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藤島白兎

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第四章 縁と結びで縁結び

第八話 演目 風と音を結び

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 酒場を楽しんでいる縁達だったが、異質な物を感じて酒場を出る。
 それを見た酒場の人達は、酒を飲みながらも鋭い目つきをしていた。
 戦いが始まる事を察したのだろう、そして縁達は人気ひとけの無い場所へとやって来た。

「ここなら大丈夫ね」
「ああ、てか隠す気が無いのか」
「感知された」
「居るんだろ――」
「標的がこんな所に居るなんてな! これで計画が! 私の幸せが! 叶う!」

 それは突然だった、縁がいとも簡単に何者かに吹き飛ばされる。
 そして壁にぶつかり気絶、スファーリアは演奏術を奏でようとするが――

「絶滅演奏術は使わせない、そしてさよならだ」

 演奏前にトライアングルとビーダーが壊れた。
 土煙で姿は見えない、だがこの人物が七星了司ななほしりょうじなのだろう。
 敵は言葉通りに縁を連れ去った、そして敵は間違いなく強い。
 
 まずは悪人によくある自分の目的を自慢せずに、さっさと縁をさらった事。
 縁が神様モードで無くとも一撃で気絶した事。
 おそらく一番は、絶滅演奏術を奏でようとしたスファーリアを、阻止した事だろう。

「強い奴を見つけた、楽しみ」

 スファーリアは直ぐに界牙流の里へと移動した。
 里の出入口では、住民が頭を軽く下げて待っている。
 絆も少し離れた場所に居て、少し悲しそうな顔をしていた。
 界牙流三代目炎龍の右腕、季節がスファーリアへ近寄る。
 
「四代目様、準備は出来ています、半身様もお待ちです」
「ありがとう」
「お姉様」
「絆ちゃん」
「わかってはいましたが、お兄様は連れ去られましたか」
「ええ……ルティの前情報では私より弱いって言ってたけど、ぜんぜん強い」
「大丈夫なんですか?」
「当たり前だろ絆」
「ひっ!」

 絆はビックリして声を上げ、里の者達数人が尻餅をつく。
 界牙流三代目炎龍の右腕、季節ですら一歩引いた。
 スファーリアは本気で、絆の言葉に怒りを覚えたのだ。
 
 大丈夫とは、言い換えればお前に出来るのか?
 一人で伴侶を守る為に、世界と戦える力を持った界牙流。
 その四代目に言ったのだ、少々過剰な反応な気もするが。

「直ぐに元に戻る、絆は私の家に居てくれ」
「は、はい」

 スファーリアは里のほこらへと向かう。
 中には風月、霞、ドレミドが居る。
 床には魔法陣、壁にはお札のような物が貼ってあった。

「こらこら私~絆ちゃんに当たったらダメだよ?」
「さっさと元に戻ろう、二代目、お母さん、お願いいたします」
「そうだね~おばあちゃんと母よろしく~」
「ああ」
「ま、直ぐに済むよ」

 霞が手を合わせて、ドレミドがトライアングルを演奏する。
 徐々に祠は光に包まれる、そして――

 一方絆は、スファーリアに言われた通り、家で待っていた。
 家には炎龍が居て、お茶を飲んで心を落ち着かせている。

「ふむ、どうやら始まったみたいだね」
「あの炎龍様、お姉様はどんな術で半身に?」
「魂は一つで身体は二つ、界牙流と演奏術の合わせ技……申し訳ない、これ以上は秘密なんだ」
「いえ、秘術をおいそれと喋ると、何処から漏れるかわかりませんですし」
「理解のあるお嬢さんで助かるよ」
「一応、かみ――な、何ですの!? この異常なまでの殺気は!?」
「ふむ、結びが元の一人に戻ったようだ、今回の首謀者は娘の強さを受け止められるだろうか」
「こっちに来る! ……無理ですわ!」

 絆は自分のウサミミカチューシャを外した。
 黒いうさ耳に黒い和服姿になる。
 そして、玄関を開けて入ってきた人物が居た。
 
 長い黒い髪、鋭い目付き、風月の様な中華風の服に音楽の記号がちりばめられていた。
 この女性こそ、界牙流四代目、元の一人に戻った『風野音かぜのおとむすび』だ。

「父さん、ちょっと私の旦那を取り戻しに行ってくる」
「ああ、行ってきなさい」
「ん? どうした絆? 私が怖いか?」

 絆は涙を流しながら立ち上がり、震えながら結びに抱き着いた。
 結びはビックリしながらも抱き返した。 

「ええ! 怖くて泣いてしまいます! お姉様からは今負の感情しか感じません! 不釣り合いの神として警告します! そんな気持ちでお兄様と対面するんですか!?」

 義理の妹の一言でハッとした、今の自分には怒りしかなかった事に。
 その理由は縁をさらわれたからではない、元に戻る条件を『最愛の人がさらわれる』にした事だ。
 つまりは自分に怒っていたのだ、それを大切な人な妹に八つ当たりしてしまった。
 
 結びは、静かに泣いている絆の肩に手を置いた。

「ありがとう絆ちゃん、そうだな……こんな気持ちで行っては後悔する、助言をくれ」
「お兄様としたい事を考えてくださいませ、これからやりたい幸せを考えてくださいませ」
「……ぐへ……ぐっへっへっ」

 結びは何時も通りの、だらしない顔をした。
 彼女が今考えているのは、比較的当たり前の事だ。
 結婚する事、子供を授かりたい事、幸せな生活をしたい事。
 怖い顔からキリッとした顔になった。

「っしゃ! 愛しい旦那様を助けに行くぞ」
「お姉様、私も付いて行きます」
「頼む、血風」

 血の色をした毛並みを持つ兎が、結びの肩につかまっている。
 何かを察知した様に、結びの耳に近付いた。
 その後に、抱っこしてほしそうに絆を見る。
 絆が両手を開くと血風は飛び移った。

「この兎術からお兄様の力を感じます」
「ああ、この子が縁の元に案内出来るようにしてもらった」
「なるほど」
「では行こう」
「はい」

 そよ風を残して、結び達はその場から居なくなった。
 縁を取り戻す戦いが始まる。
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