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第45話 天空の都
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「人が多いな。流石は王都だ」
ここは浮遊島ラーダット。神の力“聖力”を込められた術式により1000年前から空を飛んでいる。上空1万メートルに位置する島の割には春の暖かさに包まれている。これも術式に依るところが大きいのであろう。
「俺はちょっと別行動するよ。準王族としての仕事でね」
グレンはそう言うと神殿に向かう。残されたハイネは一人、この都を散策していた。
「君、面白い魔力をしているな」
不意に声を掛けられる。少年のような雰囲気があるが同時に大人の色気も兼ねそろえている。不思議な男が声を掛けてきた。彼はハイネに好奇の目を向けてくる。
「そんなことはないですよ。ごく平凡な魔術量しかありませんし」
そう答えながらもハイネは相手を観察する。
(魔力を感じない。もっと他の力を感じる。これは聖力?するとこの人は神族ってことだよね?王族相手なら失礼のないようにしなくては)
「申し遅れました。僕はハイネと言います。人間の町から課外授業でこの町にやってきたものです」
「そう畏まるなよ。俺はエロース。王族ではあるけど自由人だ。それにしても君は面白い魔力だね。先ほど準王族を見かけたけど彼の魔力は大きいだけだった。君のは濃厚で力強い。例えるなら準王族が2リットルのペットボトルのジュースだとしたら君のは500ミリリットルのペットボトルに入った濃縮された原液だ。同じ魔力を放出したら君の方が倍以上の威力を出せるだろうね。当然操作するには他の人より数倍優れた制御技術がなければ扱いきれないだろうし」
周りがハイネを凄いと言っていた理由が分かった気がした。
「ところで君は1人かな?だったらお茶しに行かない?」
「申し訳ございません。一応、課外授業中ですので」
「だったら尚更一緒にお茶しようよ。どうせ課外授業なんて遊びなんだから」
そう言うと彼はハイネの手を強引に引いていこうとする。
「困ります。見知らぬ男性とそんなことは」
「良いじゃん。どうせやりまくっているのだから」
「初対面で普通そんな事を言いますか?最低!!」
「お茶するだけだから」
「最低な人とは絶対に嫌です!」
「男同士だし」
「絶対ベッドに連れ込まれます。貴方は最低ですし」
「じゃあ王族命令で」
「それは職権乱用です」
「じゃあ・・・転生したのにチート能力がなかったことについて」
「え?・・・」
(神だから私が転生者だと知っているのか?)
いつものハイネなら付いて行ったであろう。しかし今はミュウジィの事でそんな気分になれない。
「大丈夫だって、俺はベッドでは特にイケメンなんだから」
「そういう気分ではないので」
「俺は性愛の神だ。君みたく性愛に満ち溢れていると我慢できなくなるんだよ」
(この人アレな人だ。適当にごまかして逃げよう)
「そう言えば用事を思い出したので私はこれで」
「嘘はダメだよ」
ハイネは困り切っていた。まさか来て早々に絡まれるとは。しかも性愛の神である。絶対にベッドの会話を要求される。そんな気分ではないのに。
「エロース、しつこい男は嫌われますよ。それに貴方の力が全く効いていないじゃないですか。」
そう言いながら桁違いの聖力を身に纏った女性が近づいてくる。
「げっ、アプロディーテ・・・」
「あなたは下半身に正直すぎます。確かにその方は性愛に満ち溢れているかもしれません。それと同時に愛もあります。性愛欲求だけではその殿方をベッドに連れ込めませんよ」
そう言うと女神はハイネの手を引いてその場を離れた。
「ありがとうございました。危ないところを助けて頂いて」
「こちらこそごめんなさいね。身内が失礼なことを」
「僕はハイネと申します」
「私はアプロディーテ。愛を司る女神よ」
「お礼にお茶でも如何ですか?」
「良いわ。行きましょう」
そう言うと愛の女神はハイネをお洒落なカフェに連れていく。
カフェでお茶をしながら談笑する2人。彼女の慈愛に満ちた雰囲気が心地よい。
「あの・・・転生って先ほどの方が言っていましたけど」
「あぁ、貴方みたく転生する人は意外と多いのです。大半が前世の記憶がなくなっていますが稀に記憶が消えていない人も居て」
「本当ですか?」
「ええ、記憶が消えていない人はみんなチート能力がないのはおかしいって騒ぎますからね。一般的には高い能力なのに」
「・・・」
「それでも異世界無双が普通と考える人は居て」
「僕も考えたことはありますが・・・現実を受け入れて・・・」
「それが正しいでしょう。この世界で無双するには条件が必要です。それに特別処置で同性、異種族の同性とやりまくると力が大きくなるというものがあります。平和な世の中では意味がありませんが」
「あの・・・条件は何ですか?」
「童貞、処女であり召喚された人ですかね。同性愛者もですが」
(ラノベのテンプレか!)
「転生者はやはり童貞、処女で不幸な死に方をした人が大きな魔力を持って生まれます。他の人の1.5倍の魔力で。貴方の魔力量が人並みなのは前世で幸せな生活を送っていたからでしょう」
(要するに前世のエロ要素がこの世界に影響するのか)
「ところであなたは悩んでいますね?」
「実は・・・」
ハイネはミュウジィの事で悩んでいることを語りだす。始めた会った相手に自分の苦悩を曝け出せるのは彼女の慈愛に満ちた力がそうさせるのであろう。
「でも貴方はその女性を愛している。恋愛とは別の感情で。違いますか?」
「そうかもしれません。でも彼女に性欲を向けることが出来なくて。恋愛感情を感じなくて・・・」
「それは欲望の先にある愛でしょう。家族に向ける愛、自然を愛する愛、動物に向ける愛。そこに性愛はないでしょ?貴方の中では恋愛と性愛を混ぜて考えていませんか?その女性に家族に向ける愛はありませんか?」
「確かに家族に向ける愛情はあるかもしれません」
「そして生前の性別と同じ相手に性愛を向けることを恐れている」
「そうかもしれませんね」
「同性に性愛を向けるのだから抵抗はあるでしょうね。殿方に向けるのは異性への性愛ですから」
「そうです」
「あなたの中に眠る力が目覚めれば違う見方が出来るでしょう。貴方は性別を超えた存在になろうとしていますから」
アプロディーテは意味深なことを言った。
ここは浮遊島ラーダット。神の力“聖力”を込められた術式により1000年前から空を飛んでいる。上空1万メートルに位置する島の割には春の暖かさに包まれている。これも術式に依るところが大きいのであろう。
「俺はちょっと別行動するよ。準王族としての仕事でね」
グレンはそう言うと神殿に向かう。残されたハイネは一人、この都を散策していた。
「君、面白い魔力をしているな」
不意に声を掛けられる。少年のような雰囲気があるが同時に大人の色気も兼ねそろえている。不思議な男が声を掛けてきた。彼はハイネに好奇の目を向けてくる。
「そんなことはないですよ。ごく平凡な魔術量しかありませんし」
そう答えながらもハイネは相手を観察する。
(魔力を感じない。もっと他の力を感じる。これは聖力?するとこの人は神族ってことだよね?王族相手なら失礼のないようにしなくては)
「申し遅れました。僕はハイネと言います。人間の町から課外授業でこの町にやってきたものです」
「そう畏まるなよ。俺はエロース。王族ではあるけど自由人だ。それにしても君は面白い魔力だね。先ほど準王族を見かけたけど彼の魔力は大きいだけだった。君のは濃厚で力強い。例えるなら準王族が2リットルのペットボトルのジュースだとしたら君のは500ミリリットルのペットボトルに入った濃縮された原液だ。同じ魔力を放出したら君の方が倍以上の威力を出せるだろうね。当然操作するには他の人より数倍優れた制御技術がなければ扱いきれないだろうし」
周りがハイネを凄いと言っていた理由が分かった気がした。
「ところで君は1人かな?だったらお茶しに行かない?」
「申し訳ございません。一応、課外授業中ですので」
「だったら尚更一緒にお茶しようよ。どうせ課外授業なんて遊びなんだから」
そう言うと彼はハイネの手を強引に引いていこうとする。
「困ります。見知らぬ男性とそんなことは」
「良いじゃん。どうせやりまくっているのだから」
「初対面で普通そんな事を言いますか?最低!!」
「お茶するだけだから」
「最低な人とは絶対に嫌です!」
「男同士だし」
「絶対ベッドに連れ込まれます。貴方は最低ですし」
「じゃあ王族命令で」
「それは職権乱用です」
「じゃあ・・・転生したのにチート能力がなかったことについて」
「え?・・・」
(神だから私が転生者だと知っているのか?)
いつものハイネなら付いて行ったであろう。しかし今はミュウジィの事でそんな気分になれない。
「大丈夫だって、俺はベッドでは特にイケメンなんだから」
「そういう気分ではないので」
「俺は性愛の神だ。君みたく性愛に満ち溢れていると我慢できなくなるんだよ」
(この人アレな人だ。適当にごまかして逃げよう)
「そう言えば用事を思い出したので私はこれで」
「嘘はダメだよ」
ハイネは困り切っていた。まさか来て早々に絡まれるとは。しかも性愛の神である。絶対にベッドの会話を要求される。そんな気分ではないのに。
「エロース、しつこい男は嫌われますよ。それに貴方の力が全く効いていないじゃないですか。」
そう言いながら桁違いの聖力を身に纏った女性が近づいてくる。
「げっ、アプロディーテ・・・」
「あなたは下半身に正直すぎます。確かにその方は性愛に満ち溢れているかもしれません。それと同時に愛もあります。性愛欲求だけではその殿方をベッドに連れ込めませんよ」
そう言うと女神はハイネの手を引いてその場を離れた。
「ありがとうございました。危ないところを助けて頂いて」
「こちらこそごめんなさいね。身内が失礼なことを」
「僕はハイネと申します」
「私はアプロディーテ。愛を司る女神よ」
「お礼にお茶でも如何ですか?」
「良いわ。行きましょう」
そう言うと愛の女神はハイネをお洒落なカフェに連れていく。
カフェでお茶をしながら談笑する2人。彼女の慈愛に満ちた雰囲気が心地よい。
「あの・・・転生って先ほどの方が言っていましたけど」
「あぁ、貴方みたく転生する人は意外と多いのです。大半が前世の記憶がなくなっていますが稀に記憶が消えていない人も居て」
「本当ですか?」
「ええ、記憶が消えていない人はみんなチート能力がないのはおかしいって騒ぎますからね。一般的には高い能力なのに」
「・・・」
「それでも異世界無双が普通と考える人は居て」
「僕も考えたことはありますが・・・現実を受け入れて・・・」
「それが正しいでしょう。この世界で無双するには条件が必要です。それに特別処置で同性、異種族の同性とやりまくると力が大きくなるというものがあります。平和な世の中では意味がありませんが」
「あの・・・条件は何ですか?」
「童貞、処女であり召喚された人ですかね。同性愛者もですが」
(ラノベのテンプレか!)
「転生者はやはり童貞、処女で不幸な死に方をした人が大きな魔力を持って生まれます。他の人の1.5倍の魔力で。貴方の魔力量が人並みなのは前世で幸せな生活を送っていたからでしょう」
(要するに前世のエロ要素がこの世界に影響するのか)
「ところであなたは悩んでいますね?」
「実は・・・」
ハイネはミュウジィの事で悩んでいることを語りだす。始めた会った相手に自分の苦悩を曝け出せるのは彼女の慈愛に満ちた力がそうさせるのであろう。
「でも貴方はその女性を愛している。恋愛とは別の感情で。違いますか?」
「そうかもしれません。でも彼女に性欲を向けることが出来なくて。恋愛感情を感じなくて・・・」
「それは欲望の先にある愛でしょう。家族に向ける愛、自然を愛する愛、動物に向ける愛。そこに性愛はないでしょ?貴方の中では恋愛と性愛を混ぜて考えていませんか?その女性に家族に向ける愛はありませんか?」
「確かに家族に向ける愛情はあるかもしれません」
「そして生前の性別と同じ相手に性愛を向けることを恐れている」
「そうかもしれませんね」
「同性に性愛を向けるのだから抵抗はあるでしょうね。殿方に向けるのは異性への性愛ですから」
「そうです」
「あなたの中に眠る力が目覚めれば違う見方が出来るでしょう。貴方は性別を超えた存在になろうとしていますから」
アプロディーテは意味深なことを言った。
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