨苔から対アンデッド薬を作ってみる」
シエルはこの町に残るようだ。
「それでは高速艇を用意します」
そう言うとシルキーは高速飛行船の手配を進める。出発は明日になりそうだ。
「ここは魔族の町と同じ空気がする」
ふと同行している魔族がそう言った。
「魔族の町と同じ空気?」
ハイネは魔族に尋ねる。
「あぁ、魔族の町には必ず“月の滴”と言う植物が植えられている。その植物は魔素を吸い込むんだ。」
「ちょっと待って。魔素って何?」
しばらく考え込む魔族。口で説明するには難しいようだ。
「これの事か?」
ゾッドは瓶に入った蠢く(うごめく)邪悪な個体を取り出す。アンデッドのコアだ。
「近いがちょっと違うな。瘴気を濃くした感じかな」
「待って・・・」
不意にハイネが言う。そしてゾッドから瓶を奪うと蓋を開けた。すると瓶の中のものが塵となって消えた。
「そうだ・・・間違いない。この空気に漂うものがアンデッドのコアを壊すんだ!」
ハイネは興奮したように言う。
「やあ、みんな何しているの?」
不意に暗がりから誰かがやってくる。
「・・・カブ?」
ハイネは声を掛ける。
「みんな揃ってどうしたの?」
カブは暢気に聞いてくる。
「いや・・・地下鉄の構内を調べに・・・カブは何を?」
「溶岩地帯とトンネルの中ってこの苔が良く育つんだ。一応許可を貰って育てているけど」
何やら光り輝くものを手にするカブ。
「おい・・・それは処女厨苔じゃないか?」
不意にグレンが言う。処女厨苔とはユニコーンが女性に張る結界に近い形と色をしていることから名付けられた苔だ。
「うん。この苔は綺麗だし出す聖素がいろいろ便利なんだよね。腐食を防いだり瘴気を消滅させたり。妖精の町でも栽培されているけどここだと育ちが早くて」
「カブ・・・それがあればアンデッドを町に近付けなく出来るよ!」
シエルはそう言いながらカブに抱き着く。カブはポカンとしている。
「その苔なら魔物の町にもあるな」
ドロスが言う。
「つまりその苔がアンデッドを近付けない結界になっていたという事か」
勇者は合点がいったという顔をする。
「カブ、それを町でも栽培できない?」
シエルが訪ねる。
「栽培キットがあれば出来るけど・・・」
「よし、俺が栽培キットを作ろう」
ゾッドが言う。
「それにしてもカブ様は暢気ですわね。あれだけのアンデッドが押し寄せてきたというのに」
イリアが呆れたという声を出す。
「え?アンデッド?僕は2週間程地下に潜っていたから世情に疎くて・・・」
ハイネは最近の地上の事をカブに伝えた。カブはびっくりした顔をするが直ぐに真顔になる。
「だったらゾッド、妖精の町へ行くんだ。そこに栽培ノウハウがある。それと火山岩地帯の岩を持っていくと良い。あれは苔の成長を早くする。僕も協力するよ」
そうカブはゾッドに言った。
「それでは輸送手段も必要だな。俺の空間保管魔法で出来るだけ持っていくとして妖精の町まではどうするか」
ゾッドが唸り声をあげる。
「転生術式を稼働させます」
シルキーが言った。術式は最低限しか起動できない。貴族たちでは難しいだろう。
「大丈夫?」
「ダメもとでもやるしかないでしょ?」
シルキーが答える。しかし確実性に乏しい。
「俺が動こう」
不意に勇者が言った。
「俺は神から特権を与えられている。今の俺の言葉は神に等しい。俺が許可するよ。すべての責任も俺が負う」
そうと決まれば実行するのみ。町の皆の協力を得て火山岩地帯の岩を採取していく。3日ほど採取した時
「これくらいあれば十分かな」
ゾッドが言った。そして空間保管魔法で火山岩をしまう。
「それでは魔術式転送装置へ」
シルキーがそう言うとゾッドとカブは魔術式転送装置に向かう。
「それではしばしお別れだ」
そう言うと2人は転送装置に消えていった。
「問題も解決したし町にも処女厨苔を配置できたから魔族の土地へ行こう」
ハイネはミュウジィと魔族にそう言う。
「俺も同行させてくれないか?」
不意に勇者がそう言った。
「勇者様も行ってくださるのですか?」
ハイネが訪ねる。
「あぁ、魔族の町周辺の失踪事件が気になる」
「俺も行こう」
グレンが立ち上がる。
「僕たちは処女厨苔から対アンデッド薬を作ってみる」
シエルはこの町に残るようだ。
「それでは高速艇を用意します」
そう言うとシルキーは高速飛行船の手配を進める。出発は明日になりそうだ。
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