異世界転生～女子高生が男の子に生まれ変わったのだが

松林松茸

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第55話　勇者の旅

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神殿で会議が行われていた。拡大するアンデッドの襲撃が世界全土に広がっていた。神々と準王族はアンデットの襲撃に対して如何に対処するかを話し合っている。
「人種の地で襲撃されていないのは妖精の町と火山岩地帯周辺の工場や魔物の町だけだ」
「他はひどい有様です。死者も出ていますし・・・」
「なんとしてでも食い止めねばならない」
皆、口々に現状の悲惨さを報告し合う。
「ちょっと待ってくれ」
不意に青年が声を上げる。山中　剛だ。
「普通に考えて火山岩地帯は浄化薬製造工場が立ち並んでいるだろ？何故そこを襲撃しないのか考えないのか？」
「そう言いますと？」
グレンが訪ねる。
「一番の拠点を襲撃しない理由。それは襲撃できない何かがあると思わないか？俺だったらそこを真っ先に襲撃するね。だが襲撃されるのは近くの黒エルフの町だけだ。そして地下鉄の駅に避難した住民に被害はない。そこから考えると火山岩地帯から地下鉄構内にアンデッドを近づけない何かがあると考えた方が自然だ。まずはそこを確認する必要がある。もし可能であればその何かを全ての町に満たせば町に被害はなくなるだろう。俺はそう考える」
「実は・・・俺の部下が同じことを言っていました。それで黒エルフの町に向かっています」
「そいつはどんな奴だ？」
「アンデッドのコアを見分けられる人間です」
「よし、その人間と合流しよう。そうすれば何かわかるかもしれない」
そう言うと勇者は席を立つ。
「俺も連れて行ってください」
グレンが後を追う。周りの神々、準王族は見守る事しかできない。
「わかった」
そう言うと2人は神殿を後にする。

「勇者殿、グレーダース卿。我々もお供します」
そう言ってきたのはゾッド、シエル、イリアである。
「ここは安全だ。なぜ危険を冒す？」
「俺は技術者として新たな武器を作りたい。平和のために。矛盾しているのも解っています。でも・・・これ以上の犠牲は耐えられません」
そう言うゾッド。
「僕は浄化薬を作りました。次はアンデッドを近づけないものを作りたい。だから火山岩地帯にある工場へ行きたいです」
シエルとイリアは力強い視線を送る。
「わかった。でも俺は空を飛んでいく。グレンを抱きかかえるので精一杯だ。お前たちはどうする？」
「ペガサスで追いかけます。3人なら何とでもなります」
「よし、それでは黒妖精の町へ向かおう」
そして神殿を出ようとする一行。
「剛・・・」
不意に幼女が声を掛けてくる。
「心配するな。俺は戻ってくる」
そう言いながら幼女の頭を撫でる勇者。そして浮遊都市ラーダットを後にする勇者一行であった。

「ちっ、きりがないな」
ナッシュは苦笑いを浮かべる。
「今日は一層、敵が張り切っているようで」
少し息を切らせながら苦笑いするドロス。それでも土魔法で泥濘を作りアンデッドの足止めをする。近づくアンデッドを一撃で塵に変える。
風を切る弓矢、唸るナッシュの剣、そして交錯する声が場を支配していた。
「更にアンデッドと怪物が・・・このままでは」
シルキーは苦虫を噛み潰したような顔をする。その時、怪物の群れを大きな光が包み込む。そしてアンデッド、怪物は塵と化した。
「あれは・・・」
シルキーが空を見上げると急速接近してくる一団が目に入る。
「大丈夫ですか？」
地上に降り立った黒髪の青年がナッシュに声を掛ける。腕にはグレンを抱えて。
「あぁ、大丈夫だ問題ない」
「俺は山中　剛と言います。この町を調べにやってきました」
「そうか。しかしまだ奴らが残っているのでな。後で案内しよう」
そう言いながらナッシュは剣を握る。
「助太刀します」
剛は虹色に輝く剣を構える。そして2人は迫りくる怪物たちの群れへ飛び込み敵を次々塵に返す。
「シエルさん・・・」
シルキーが声を上げる。空からペガサスにまたがったシエルたちが下りてきた。
「僕たちも戦います」
そう言うと3人は武器を構える。
勇者の参戦により戦況は大きく傾く。狂戦士と勇者は次々と怪物、アンデッドを塵に帰す。周りの兵士たちは2人の後ろを守るため回り込む怪物の群れを一掃する。
「これで最後だ」
勇者はそう言うと腕を掲げ大きな光を放つ。怪物たちは一瞬にして消滅した。
「礼を言う。俺はナッシュだ」
ナッシュは手を差し出す。
「俺は勇者として召喚されました。俺の仕事をしたまでです」
そう言いながら強く手を握り返す。
「あ、飛行船がやってくる」
不意にシエルが声を上げる。そして飛行船は町の広場に着陸した。

「みんな・・・どうして？」
ハイネが仲間たちに声を掛ける。
「勇者殿がハイネと同じ考えをしてな」
グレンが説明してくれた。
「君がアンデッドのコアを見える人か？」
勇者が声を掛ける。
「はい。ハイネと申します」
「俺は山中　剛だ」
「え？日本の方ですか？」
「え？君も転生者か？」
2人は暫く見つめ合う。
「ゴホン」
グレンが不意に咳払いをした。
「あ、地下鉄の駅を見せてください」
シルキーにハイネが頼み込む。快くシルキーは地下鉄の駅へ一行を連れて行った。

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