VRゲームでも運と愛し合おう!

藤島白兎

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第二章 ジャスティスジャッジメントの正義

第六話 演目 強者とは戦わず、自分達が出来る事をしてきた

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 ラクギアの正門前に陣取った3人。

「なあ縁」
「どうしました?」
「いや、お前の考えたら召喚方法って、自分が動けなくなるほどの負荷なのか?」
「今回の対象者が死者だからね、安定させるのに集中しなきゃいけない」
「なるほどな、てかどういう理論で召喚するんだ?」
「説明出来ないから神の技なんだよ、斬銀さん」
「あえて説明するならなだ?」
「運がいいからだ」
「おおう、理解できねーな」

 斬銀は最初から聞き流す気満々だったようだ。

「街が騒がしくなってきやがった、そろそろ準備するか」
「ああ」

 縁はウサミミカチューシャを外して、神様の姿になる。

「行くぞ! 縁召喚!」

 手を合わせて気合いを入れてそう叫んだ!

「おいおい、カッコイイ詠唱とか無いのか?」
「戦闘中を想定して作ったからね、無駄は省きました」
「こ! これは!?」

 スケスケ状態ではなく、ちゃんと肉体がある隼士は自分の身体のあちこちを触っている。

「脈がある!? 生きている!? どうなってるんだ!?」
「この召喚は縁の強さが比例する、2人の縁は一人の人間を生前の姿にする程、って事です」
「生前って事は力や技術もか?」
「いえ肉体だけ、他はそのままですよ」
「いや便利過ぎるだろ」
「維持するのが大変ですけどね、今回の相手がザコでよかった」
「ふと思えば合縁奇縁はどうやって縁を守るんだ?」

 斬銀と目が合った合縁奇縁は、縁の鞄から出て来た。
 やる気満々で合縁奇縁は踏ん張ると、一瞬で山の様に巨大化した!

「……いや、お前大きくなるのかよ」
「これは頼もしいな、私とは違って現世のモノに触れる」
「縁の従者になったからとか? 万が一は頼むぜ? 速攻で終わらせるけどよ」

 合縁奇縁は任せろと目で訴えている。

「街も騒がしくなってきたな、そろそろ来るか?」
「斬銀、はしゃいで街まで破壊するなよ?」
「んな事しねーよ」

 しばらくして、ジャスティスジャッジメントの部隊が来た。

「皆! 今日こそは不埒な輩を正義の刃で粛正する時だ!」

 その部隊は近代兵器のオンパレードではなく、剣や槍など、少々古風な装備だ。

「なんか想像通りの奴が来たな」
「ん? この力は」
「縁、どうした?」
「前にこの街を攻めに来た自警団が居てね、そこの隊長が神様で俺が対処した」
「あの隊長ぽいのがそれか?」
「その神の言いなりになっているただの傀儡転移者だよ、助けなくていい」
「という事は縁さん、他は操られているだけなのかい?」
「ああ強力な催眠だね、弱くなっても神の力は脅威だ」
「なら決まりだな、大勢は俺が、夢見てるクソガキは隼士に任せる」
「手加減出来るかい?」
「見てな」

 斬銀は地面に右手を突っ込み土を掴む。
 歩きながらその土を握っていくと、手の平程あった土がパチンコ玉サイズになっていた。

「なんだ? 我がジャスティスジャッジメント――」

 隊長が何か口上を述べようとした時に、斬銀は丸めた土を指で弾き隊員に飛ばした。
 少々腕にかする程度に当たった兵士は、その腕を抑えてもがいて、それを見て隊員達は動揺し始める。

「俺達が喋ってる間に先制攻撃もしないのか? なめてんのか?」
「なっ――」
「卑怯だとか、正々堂々とかぬかすなよ? 喋らずともお前の情けない考えは解かるからよ」

 素早く土で次の弾を作り、次々と飛ばしていく!
 立っているのは隊長だけになった。

「部下が倒れたけど、どうするよ隊長さん? てか殺し合いの場に慣れてなさすぎるだろ」
「き――」
「隼士、任せたわ」

 あくびをしながら相棒の元に戻っていく。

「見事だな斬銀」
「だろ?」
「私もさっさと終らせよう」

 隼士は剣に手を掛けながら歩く。

「ゆ――」
「さよなら、冥界にご招待しよう」

 隊長からは距離が有るが、隼士は剣を振ると胴体が真っ二つになる。
 直に死体はキラキラと輝いて消えた。

「死体が残らなかった?」
「死んだら神の生贄になるように、仕組まれていたんでしょう」
「なるほど、死者と魂の数が合わない理由がこれか」

 縁の言葉に納得しながら斬銀の所に戻ってくる。

「いやいや今回もあっけなく終わったな、斬銀」
「懐かしいな、お前とは勝てる奴らとしか戦わなかったからな」
「当たり前だ、命は一つしかない」
「無茶した結果……お前を死なせてしまった」
「後悔は無いぞ? 親友を守れて死んだんだ、それに霊体になってもこうして交流している」
「……ああ」
「いつも仕事が終わると瓶の酒を開けてたな」
「斬銀さん、隼士さん」

 縁は鞄から瓶の酒を取り出して人に投げた!

「2人の縁にサービスしますよ」
「へっ! 軽快に飲もうぜ! 悔いのないようにな!」
「ああ!」

 2人は瓶のコルク栓を抜いて豪快に飲み干した!

「やっと、お前と酒が飲めた」
「次が来るかな?」
「やめとけ、幽霊がおいそれと復活するな」
「だな」

 隼士の身体は徐々に透けていき、持っていた瓶が落ちる。

「おっと、ゴミは持って帰らないとな」
「はあああぁぁぁ疲れたー!」

 斬銀は地面に落ちる前に瓶をキャッチした。
 縁はいつものジャージ姿で寝ころび、元の大きさになった合縁奇縁も一緒に伸びている。

「縁お疲れ、でもまだ仕事は残っている」

 斬銀は負傷しているジャスティスジャッジメントの隊員達を指さした。
 縁と斬銀は隊員達の介抱を始めるのだった。
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