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第三章 桜野学園編

第三話 演目 効果的な挑発

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「言っとくが縁先、俺を包むのは地獄に落とされた者達の恨みだ、生半可じゃねぇぞ?」
「邪神も大変だな」
「今から体験だ! 八寒地獄はっかんじごく頞部陀あぶだ!」
「寒い地獄の1番目で鳥肌が立つだったか」
 
 ダエワが指を鳴らすとゆらゆらと雪が降ってきた。
 雪は少し離れている風月達の場所には降ってはいない。

「ここまで平然とされるとはな、尼剌部陀にらぶだ
「2番目であかぎれが生じる」

 特に動じもせず縁は淡々と説明して、ダエワは再び指鳴らした。

「マジかよ……虎虎婆ここば!」
「5番目、寒さで口が開かず、喋ろうとすると『ふふば』と言ってしまう」

 突然猛吹雪となり見ているだけでも寒い。
 だが雪は縁の周りには積もっていない。
 まだまだ余裕な縁にダエワはイラつく顔をすしながら、気合を入れて両手を合わせた!

摩訶鉢特摩まかはどま!」

 白銀の世界、そんな――。
 いや人間の表現では表現出来ない雪と氷の世界が広がる。
 寒さの地獄の中で涼しい顔している縁だった。

「最後、寒さで身体が折れたり裂けたり、そしてハスの花の様に血を噴き出す」
「は、はぁ!? ここまでやって無傷かよ!」
「効くと思ったのか?」
「ケッ! だったら今度は常夏にしてやるぜ! 等活地獄とうかつじごく極苦処ごくくしょ

 雪が止み、白銀の世界が終わり、今度は辺りが溶岩だらけになる。
 多くの人がイメージする地獄とも言えなくない。
 いつの間にか縁は断崖絶壁立たされていた。
 そして後ろから地獄に居そうな小鬼達が縁を落とそうとしている。
 その先は言うまでもなく溶岩だ、縁は珍しく殺意に満ちた顔をする。

「憂さ晴らしに殺生をした奴が落ちる地獄だが?」
「縁先にゃお似あ――」
「兎術・神縛り」

 縁がそう言うとダエワの足元に魔法陣が現れた。
 四方に兎達も現れて、ダンスでもしているかの様に踊る。
 赤い糸が魔法陣から現れて、ダエワはあっという間にぐるぐる巻きになった。
 辺り一面が元通りになると、アポロニアが縁に駆け寄る。
 それを見て風月達も近寄ってきた。

「申し訳ございません縁先生、この馬鹿の代わりに謝罪いたします」
「挑発も才能だ、彼はいい所を突いたな」

 地獄には様々罪人を裁く場所があり、一つの場所でも意味は複数ある。
 極苦処とは好き勝手殺傷した者が落ちる、そして縁は昔妹を守る為に殺傷してきた。
 つまり、好き勝手にお前は殺傷してきただろ? そう言われて縁はキレたのだ。
 明らかに不機嫌な縁に、久城は目を輝かせている。

「縁先生、どうやって封印したんですか? 教えてください」
「久城さん興味あるかい?」
「神がする封印は中々見られませんから」
「対象者の縁を使った封印術だ、今の状況は彼の信用している人が魔法陣を触れば、この封印は解ける」
「逆も出来るという事ですか?」
「ああ、誰も触らないと思うけどな」

 和気あいあいと解説をしていると、ぐるぐる巻きにされているダエワから悲痛な声が響く。

「ちょ! 封印解いてくれ!」
「おお! その状況でも喋れるのか! 凄いぞダエワ君!」
「縁、手加減したんでしょ? 」
「解除条件だけ、他は本気だ」
「って事は喋れるって凄くない?」
「んな解説後でいいだろ!」
「アポロニア君、魔法陣に触れてくれ」
「はい」

 アポロニアが魔法陣に触れる。
 そうすると魔法陣も兎も赤い糸もスッと消えてなくなった。
 ダエワは酷く疲れた顔をして、地面に寝そべっている。

「クソ! なんつー孤独感だ!」
「挑発とはお前は愚かだな、実力差を考えたか?」
「ハッ、どうせ涼しい顔されるなら言葉で一撃報いただけだ」
「ふむ、見事な挑発だ」

 アポロニアは、してやったりと満足そうな顔をしているダエワを起こした。

「してダエワ君、まだやるかい?」
「止めとくよ、地獄の者がこれ以上力を使う訳にはいかねぇからな」
「ダエワ、恐らくは君の父上から何か言われるだろう」
「面倒くさい、怒られたくねぇー」

 風月が縁をちょいちょいと肩を突いた。

「縁、何で怒られるの?」
「罪人を裁く技を現世で使うのはご法度さ」
「ああ~そう言われると納得、何か面倒くさそう」
「アポロニア君も同じ様な理由で無理だろう」
「太陽神の家系だから?」
「本人達と言うよりも周りだろうな」
「ああ~王様にいちいち口出しする大臣が多いって事?」
「そういう事だ、地位が高いってのは面倒くさいな」
「なるほどね~」
「俺は終わったから次だ次、アポロニアはやらねぇのか?」
「ああ」
「久城は?」
「私は戦う事に興味はありません」
「って事は一本槍の出番だな」
「僕ですか? ではどっちゃんにお願いがあります」
「ほう? なんだい?」
「あの時の加護を今一度貸してはいただけないでしょうか?」

 一本槍の言葉にどっちゃんは眉をひそめた。
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