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第二十九話 ライブではなく音楽フェスになった件

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王都の旧闘技場でリハーサルをするフルメンバー。ここは5万人集客できる場所だ。

普段は魔法合戦や喜劇の舞台として使われているがコンサートで使われるのは初めてだそうだ。

(それにしても…どんどん話の方向が変わったよなぁ)

初めは数曲ずつ演奏する予定だった。しかし貴族の要望で1人1時間舞台に立たなければならない。

休憩時間を入れても5時間はコンサートが行われる。

(ロックフェスや音楽フェスだ…既にコンサートではない…)

そして中盤はレナンジェスがソロで、最後にレナンジェス&俺様王子のツインヴォーカルライブだ。

途中でミュージーとルーアのアイドルコンサートや小悪魔2人のコンサートも挟む。それでも前日リハーサルと急遽演奏に加わった者達を含めれば大所帯だ。

「朕はアイドルやミュージシャンも増やそうと思う」

第一王子はそう言いながら楽しそうにしている。

(それにしても音楽が入った魔具の売り上げが凄すぎるのだが…)

売り出した魔具の売り上げただけでもミリオンセラー連発だ。特にレナンジェス&俺様王子のアルバムは500万枚突破している。一番売り上げの低いレナンジェスのロックでも200万枚の売り上げだが他の者と比べると敗北感を覚える。

更にチケットにプレミアがついて転売が行われている。問題が山積みのフェスであるのだ。


(次回から転売対策するとして今回は集中しなければ)

レナンジェスはそう考えながらリハーサルを行うのであった。



(何か…ブルックリンのステージが凄い事に…)

最初に舞台に上がったブルックリンはフルオーケストラの演奏で歌う。透き通る声に幼い美少年の姿に会場は熱狂する。

(恐ろしい子…彼も転生者じゃないかと疑いたくなるわ)

レナンジェスは舞台袖から彼のコンサートに見惚れる。

「弟が心配?」

不意に声を掛けてくる悪役令嬢ミーア。

「いえ、我が弟ながら末恐ろしいと思いまして」

「貴方の弟ですからね。驚きもしませんわ」

そう言いながら日焼け対策をバッチりしたミーアは準備に取り掛かる。

(この先はどうなる事やら)

そんな事を考えながらレナンジェスは水で喉を潤した。



ミュージーとルーアのアイドルライブの後にレナンジェスのライブが始まる。悪役令嬢ミーアが2人のパートのピアノ演奏したのには複雑な気分であったがそんな事を言っている場合ではない。

(行くか…)

レナンジェスとライディース、ジュドー、第一王子カイザル、リムル、チャールズが舞台に姿を現すと黄色い歓声が飛び交う。

『ライディースさま~』

『ジュドー様素敵!』

『カイザル様好きです!』

『チャールズ殿下~』

『L・O・V・E・リ・ム・ル』

『レナンジェス~』

(私だけ同性の声援が多いのは何故だ?女の子の声援も混じっているが…納得いかない)

そう思いながらアップテンポな歌から始まるライブ。数曲アップテンポの歌を歌うとバラード曲を挟む。すると観客の何人かが泣き出した。

(反応は良いね)

レナンジェスはそう思いながらライブを進める。

「ラスト行くぜ~!全員準備は良いか~!!」

マイクを持って叫ぶと観衆は熱狂する。そしてハードロックを歌うと舞台を後にした。



「良い感じじゃないか」

俺様王子が嬉しそうに近付いてくる。

「はい、何とか成功しました」

「従者の舞台が終わったら次は我等だな」

「そうですね」

「派手なパフォーマンスも付け加えたいが…」

「アンコールが来たらみんなで歌うとかは?」

「それも良い。他には?」

「観客に飛び跳ねさせて終わったら楽器を破壊するとか」

「凄いぞ!それを実行しよう!!」

「でも予備の楽器はありますか?」

「ライブの回数分の用意はさせた」

俺様王子はそう言うと控室に戻って行く。

(無事に終わりますように…)

レナンジェスはそう願いながら控室に向かった。



『ラスト行くぜ~』

俺様王子とレナンジェスはそう叫びアップテンポな歌を歌う。そしてアンコールが巻き起こると全員で舞台に上がり派手に立ち振る舞った。

そして歌が終わると楽器を破壊する。

『ヴォー』

観衆は大熱狂のうちに幕は閉じた。

「即興にしてはよく出来たな」

俺様王子はご満悦だ。

「だがよぉ、毎回楽器を壊したら赤字にならねぇかぁ?」

チャールズが怪訝な表情をする。

「毎回、内容を変えれば済むかと」

ライディースはそう言いながら幾つかの案を出す。

「それでは新曲発表もすれば良いと思います」

悪役令嬢ミーアも楽しそうだ。

(しかし…3日連続でその後は移動日とリハーサル…私の夏休みは何処!)

レナンジェスは1人心の中でシャウトしていた。
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