上 下
23 / 88

第二十三話 休日出勤させないで!

しおりを挟む
(何だ…この人数は…)

集合場所には俺様王子と聖女ミュージー、ルーア、リムル、ライディース、ジュドーとその彼女のモブ侯爵令嬢&伯爵令嬢だ。そこにレナンジェスと小悪魔従者2人、私服のメイドさん5人だ。

『レナンジェス殿と護衛任務に就けることは光栄であります』

メイド戦隊はそう言いながら頭を下げる。彼女等はジュドーの付き人だ。軍の総司令官の家に仕えるだけあって隠しても強さが解る。

(それにしても…私服の近衛兵が周りに5人居るけどバレバレだし…校外学習ですか?)

レナンジェスはそう考えながらため息をつく。

「それでは行きましょうか」

レナンジェスはそう言うと王都に向かって歩き出した。



定番の公園で花畑を眺めたりベンチでアイスクリームを食べたりする一行。

「おい、アーンが無いぞ?」

俺様王子はそう言いながら不機嫌そうだ。

『お姉さま、アーンをご所望ですよ』

ミュージーとルーアにハンカチを渡しながら小悪魔従者はそっと囁く。

「殿下…その…アーン」

ミュージーは恥ずかしそうにする。それにルーアも続く。

「悪くないな」

俺様王子はデレながら呟き、小悪魔従者に親指を立てる。

「ジュドー様、口元に」

「ジュドー様アーン」

触発されたのかモブ侯爵&伯爵令嬢がジュドーとイチャつきだす。

「レナンジェス…我にも…」

「レナンジェス様、アーン」

ライディースとリムルまで触発されたみたいだ。

(このイチャイチャ空間を何とかしてくれ。ライディースとリムルも張り合わなくて良いのに。それにしても…うちの小悪魔はメイド団と近衛兵にまでアイスを配っているし…なんかあっちも良い雰囲気になってきているんですけど)

レナンジェスは周りを見ながら焦る。完全に無防備な状態なのだ。

(頼みのジュドーよ、令嬢の頬っぺたに付いたアイスを直接舐めるんじゃない!周りを警戒してくれ!!)

そう、遠目でガラの悪そうな連中がこちらを窺っているのだ。

「大丈夫だ、我が守るから」

不意にライディースが耳元で囁く。

(あんたの武術は普通だろ!)

「もしかして…レナンジェス様の前でならず者に凌辱されるのかしら」

(リムルよ、そうなったら私が処刑される)

レナンジェスは仕方なくジャケットの裏に隠し持っていた短剣に手を掛ける。

(来た…これは絡まれるパターンだ)

何時もならミーアの護衛が追い払うのだが今回はそうならない。

『おい、見せ付けているのか?』

ガラの悪そうな男7人程が難癖付けてくる。そしてこちらに歩み寄った時だった。小悪魔従者が7人を一瞬で鎮圧する。そして近くに居た警備兵に渡しているではないか。

「俺様は絡まれるのが初めてだぞ」

アリウスはそう言いながら感動している。

「殿下、喜ばないでください。一歩間違えば取り返しのつかない事になりかねません」

そう言いながらレナンジェスは氷の剣を茂みに放つ。

「ギャー」

男の悲鳴と共にドサリと倒れる音がした。

「やるね。あいつは指名手配犯の“血塗れルーク”じゃないか。警備兵10人でも勝てない相手を瞬殺とはね」

ジュドーが茂みを覗き込むと嬉しそうに言う。

「フム、大儀であった」

俺様王子はそう言いながら池の方へ歩き出す。レナンジェスは仕方なく後処理を警備兵に任せると皆の後を追った。



「次はあれだ」

俺様王子はボートを指さし言う。そしてミュージーとルーアを乗せると水魔法で水流を作りボートを流す。

その上で2人の少女とイチャイチャしだした。

「非常識な…」

周りの人は俺様王子の魔力に驚愕している。

「全く、アリウス殿下は面白い事を考える」

ジュドーもアリウスが作り出した水流にボートを流させる。そしてモブ侯爵&伯爵令嬢とイチャイチャしている。

(おい、周りの一般人を見ろ。男同士で遊んでいる者達が血の涙を流しているではないか…)

レナンジェスは仕方なく周りを警戒する。

「そこの護衛の方も良い雰囲気になっていないで仕事をしてください」

レナンジェスがそう言うとメイド護衛団と近衛兵団はカップル風に腕を組みながら辺りを散策しだす。

(一見、カップルを装った護衛に見えるが明らかにデートをしているな。ジュドーよ、君のメイドが寿退職する日も近いだろう。

「そんなに警戒しなくても我は大丈夫だと思うぞ」

「そうですよ。こちらもイチャイチャしましょうよ」

ライディースとリムルがそう言いながら腕を組んでくる。

(君達は解っていない。帝国民と王国民は教養があり、衣食住に困っていない。しかし敵対している他国ではそうでは無いんだぞ?高い税金に貴族の腐敗。故に先程の様な、ならず者がこの国にやってくると言うのに…)

レナンジェスはため息をつく。

「レナンジェスの心配は小国の連合の者達だろ?入国審査を厳しくしたんだ。先程の様な不法入国らしき者達が群衆で王国には入れないさ」

ライディースはレナンジェスの心配事を察してか耳元で甘く囁いた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!! CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け 相手役は第11話から出てきます。  ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。  役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。  そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

目覚めたそこはBLゲームの中だった。

BL
ーーパッパー!! キキーッ! …ドンッ!! 鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥ 身体が曲線を描いて宙に浮く… 全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥ 『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』 異世界だった。 否、 腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが

なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です 酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります 攻 井之上 勇気 まだまだ若手のサラリーマン 元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい でも翌朝には完全に記憶がない 受 牧野・ハロルド・エリス 天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司 金髪ロング、勇気より背が高い 勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん ユウキにオヨメサンにしてもらいたい 同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

処理中です...