上 下
169 / 291
第三章 桜野学園編

第七話 前説 お義父さんがいじけたお知らせ

しおりを挟む
 今日のバイト先は久しぶりのラッシュ。
 商品のここからここまでをやるお客さんが来たのだ。
 会計後、お客さんの車に搬送を手伝う。

「今日は……疲れたね」
「うむ、久しぶりのラッシュ」
「よし、ちょっと休憩しよう、台所借りて何か飲み物作ってくる」
「荒野原さん、ありがとう」
「うむ」

 ささっとコーヒーを作って持って来た荒野原。

「そうそう長谷川君」
「どうした?」
「私のお父さんが少し拗ねて」
「え、何で?」
「お母さんや弟とは、何回かゲーム内で遊んでるでしょ?」
「弟君とはよく遊んでるな」
「それでお父さんが、私も娘の彼氏と遊びたいと」
「ん? あれ? お兄さんも居たよね?」
「兄さんもガチ勢で長谷川君の事知ってる、けど今は奥さんと一緒に産まれた赤ちゃんのお世話」
「おお、会ったこと無いけど今度お祝いを」
「んじゃその話は後にして」

 荒野原は箱を移すジェスチャーをする。

「話を戻すとお父さんが、母と妻と息子で楽しそうでずるいとか言ってた」
「あー……申し訳ないから、今度菓子折り持って挨拶に行こう」
「いやいや、あくまでもゲーム一緒に遊べないのを拗ねてるの」
「うーむ」
「お母さんも言ってたでしょ? 親に挨拶した後だど、一緒に会うの重さが変わるから、しばらくはイチャイチャしなさいって」

 親に挨拶した後の2人で生活するのと、挨拶せずの生活は違う。
 荒野原のお母さんの案で、もう少しだけ彼氏彼女を楽しみなさい。
 そう言われたのだ、両親に挨拶しただけで結婚とはならない。
 だが、気持ちは少なからず、彼氏彼女から夫婦変わってしまうだろう。

「よし、善は急げだ、お父さんの今日の予定は?」
「聞いてみよう」

 荒野原はスマホを操作した。

「あ、長谷川君が一緒に遊びませんか? って言ってると言ったら、速攻で返って来た」
「おう」
「あー……ゲームの後ご飯奢る気満々なんだけど」
「ご厚意は受けよう」
「わかった、とりあえずゲーム内の待ち合わせ場所……っと」

 それから2人はバイトを終わらせて何時ものゲートへ。
 受付を済ませてログインをして、待ち合わせ場所へと向かう。
 
 オールバックに、長い白髪混じりの黒髪を三つ編み。
 顔は歴戦の猛者を感じさせ、鼻と口の間に『ハ』の字様な白混じりのヒゲ。
 服装は風月と同じ中華風の服装、緑色をベースに赤い色の炎の龍が描かれている。
 その人物は縁達を見つけると手を振っていた。

「おお! 初めまして」
「初めまして、ゲーム内では縁です」
「縁さん、お義父様と呼んでくれて構わないよ!」

 どうやらお父さんはお母さん同様にお茶目な性格の様だ。
 スファーリアはハリセンで素早く叩いた。

「あいた!」
「お父さん、挨拶」

 無論本当に痛くないし、ゲームのエフェクトでタンコブを作るお茶目さ。

「うむむむ、娘が手厳しい……あ、ゲーム内では仙人としては炎龍えんりゅう、本名は名字が火炎祠かえんほこら名前が宝物ほうもつです」

 今度はキリッとした顔した、タンコブのエフェクトを止め、全身にキラキラさせている。

「という事は、炎の龍に認められたとか?」
「おお、界牙流の仙人としての名付け方は娘から聞いたのかい?」
「はい」
「炎の龍というより、洞窟の溶岩から噴き出す炎が龍の姿に見えた……って、初対面なのに設定語っていいだろうか」
「ええ、どうぞどうぞ」

 縁の言葉に気分を良くしたのか、楽しそうに語り出した。

「簡単に言えば炎が龍の姿に見えたってだけだよ」
「ほうほう」
「本名の方は、炎が噴き出す祠に、たからものがあるって意味にしました」
「おお、ロマンティック!」

 ちょっと大げさに縁はノリノリで答える。

「あ、後お父さんの界牙流はちょっと違うのよ」
「違う?」
「文字が違うの、流派の流じゃなく、ドラゴンとかの龍」
「おおーこれまたカッコイイ」
「おお、縁さんはわかってくれるか!」
「……ん? って事は炎龍さんの技は『龍』の文字が付いたのが多いとか?」
「その通りだよ縁さん!」

 機嫌をさらに良くした炎龍は、縁と熱い握手をした。
 それを見ていたスファーリアは軽くため息をする。

「じゃあ今回はお父さん紹介回だね」
「それは嬉しいが、シナリオむはどうするんだ?」
「うーむ……お、これはいけるかも」
「縁君、何か名案?」

 縁を恨む悪い奴らが居て、2人でデートしていた時に襲撃された。
 それを炎龍に相談するという流れ。

「お~なるほどね、そうつなげるか」
「なるほど、任せなさい」
「じゃあちょっと知り合いに連絡しますね」

 縁はメニューを操作して、シナリオの流れを簡単に書く。
 それを掲示板にはっつけて参加者を募った。
 しばらく雑談しつつ、シナリオ参加者達とチャットで軽い打ち合わせをする。

「よし、段取り取れました」
「んじゃ、開始しようか」
「いやーお父さんワクワクだよ」

 3人は光に包まれてロビーから消えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

えっちのあとで

奈落
SF
TSFの短い話です

アルゲートオンライン~侍が参る異世界道中~

桐野 紡
SF
高校生の稜威高志(いづ・たかし)は、気づくとプレイしていたVRMMO、アルゲートオンラインに似た世界に飛ばされていた。彼が遊んでいたジョブ、侍の格好をして。異世界で生きることに決めた主人公が家族になったエルフ、ペットの狼、女剣士と冒険したり、現代知識による発明をしながら、異世界を放浪するお話です。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...