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藤島白兎

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第三章 桜野学園編

第四話 幕開き 恐怖再び! 地底帝国の侵略!

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 タベリア、この街は飲食業が盛んだ。
 この街の始まりは、街と街の中間にあった休憩場所が発展していったのだ。
 最初は屋台がちらほらあり、そこから店を立てる人が現れ、宿屋が出来て住む人達も現れた。
 そして今では食べ物で右に出る地域が居ない程に成長した。

 歴史あるその街に今! 地底帝国の脅威が降りかかろうとしている!

「ジャスティスジャッジメントか、奴らと組まなければここも直に侵略できたものを」
「プレーリー将軍、当時奴らの戦力は我々とて少々厄介……奴らが消えた今こそ地上侵略を再開する好機」
「ジムグ参謀よ、何事にも衣食住は大事だが、食はもっとも優先する事だ」
「はいプレーリー将軍、腹を満たせば多少の事は我慢できますからな」

 立派な全身鎧を装備して、盾に剣を納めていてそれを左手で持っている、顔は兜で隠さずに背丈が高いプレーリードックの亜人。
 王宮に仕えていそうな服装をして、杖をついているジムグリの顔をした亜人。
 この2人は以前桜野学園を襲撃した人物だ、その時は砂煙正吾が縁の力を使って撃退した。
 地底帝国は砂色の全身タイツっぽい戦闘員を連れ、なんと真正面から戦いを挑んできた。

 タベリアの防衛はリッシュと正蔵、街の防衛隊で迎え撃つ。
 両陣営はタベリアの目と鼻の先の平原で戦いを始めようとしている。

「再度地上侵略の為、この街はもらい受ける! 街は破壊するな! 一般人を傷つけるな! 生産者を傷つけるな! 戦う力が有り抵抗する者は排除せよ!」
「御意、行け! 地底帝国の戦士達よ! 正々堂々! 真正面からこの街をもらい受ける!」
「チテー! チテー!」
「チテテー!」
「チテー!」

 戦闘員が一斉にタベリアに向かって走り出した!

「ったく、街もジャスティスジャッジメントの襲撃で復興最中だってのに、正々堂々侵略に来るとは……胸を熱くさせるじゃねーか」
「リッシュ君、知っていると思うが奴らに地上の技術は通じない、そして私の体内の砂時計は壊れている、仮に使えたとして通じるかどうか」
「正吾君頼みか」
「すみません、この土地の土をなじませるのに、もう少し少し時間がかかります」
「すまない、私が戦えれば!」
「父さんそれは言わない約束です」
「皆! 正吾が来るまで梅雨払いだ!」

 リッシュと防衛隊達は戦闘員を相手にする。
 正蔵は一目散に将軍を目掛けて戦闘員をかき分け走る!
 だが砂時計の力を使えない正蔵は、いとも簡単に将軍近くの戦闘員に行く手を阻まれた。

「砂の英雄と言われた貴様も、時代が進めば落ちぶれるだけか?」
「プレーリー将軍、奴と体内の擬態砂時計はリンクしています、壊れた砂時計など我々の脅威ではありませぬ」
「プレーリー! 今になって何故侵略を再開したんだ! お前は和平に積極的だったはず!」
「黙れ! 考えなどいとも簡単に変わる! 和平など一部の民が了承した事、不平不満が居る者が大勢だ!」
「だからと言って! また地底帝国を戦争に巻き込むのか!? あの時も民が苦しんだんだぞ!」
「ふん……だから私達は名乗らせてもらおう! 我々はネオ地底帝国!」
「ネオ地底帝国!?」

 正蔵は将軍の発言に驚き一歩引いた、地底帝国とは和解したものと思っていたからだ。
 そして地上に侵略出来るほど、多くの民が和平に不満を持っていた事を。

「地上と和解した者共なぞ同士にあらず! 我々だけでも地上侵略を成す!」
「もう暴走じゃないか!」
「暴走と言うなら……その暴走を止めて見ろ!」
「チテー! チテー!」
「チテー!」
「チテチテー!」

 将軍を守っていた戦闘員達が正蔵に襲い掛かる。
 この戦闘員達は他の戦闘員達とは違い、戦闘服に砂時計をモチーフにした国旗みたないなものがある。
 正蔵は戦闘員の怒涛の攻撃を防ぐだけでも精一杯。

「よし! 馴染んだ! 華炎かえん、力を貸してくれ!」

 正吾が声を上げると地面から砂が巻き上がる、その砂は正吾の腰付近にまとわり付き、砂は形を変え始める。
 右の腰に銀色の縦約20センチ、横約5センチの円すいの形をした物体に変化した。
 これが正吾の擬態砂時計なのだろう、腰に固定するようにベルトが巻かれている。

 正吾は擬態砂時計の蓋を開けて赤い色の砂時計を入れる。

「擬態!」

 右手で擬態砂時計を半回転させた、赤色の波紋が正吾の身体を駆け巡る。
 身体を駆け巡っていた赤色の波紋は炎に変わり、吸い込まれるように正吾の身体に入っていく。
 正吾は炎の力を使い、あっという間に戦闘員を倒して、父と共に将軍達から距離をとった。

「すまない正吾、どうしてもプレーリー将軍が、自ら進んでとは思えなくてな」
「……父さん」

 悲しそうな顔をする父を正吾はどうにも出来なかった。
 将軍がスッと右手を上げる。

「下がれ、奴の相手は私が直々にする」
「チテー!」
「チテー! チテテー!」
「チテー!」

 戦闘員は綺麗に整列して手を上げた、将軍の出陣を祝う様にも見える。
 ゆっくりと歩いて正吾に近寄っていく将軍、その最中に兜が現れて装着して盾から剣を抜いた。

「本気を出せ」
「……これを使うしかない」

 正吾は複雑な顔をしながら右手を上げる、地面から砂が集まりそれは赤紫色の砂時計になった。
 その砂時計は面妖なオーラを放っていて、一目でヤバい物だとわかる。

「九尾の力か」

 擬態砂時計の下が一瞬だけ開いて、入っていた赤い砂時計は地面に落ち下の蓋は閉まる。
 赤い色の砂時計は、落ちたと同時にただの砂に戻った。
 正吾は擬態砂時計の蓋を開けて、砂時計を中に入れて蓋を閉じる。 
 何処か迷いが有るような顔をしている。

「擬態!」

 意を決して擬態砂時計を半回転させた。
 赤い砂時計と同じ様に、今度は赤紫色の波紋が出てそれが炎になる。
 違っていたのは、体内に入っていく時に炎は九尾の狐の姿だった。
 正吾は苦しそうな表情をした。

「ぐぅぅぅ! がああああぁぁぁぁぁ!」

 たまらず膝を付くが、苦しみながらも赤紫色のオーラを放ちながら立ち上がる。

「ほう? 姿が変わらない所を見れば、力を操れるようにはなったようだな?」
「……はぁ……はぁ! いくぞ将軍!」


 正吾は擬態砂時計を取り外して、右手の手首押し当てる。
 右手にベルトが巻かさり、すぐに左手で砂時計を一回転させた。

「九尾の……狐火!」

 擬態砂時計から赤紫色の炎が吹きあがる!
 苦痛な顔をして、叫び声をあげながら将軍に向かって走り出した。
 そして赤紫色の炎に包まれた右手で思いっ切り殴る!
 将軍は爆発と共に炎に包まれた。

「制御は見事だが、傷を付けれない力に意味は無い」
 
 しかし将軍に効かなかった、正吾は動揺を隠せなかった。
 明らかな隙、将軍は剣で正吾を切り上げた!

「ぐあっ!」

 正吾は吹き飛んで擬態砂時計が外れてしまった。
 それと同時に正吾から赤紫色のオーラも無くなる。

「正吾!」
「正吾君!」

 正蔵と近くで戦闘員と戦っていたリッシュは正吾に駆け寄った!
 バッサリと切られていて出血が酷い。

「おいおい! 砂の英雄達が対処出来ないならヤバいんじゃないか?」
「んなの後にしろ!」
「息子もやられたし、俺達大丈夫なのか?」

 倒れた正吾を見て、防衛隊達から次々と動揺の声が上がっていく。

「な、何で……ち……ぐはぁ!」
「正吾喋るな!」
「……正吾君で対処出来ないとなると、この状況やばいな」
「ならばこれ以上の戦闘は無意味、タベリアを渡してもらおうか?」

 将軍は剣をリッシュへと向け、ゆっくりと近づいてくる。
 その時トライアングルの音色が響いた。  

「絶滅演奏術・絶滅」

 スファーリアと縁が倒れている正吾を守る様に現れる。
 しかし、スファーリアの音では戦闘員達は絶滅しなかった!

「問答無用で絶滅する音が効かない、これは凄い」
「簡単な事だ絶滅演奏術奏者よ、対策をしただけだ、参謀を任せられてるこのジムグに抜かりは無い」
「なるほど、世界は広い」

 スファーリアは面白そうに、近くの戦闘員達を見る。
 戦闘員達は速攻で目をそらした、絶滅しなくともスファーリアが怖いのだろう。

「縁!? どうしてここに?」
「頼まれ事をされたのさ兄さん……スファーリアさん正吾君を手当てしてやってくれ」

 縁は鞄をスファーリアに渡した。

「わかった」
「俺が何時も使っている宝玉は使わないでくれ、地底出身の彼に効き目は無い、専用の救急箱を使ってくれ」
「おけ」

 スファーリアは縁の鞄から救急箱を取り出した。
 服を脱がして手際よく正吾の治療をしていく。

「貴様1人で何か出来るとでも? 神とは言え私達に貴様の力は通じないぞ!」
「そう……だからこいつを使う」

 縁は地面に落ちていた正吾の擬態砂時計を拾った。
 正蔵は驚きの声を上げる。

「え、縁君! いくら君でも擬態砂時計を扱えないぞ!?」
「常識外れだから神なんですよ正蔵さん」

 縁はニヤリとしながら右の腰に擬態砂時計押し付けた。
 ベルトが飛び出して、腰に巻かさり固定される。

「貴方の親友に頼まれまして」
「ペリジーンが?」
「スファーリアさん、鞄からさっき預かった物を俺に」
「ほい!」

 スファーリアは、縁の鞄から擬態砂時計を取り出してそれを投げた。
 受け取ると左の腰の部分に、新しい擬態砂時計を取り付けた。

「もう……一つの……擬態……砂時計!?」

 正吾は顔だけでも縁の方向に向けた。

「神とて擬態砂時計の誓約は破れまい! それを扱えるのは地底出身者のみ!」
「参謀さんの言う通りだ、だがこの擬態砂時計は他者との過ごした時間が力になるらしいな? だからこうするのさ」

 縁は右手をスッと出すと、スファーリアと正吾の身体が光る。
 その光は縁の右手に集まり、砂時計に形を変えた。
 1つは黒い砂がほぼ満タンな砂時計、もう1つの普通の砂時計の砂は極端に少なかった。
 
「縁結びの神なめんな」

 2つの擬態砂時計の蓋が開いた。
 右側に中身の少ない砂時計を入れる。

『適合者』

 なんと砂時計から音声が流れた。
 正吾はあっけにとられた顔をしながら言った。

「す、砂時計が……喋った?」

 縁はフフッと笑った後に左側に黒い砂時計を入れる。

『絶滅演奏術奏者』

 蓋が閉まりカチッと音がする。

「擬態」

 縁は左右の擬態砂時計を右手と左手を使って半回転させた。

『適合者、絶滅演奏術奏者…………絶滅演奏の適合者!』

 突然縁の周りに砂塵が起こる、黒い色と微量の砂が舞っていた。
 それが終わると縁はスファーリアの服装になっていた。
 そのままではなく、男性用にアレンジしたものっぽくなっている。
 
 そして黒い砂が集まり、トライアングルとビーダーが出来上がった。
 色は不思議な事にスファーリアの持っているものと同じ銀色。

「時間が無い、お前達を絶滅する」

 左の擬態砂時計を取り外してビーダーに付けた。
 すると擬態砂時計は自動で半回転して、一拍してまた半回転する。

『絶滅演奏術・絶滅』 

 縁はビーダーでトライアングルを叩いた。
 高音が辺りに響き渡ると、将軍と参謀以外の戦闘員達は悲鳴を上げて砂になった!
 将軍と参謀には効いていなさそうだ、怯みもしていない。

「効かないとなれば次の手だ」

 珍しく不敵に笑う縁の左手には、風をまとっている緑色の砂時計が握られていた。
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