219 / 291
第四章 縁と結びで縁結び
第六話 演目 花見桜
しおりを挟む
グランアルスへとやって来た縁、スファーリア、霞、フィーネ。
シラルドは船と共に、グランアルスから少し離れた場所に待機している。
街に入ると、兵士も街の人も安らかに寝ていた。
「手が早いなフィーネ」
「はい、先に眠らせておきました」
「ありがとうよ、私には出来ない芸当だ」
「ご謙遜を」
「いや、本当に得意じゃねーんだよな、手加減」
「今後の為に必要では?」
「ああーめんどくせぇけど覚えるかー」
霞はチラッとスファーリアを見た後に、どんどんと街中を進んでいく。
目指すはホスタルが捕らえられている城の牢屋。
城を目指して霞を先頭に歩いている一行、しかし突然立ち止まった。
「……殺意を感じるな」
「誰かと思えば界牙流二代目か」
ふらりと現れたのは、青いと白色のベースに、血のような桜が散りばめられた着流しを着た、黒い長い髪の少女だった。
腰には青色の刀を持っていた、外見の年齢は高く見積もっても十代前半の様に見える。
「よう衣通姫青桜」
「……久しぶりの休暇を楽しんでいたのだが」
縁達は邪魔にならないように霞から離れる。
2人の空気が他者の介入を許さない雰囲気を出していた。
「そのまま楽しんどけ、お前に用は無い」
「お前が現れたなら話は別だ、俺と死合え」
「その殺意の高さはどうにかならんかね?」
「俺を前に喋る余裕があるのか?」
「そういうのは私を殺せる様になってからにしろ、小娘」
霞がそう言った瞬間右手が切り落とされた、青桜が刀を抜いた動作も無い。
おそらくは常識外れの抜刀の速さなのだろう。
しかし、右手が切り落とされれていても、霞の右手からは血が噴き出してはいなかった。
「ほう? 腕を上げたな」
「……まだ足らぬか」
霞の切り落とされた右手は霧の様に消えて、何事もなかったかの様にくっついていた。
「いやいや、これは喋っている余裕は無いようだ、名実共に『血桜』を継いだようだな?」
「初代血桜は人を殺すのを楽しみとしていた、自分の子供に殺される時に『人を斬るなら自分の信念を持て』と言い残したそうだ」
「では聞こう、お前の信念は?」
「悪を斬り世を正す、だがそれよりも強者と戦う事」
「その覚悟、買った」
「……命散らすことなく、血の桜の満開を」
更に2人を中心に空気が重くなった、達人同士の戦いに縁達は声をあげれない。
今ここで何かを発する事は、2人の時間に茶々入れる事になる。
「幻想血桜」
「む?」
2人の周囲に血の花びらがどこからか舞い降りてきた。
美しくも恐ろしい血の桜が、気付けばあちらこちらに根を張っている。
見るからに現実ではない情景、完璧に出来上がるのはあっという間だった。
「界牙流としての名は『冥林』そして、本名は『雲掴身夢幻之霞だったな?」
「そうだ」
「界牙流は名が体を表すと聞く、つまり『冥界の力』と『現実ではない力』の使い手でいいか?」
「よく調べたな」
「ならば……この空間で余裕を出せると思うな」
「確かに、この空間は私の得意な事は出来ないようだ」
霞は辺りを見回して、血の桜を見て満足そうに笑った。
そして笑顔が消えて真っ直ぐ青桜を見る。
「失礼した血桜、貴殿を格下に見ていた」
「くっ!」
見た目は怒りや闘志をむき出しにしている訳ではない。
だが青桜は一歩無意識に足を引いた、自分だけに向けられた『それ』に恐れたのだ。
「界牙流二代目雲掴身夢幻之霞、行くぞ?」
「……」
青桜は突然その場にあぐらで座り込んだ。
そして左手で袖から酒を取り出す。
右手は刀の鞘の真ん中を持ち地面に軽く突き立てている。
左手で酒を持ち、その青桜のその目はまるで、これから花見でも始まるかの様だ。
霞は顔色を変えずに構え、何かを仕掛けようとほんの少し動いた瞬間。
「花見桜!」
突然霞は全身から血を噴出した、まるで桜の花が満開の様に。
全身の刀傷から血が大量に溢れている、芸術的な死に方。
噴出した血は、体内の血を全部出したかの様に地面に広がっていく。
青桜は花見が見納めの様に目を閉じた、それと同時に霞は――
「凄いな、致命傷だ」
青桜は驚いて目の前を見た、いや、見上げた。
そこには霞が自分を見下ろしている。
直ぐに当たり前の言葉が青桜から発せられた。
「な! 何故生きている!?」
青桜の問に霞は何も答えない、自分の手応えがあった。
絶対に霞は死んでいるはず、しかし生きている。
自然とこの言葉と共に身体の力が抜けた青桜。
「ま……まいった!」
刀と酒を地面に落して、両手を付いていた。
それを見てか、霞は笑いながら地面に倒れこもうとする。
青桜は慌てて霞を抱き留めた。
「霞殿!」
「はっはっは! いいぞ血桜! この私を殺すにまで至ったか!」
「いやいやいや! お主生きておろう!?」
「死んでる死んでる」
ほぼ何時もで元気そうな霞を見て、縁はスフーリアに質問をした。
「スファーリアさん、何故霞さんは死んでないんだ?」
「死んでる、でも界牙流の技術を使って自己蘇生や治療……簡単に言えば究極のやせ我慢」
「技名とかあるのか?」
「界牙流の根幹、極意『五体満足』……夢を持ち、絶対に五体満足で死しない覚悟」
「覚悟……」
「そう、おばあちゃんの覚悟が衣通姫の心に勝った」
青桜はスフーリアの言葉に耳を傾けていた。
「拙者を超える覚悟でござるか……」
「ああ、今スファーリアが言った通りだ、私はまだまだ死ねない」
「……聞いてもいいでござるか?」
「簡単な事だ、私は『孫の顔』を見るまでは死ねないと思っていたが、そこのスファーリアは未来の孫らしい」
「何と、異質な物を感じたが未来から来たのでござるか」
「そして私は比較的若くしておばあちゃんになるようだ」
「なるほど、拙者が負けた覚悟は『ひ孫の顔』を見たいと」
「ああ……そしてすまないが、旦那の所に連れて行ってくれ」
「承知した、完治するまで拙者が護衛いたそう」
「そこまでしなくてもいいんだが」
「問答無用でござる、死なれたら目覚めが悪い」
「頑固だねー」
青桜は刀とお酒を回収した後に、霞を支えて立ち上がった。
「さて好き勝手はしゃいですまないな、フィーネ後は任せていいか?」
「ええ、承りましたわ霞」
霞は青桜に支えられてシラルドの元へ。
フィーネを先頭に縁達は城に捕らえられているホスタルの元へと向かうのだった。
シラルドは船と共に、グランアルスから少し離れた場所に待機している。
街に入ると、兵士も街の人も安らかに寝ていた。
「手が早いなフィーネ」
「はい、先に眠らせておきました」
「ありがとうよ、私には出来ない芸当だ」
「ご謙遜を」
「いや、本当に得意じゃねーんだよな、手加減」
「今後の為に必要では?」
「ああーめんどくせぇけど覚えるかー」
霞はチラッとスファーリアを見た後に、どんどんと街中を進んでいく。
目指すはホスタルが捕らえられている城の牢屋。
城を目指して霞を先頭に歩いている一行、しかし突然立ち止まった。
「……殺意を感じるな」
「誰かと思えば界牙流二代目か」
ふらりと現れたのは、青いと白色のベースに、血のような桜が散りばめられた着流しを着た、黒い長い髪の少女だった。
腰には青色の刀を持っていた、外見の年齢は高く見積もっても十代前半の様に見える。
「よう衣通姫青桜」
「……久しぶりの休暇を楽しんでいたのだが」
縁達は邪魔にならないように霞から離れる。
2人の空気が他者の介入を許さない雰囲気を出していた。
「そのまま楽しんどけ、お前に用は無い」
「お前が現れたなら話は別だ、俺と死合え」
「その殺意の高さはどうにかならんかね?」
「俺を前に喋る余裕があるのか?」
「そういうのは私を殺せる様になってからにしろ、小娘」
霞がそう言った瞬間右手が切り落とされた、青桜が刀を抜いた動作も無い。
おそらくは常識外れの抜刀の速さなのだろう。
しかし、右手が切り落とされれていても、霞の右手からは血が噴き出してはいなかった。
「ほう? 腕を上げたな」
「……まだ足らぬか」
霞の切り落とされた右手は霧の様に消えて、何事もなかったかの様にくっついていた。
「いやいや、これは喋っている余裕は無いようだ、名実共に『血桜』を継いだようだな?」
「初代血桜は人を殺すのを楽しみとしていた、自分の子供に殺される時に『人を斬るなら自分の信念を持て』と言い残したそうだ」
「では聞こう、お前の信念は?」
「悪を斬り世を正す、だがそれよりも強者と戦う事」
「その覚悟、買った」
「……命散らすことなく、血の桜の満開を」
更に2人を中心に空気が重くなった、達人同士の戦いに縁達は声をあげれない。
今ここで何かを発する事は、2人の時間に茶々入れる事になる。
「幻想血桜」
「む?」
2人の周囲に血の花びらがどこからか舞い降りてきた。
美しくも恐ろしい血の桜が、気付けばあちらこちらに根を張っている。
見るからに現実ではない情景、完璧に出来上がるのはあっという間だった。
「界牙流としての名は『冥林』そして、本名は『雲掴身夢幻之霞だったな?」
「そうだ」
「界牙流は名が体を表すと聞く、つまり『冥界の力』と『現実ではない力』の使い手でいいか?」
「よく調べたな」
「ならば……この空間で余裕を出せると思うな」
「確かに、この空間は私の得意な事は出来ないようだ」
霞は辺りを見回して、血の桜を見て満足そうに笑った。
そして笑顔が消えて真っ直ぐ青桜を見る。
「失礼した血桜、貴殿を格下に見ていた」
「くっ!」
見た目は怒りや闘志をむき出しにしている訳ではない。
だが青桜は一歩無意識に足を引いた、自分だけに向けられた『それ』に恐れたのだ。
「界牙流二代目雲掴身夢幻之霞、行くぞ?」
「……」
青桜は突然その場にあぐらで座り込んだ。
そして左手で袖から酒を取り出す。
右手は刀の鞘の真ん中を持ち地面に軽く突き立てている。
左手で酒を持ち、その青桜のその目はまるで、これから花見でも始まるかの様だ。
霞は顔色を変えずに構え、何かを仕掛けようとほんの少し動いた瞬間。
「花見桜!」
突然霞は全身から血を噴出した、まるで桜の花が満開の様に。
全身の刀傷から血が大量に溢れている、芸術的な死に方。
噴出した血は、体内の血を全部出したかの様に地面に広がっていく。
青桜は花見が見納めの様に目を閉じた、それと同時に霞は――
「凄いな、致命傷だ」
青桜は驚いて目の前を見た、いや、見上げた。
そこには霞が自分を見下ろしている。
直ぐに当たり前の言葉が青桜から発せられた。
「な! 何故生きている!?」
青桜の問に霞は何も答えない、自分の手応えがあった。
絶対に霞は死んでいるはず、しかし生きている。
自然とこの言葉と共に身体の力が抜けた青桜。
「ま……まいった!」
刀と酒を地面に落して、両手を付いていた。
それを見てか、霞は笑いながら地面に倒れこもうとする。
青桜は慌てて霞を抱き留めた。
「霞殿!」
「はっはっは! いいぞ血桜! この私を殺すにまで至ったか!」
「いやいやいや! お主生きておろう!?」
「死んでる死んでる」
ほぼ何時もで元気そうな霞を見て、縁はスフーリアに質問をした。
「スファーリアさん、何故霞さんは死んでないんだ?」
「死んでる、でも界牙流の技術を使って自己蘇生や治療……簡単に言えば究極のやせ我慢」
「技名とかあるのか?」
「界牙流の根幹、極意『五体満足』……夢を持ち、絶対に五体満足で死しない覚悟」
「覚悟……」
「そう、おばあちゃんの覚悟が衣通姫の心に勝った」
青桜はスフーリアの言葉に耳を傾けていた。
「拙者を超える覚悟でござるか……」
「ああ、今スファーリアが言った通りだ、私はまだまだ死ねない」
「……聞いてもいいでござるか?」
「簡単な事だ、私は『孫の顔』を見るまでは死ねないと思っていたが、そこのスファーリアは未来の孫らしい」
「何と、異質な物を感じたが未来から来たのでござるか」
「そして私は比較的若くしておばあちゃんになるようだ」
「なるほど、拙者が負けた覚悟は『ひ孫の顔』を見たいと」
「ああ……そしてすまないが、旦那の所に連れて行ってくれ」
「承知した、完治するまで拙者が護衛いたそう」
「そこまでしなくてもいいんだが」
「問答無用でござる、死なれたら目覚めが悪い」
「頑固だねー」
青桜は刀とお酒を回収した後に、霞を支えて立ち上がった。
「さて好き勝手はしゃいですまないな、フィーネ後は任せていいか?」
「ええ、承りましたわ霞」
霞は青桜に支えられてシラルドの元へ。
フィーネを先頭に縁達は城に捕らえられているホスタルの元へと向かうのだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜
ネリムZ
SF
パズルゲームしかやった事の無かった主人公は妹に誘われてフルダイブ型VRゲームをやる事になった。
理由としては、如何なる方法を持ちようとも触れる事の出来なかった動物達に触れられるからだ。
自分の体質で動物に触れる事を諦めていた主人公はVRの現実のような感覚に嬉しさを覚える。
1話読む必要無いかもです。
個性豊かな友達や家族達とVRの世界を堪能する物語〜〜なお、主人公は多重人格の模様〜〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる