VRゲームでも運と愛し合おう!

藤島白兎

文字の大きさ
上 下
109 / 301
第二章 ジャスティスジャッジメントの正義

第六話 後説 一人で飲みに行くお知らせ

しおりを挟む
 縁はロビーへと戻って来てメールを確認する。

「斬銀さんと隼士さんはそのままロールするのか、お疲れ様のメールをしておこう」

 メールを操作して今回参加したプレイヤーと、運営に対してお礼のメール打つ。

「……今日は居ないけど、どうしようか?」 

 縁もとい長谷川は、荒野原が居ることの方が日常になっていた。

「帰る準備しながら考えるか」

 ログアウトをして帰り支度をする。

「……一人で飲みに行くのもありじゃないか? たまには」

 そう考えた長谷川はルルのお店へと向かうのだった。

「閉まってるじゃねーか」

 扉の前にはクローズの立て札がある。

「あら? 羽島君じゃない? 私の店に用?」
「ああルルさん、今日は一人で飲もうと思いまして」
「ん~羽島君なら大丈夫ね」
「何かあったんですか?」
「今日は詩織誕生日でね? 毎年貸切でサシで飲んでるのよ」

 ルルは酒や食べ物が入っているビニール袋を長谷川に見せた。

「いいんですか?」
「いいのよ、さ、入って入って」

 長谷川は扉を開けて中へ入り、ルルはされに続く。

「詩織、いい男捕まえて来たわよ!」
「ん~? って兎君じゃない! 娘はどうしたの? 喧嘩したの?」
「いやいや詩織さん、何時も一緒じゃないですよ」
「そりゃそうか、ごめんなさいね」
「ささ、羽島君も座りなさい、お酒とおつまみもおまかせでいい?」
「はい」

 ルルはカウンターに立ち、長谷川は詩織の隣に座った。
 手際よくお酒を作り、おつまみと共に長谷川の前に出す。


「娘が迷惑かけてないかしら?」
「いえ、大丈夫です」
「……誕生日にここで飲むようになったのは、娘がきっかけなのよ」
「え?」
「娘は私と私の母に似たのか……正義感が強くてね? それ故に敵も多かった」
「あ~なんとなくわかります」
「暴力に訴える事は少なかったけど、相手を蹴落とす事だけは徹底してたわ」
「どうやって?」
「身体を鍛え、知識を付けて、味方を増やした」
「ふむ」
「思春期をそんなんで過ごしていたから、私は言ったのよ? 『恋の一つでもしたらどうなのと』」
「答えは?」
「『私の心に響かせられるのは、甘いセリフを素で言えて、心を熱くたぎらせられる男だけだ』」
「おおう、荒野原さんらしい」
「……過去を愚痴るのはここまでにしましょうか」

 詩織はゆっくりとお酒を飲んだ。

「私の一番の心配事は解消されたし、愚痴るよりも楽しい話をしましょ」
「詩織、あんたの羽島君とのロール、見させてもらったけど無双し過ぎよ?」
「はん! 未来の娘の幸せの為に全て絶滅させただけよ」
「いや、俺も全滅させるとは思わなかったです」
「敵は滅ぼさないとね?」
「……荒野原さんのお母さんだけありますね」
「ああそうそう、兎君にお礼が言いたかったのよ」
「お礼ですか?」
「ドレミドの設定で悪人を無造作に滅ぼし続けた、って設定があるんだけどね?」
「はい」
「あのロールで『娘の幸せの為に』って設定が付け加えられたからね」
「どういたしまして?」
「まあ、私が勝手に喜んでるだけだけどねー」
「そうだわ羽島君、ロールと言えばあゆさちゃんから聞いたんだけど、過去のロールをやり直すんですって?」

 詩織がお酒を飲み干して、ルルが直に新しいのを作りながら聞いた。
 
「はい」
「私の所にも話は来たわよ? 任せて、当時のメンバーに連絡しているから」
「そこまで再現するんですか?」
「当たり前よ? やられ役はともかく、当時のゲーム内のお客様ロールしてたメンバーじゃないと、再現じゃないでしょ?」
「それって私と兎君が……いや、ドレミドと縁が初めて会った時の再現?」
「この間のロールを踏まえると、ドレミドは全て知ってる事になるわね、それにあんたの娘のキャラクターも追加されるし」
「おお~リメイクってやつだね~」
「でもメンバー集めにはちょっと時間がかかるわ」
「なら兎君の妹を助けにさ、過去に行く話を先にやればいいんじゃないかね」
「詩織、あんたまた無双するのね?」
「いやいや、私じゃなくても兎君と娘が無双するでしょ」
「ああ、そう言えば縁は絆の敵には容赦しなかったわね」
「幼少期の妹を付け加えると完璧だねぇ」
「……空から金塊が降ってくるわ」
「お、何それ」
「縁の必殺技のようなものね、今は見ないけど」
「ぐっ!」

 長谷川は激痛が走ったような顔をしてそっぽを向いた。

「おおう、振り返りたくない過去~」
「でも羽島君、昔をロールするなら頑張ってね?」
「……善処します」

 そこからは今日のゲーム内のロールを互いに話した。
 詩織はゲーム内で長谷川の母と遊び、ルルはゲーム内でもお店のロールをしていた。
 日付が変わる前に長谷川は帰宅した、ほろ酔いのいい気分でパソコンを付けて、自分の過去のロールを勢いで見ようとする。
 画面には若かりし頃の縁が映っていて、目付きが鋭く殺気を放っていた。

「うわ~ツンツンしすぎだろコイツ!」

 過去の自分のロールをツッコミながら見ていた長谷川だったが……。

『金か……お前に幸せをくれてやろう! 降れ! 黄金よ! 万物のあらゆる理を運をもって捻じ曲げよ!』

 パソコンの画面には、その言葉と共に空から黄金が雨あられの様に降っている。 
 長谷川は素早く動画を閉じて台所へ、そして水を一杯飲む。

「……肝が冷えるってこういう事か、酔いが醒めた」

 その後、長谷川は過去にしてきた自分のロールを見ては止めを繰り返したのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

荷物持ちのボクは勇者一行から追放されてしまった……

家紋武範
ファンタジー
 荷物持ちのボクは、馬車に乗る人数オーバーということで追放されてしまったが、聖女は一緒についてきてくれた。  そんなボクたちは、不思議な石を拾い磨いてみると、中から巨大な生物が──!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サモナーって不遇職らしいね

7576
SF
世はフルダイブ時代。 人類は労働から解放され日々仮想世界で遊び暮らす理想郷、そんな時代を生きる男は今日も今日とて遊んで暮らす。 男が選んだゲームは『グラディウスマギカ』 ワールドシミュレータとも呼ばれるほど高性能なAIと広大な剣と魔法のファンタジー世界で、より強くなれる装備を求めて冒険するMMORPGゲームだ。 そんな世界で厨二感マシマシの堕天使ネクアムとなって男はのんびりサモナー生活だ。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ
ファンタジー
"ファンタジー × バトル × サスペンス" 数百年前、六大英雄と呼ばれる強者達の戦いによって魔王は倒された。 だが魔王の置き土産とも言うべき魔物達は今もなお生き続ける。 ガイ・ガラードと妹のメイアは行方不明になっている兄を探すため旅に出た。 そんな中、ガイはある青年と出会う。 青年の名はクロード。 それは六大英雄の一人と同じ名前だった。 魔王が倒されたはずの世界は、なぜか平和ではない。 このクロードの出会いによって"世界の真実"と"六大英雄"の秘密が明かされていく。 ある章のラストから急激に展開が一変する考察型ファンタジー。

CoSMoS ∞ MaCHiNa ≠ ReBiRTH

L0K1
SF
機械仕掛けの宇宙は僕らの夢を見る――  西暦2000年―― Y2K問題が原因となり、そこから引き起こされたとされる遺伝子突然変異によって、異能超人が次々と誕生する。  その中で、元日を起点とし世界がタイムループしていることに気付いた一部の能力者たち。  その原因を探り、ループの阻止を試みる主人公一行。  幾度となく同じ時間を繰り返すたびに、一部の人間にだけ『メメント・デブリ』という記憶のゴミが蓄積されるようになっていき、その記憶のゴミを頼りに、彼らはループする世界を少しずつ変えていった……。  そうして、訪れた最終ループ。果たして、彼らの運命はいかに?  何不自由のない生活を送る高校生『鳳城 さとり』、幼馴染で彼が恋心を抱いている『卯月 愛唯』、もう一人の幼馴染で頼りになる親友の『黒金 銀太』、そして、謎の少女『海風 愛唯』。 オカルト好きな理系女子『水戸 雪音』や、まだ幼さが残るエキゾチック少女『天野 神子』とともに、世界の謎を解き明かしていく。  いずれ、『鳳城 さとり』は、謎の存在である『世界の理』と、謎の人物『鳴神』によって、自らに課せられた残酷な宿命を知ることになるだろう――

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...