上 下
83 / 88

第八十二話 冬休み

しおりを挟む
テストも終わり冬休みに入る。今回は特に用事は無い。帰宅せず毎日、ミーアの部屋に入り浸っている。ジュドーとライディースもモブ令嬢を伴って来ている。

「今度、温泉でも行きませんか?」

レナンジェスはミーアに問い掛ける。

「え?温泉ですか?」

ミーアは頬を赤らめ聞き返してくる。

「レナンジェス…もしかして…」

ライディースは妖淫な眼差しでレナンジェスを見つめる。

「良いね」

ジュドーは爽やかな笑みを浮かべる。

『それで…混浴ですの?』

モブ令嬢達が目を輝かせながら言う。

「水着着用なら混浴でも良いかもしれませんね」

レナンジェスの言葉にモブ令嬢はニンマリと笑う。しかしミーアの護衛は複雑な表情を浮かべた。

「それで…どこの温泉施設へ?遊園地ですか?」

ミーアはモジモジしながら訪ねてくる。

「旧モブ国Bは如何ですか?」

レナンジェスがそう言うとミーアは暗い表情を浮かべる。

「レナンジェス、君は知らないかもしれないが旧モブ国Aは帝国のチャールズ殿下の領なのだよ。旧モブ国Bはカイザル殿下の領だ」

ジュドーが苦笑いしながら言う。

「それは知りませんでした…では…どこか良い場所はありませんかね?」

「マッケンシー領の山側にリゾートがある。温泉とスキー場完備だ。そこへ行かないか?」

ジュドーはニヤリと笑う。

「ジュドー様の実家ですか。それも良いですね」

レナンジェスの言葉で行先が決まる。

「我の領は穀倉地帯と大都市しかないのに…」

何故か羨ましそうなライディース。とりあえず無視して計画を練るレナンジェス。

『楽しみですわぁ』

モブ令嬢は嬉しそうに呟くと妄想の世界へ旅立った。



2日後、レナンジェス達はマッケンシー領に向けて旅立つ。

「何時の間に列車が…しかも個室付きとは…」

レナンジェスは驚愕する。列車構想は過去に企画書で国に提出していた。しかし列車が開通した記憶がない。そもそも工事着工した記憶すらないのだ。

「それはレナンジェスが異世界に行っていた時期に工事が始まったのだ。マッチョの群れが「恩人のレナンジェスの為に!」と張り切って1カ月で完成させたから」

どうやらマッチョ全てがレナンジェス追悼工事と称して完成させたらしい。

「勝手に殺さないでください」

レナンジェスは苦笑いで言う。

「仕方が無いよ。レナンジェスは異世界に居たのだから。因みに動力は帝国の炎の魔石技術と王国の蒸気機関技術だよ。君が作った遊園地の温泉の蒸気動力を人工的に作った感じだよ」

ジュドーが爽やかな笑みを浮かべながら言う。

(何でもありですか?普通は何年も掛かる案件だろうに…)

レナンジェスは解せぬという表情を浮かべる。

「マッチョは土魔法使いが多いみたいですから…それと錬金術師も」

ミーアがレナンジェスに笑みを向けながら言う。その笑顔を思わずガン見するレナンジェス。

「どうされました?」

「笑顔が可愛らしくて魅入ってしまいました」

次の瞬間、レナンジェスの脛(すね)に痛みが走る。ミーアが顔を赤らめてレナンジェスに蹴りを入れたのだ。

「痛いです…」

「急にそんな事を言ううからです」

恥ずかしそうにするミーア。

「そんなレナンジェスも…」

ライディースはクールさを装いながら耳元で囁く。

「ちょっとはミーア様の余韻に浸らせてくださいよ」

レナンジェスがライディースに言うとミーアは更に顔を赤らめる。

「レナンジェス…見せつけるなよ!これはお仕置きが必要かな」

少し黒い笑みを浮かべて言うジュドー。

「我も同感だ」

淫らな笑みを浮かべるライディース。

『僕達も参加で!』

含み笑いを浮かべる小悪魔ーズ。

「勘弁してください」

レナンジェスがそう言うが4人はレナンジェスに迫ってくる。そして…ゴックン&逆ゴックン+3度目の精通の再現の刑に処せられた。

『素晴らしいゲイ術ですわ!!』

モブ令嬢が嬉しそうにそう言うと恋人のジュドー、ライディースと唇を重ねた。

「皆さん…こんな所で!!」

血走った眼差しで叫ぶミーア。

「ごめん…」

レナンジェスはそう囁くとミーアの頬にキスをした。



その後、温泉施設に到着する一行。駅からケーブルカーで来られるのは極めて画期的に思える場所だ。

(懐かしい雰囲気だなぁ)

不意にレナンジェスは思う。温泉街が木造建築であるからだ。まるで日本の秘湯と言った感じだろうか。

「木造建築は温かみがありますわね」

ミーアが楽しそうに呟く。

「そうでしょう。何しろマッケンシー家が長年に渡り維持してきた秘伝の技術ですから」

どうやらマッケンシー家では木造建築技術を長年に渡り高め、芸術の域まで昇華させたらしい。

「釘一本使わないとは…素晴らしいな」

ライディースはクールに言う。

「それよりも温泉を楽しみましょう」

ジュドーは満面の笑みで一番豪華な温泉宿に皆を連れて行くのであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

僕はキミ専属の魔力付与能力者

みやこ嬢
BL
リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。 ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。 そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。 「君とは対等な友人だと思っていた」 素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。 【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】 * * * 2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!

天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

たまにはゆっくり、歩きませんか?

隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。 よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。 世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

目覚めたそこはBLゲームの中だった。

BL
ーーパッパー!! キキーッ! …ドンッ!! 鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥ 身体が曲線を描いて宙に浮く… 全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥ 『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』 異世界だった。 否、 腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。

処理中です...