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第二章 ジャスティスジャッジメントの正義

第二話 後説 不意打ちのお知らせ

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 ゲームプレイ中に愛を叫んでしまった長谷川は帰る準備をする。

「今更ながらあゆさに申し訳ない事をした」

 長谷川はプレイルームのドアノブに手をかけた。

「絆の話メインなのに俺が愛を叫んだ時が面白さのピークになっていたような気がするぞ……本来の話の本筋と違うし途中で終わる事になってしまったし」

 ため息をしながらドアを開ける。

「謝った方がいいよな」

 ナーバスになりながら待ち合わせの受付ロビーへと向かう。

「お、兄貴、遅かったじゃん」
「長谷川君お疲れ様」

 あゆさと荒野原はロビーの椅子に座っていた。

「ああ、2人共お疲れ様」

 長谷川右手を軽く上げる。

「兄貴、一つ言っとくけどさ」
「ど、どうした?」
「私のシナリオダメにしたとか考えてない?」
「あ、いや、そうだよな、すまん……」
「謝るな」

 あゆさは兄を睨んだ。

「兄貴のあの叫びは誰かに謝る行為なのか? あのシナリオは私が発案者だ、まだシナリオは終わってないが私が許す、文句ある奴は私にかかってこいや」
「え? あ、うん?」
「そのまま続けても変にグダるだろうから、斬銀を倒して終わりが丁度よかったよ、続きは何時でもできる」
「そうか?」
「うむ、何も恥じるな」

 あゆさのその言葉に兄は肩の荷が下りた表情をする。

「長谷川君」

 荒野原は立ち上がり長谷川に近寄った。

「は、はい?」

 安堵したなのも束の間、荒野原に声をかけられ焦りだした長谷川。

「私、貴方が好きです、お付き合いしてください」

 荒野原はゆっくりとお辞儀をした。

「うぉっちょ!?」

 長谷川は辺りを見回すか周りには誰も居ない。
 受付からも離れている自分達が居る休憩スペース、自販機と玄関が近くにあるくらいだ。

「……ゲーム内であんだけ叫んだのに何を今更焦っているのだ?」

 戸惑う兄を見てため息しか出なかったあゆさ。

「いや、あの、なんつーか」
「なんつーか?」

 見てるこっちがそわそわしてくるような仕草をしている長谷川をジッと見つめている荒野原。

「……それは後だ」

 何かに気付いた長谷川は深呼吸して真っ直ぐに荒野原を見た。

「ん?」
「俺も君が好きだ、よろしくお願いします」

 長谷川は軽く頭を下げると共に右手を差し出す。

「こちらこそ」

 荒野原は握手に応じて長谷川は顔を上げた。

「お、結婚おめでとう」

 やっとかと顔に書いてそうなあゆさは拍手をしている。

「あゆさちゃん、私はまだ長谷川君と将来を共にするほど好感度は高くない」

 長谷川から手を離した荒野原は勝ち誇った顔をしていた。

「あらま……って兄貴、固まってどうした?」

 黙って突っ立っている兄を見るあゆさ、荒野原も長谷川に視線を戻すと……

「……はぁぁぁダメだ! 恥ずかしくなってきた!」

 長谷川は両手で顔を隠してしゃがみこんだ。

「いやだから、ゲーム内で叫ぶ方が恥ずかしさ倍増じゃね? つーか縁の普段の発言の方が恥ずかしくね?」

 ここぞとばかり兄にちょっとトゲのある言葉を投げるあゆさ。

「ゲーム中は縁だからあまり恥ずかしくない」
「兄貴の演技力には脱帽だよ」

 あゆさは帽子をとるジェスチャーをする。

「ほれほれ座っとれ、タクシー呼んどいたから待ってよう」

 あゆさは自分の座っているベンチの隣を叩いた。
 長谷川はあゆさが叩いた場所に座り、荒野原はその隣に座る。

「そういえば『それは後だ』って言ってたけど?」

 荒野原は長谷川を見た。

「告白って特別な場所やシチュエーションのイメージが」

 お互いに目を合わせている。

「あ、何か考えてるプランとかあった?」
「いや、特にまだ考えて無いけども」
「……あの縁の叫びを聞いたらね」
「お、おう」

 長谷川は恥ずかしさからか正面を向いた。

「心が凄く暖かくなったの」
 
 荒野原は自分の心臓付近に右手をそっと置いた。
 目をそらしたものの、長谷川はまた荒野原を見る。

「と同時に」
「同時に?」
「あ、この人しか居ないなとか、気持ちに火が付いたとか色々な感情が湧いてきて即実行に移した」

 自信満々に長谷川をジッと見る荒野原。

「な、な、なるほど」

 恥ずかしさから逃げ出したい気持ちがまた顔に出ている長谷川。

「ああ、そういえばスファーリアはちゃんと縁に返事してなかったね」

 荒野原は長谷川のどぎまぎを見てか、縁に対しての話題に変えた。

「……いや、それを言ったら縁もちゃんと告白してないな」

 長谷川はスッと真顔になる。

「縁は叫んだだけだし、スファーリアは祈っただけだし……告白には違いないのかもしれんけど、もうちょっとロマンチック希望」
「希望て」
「現実じゃ口出しはしないけどさ、ゲームのシチュエーションには口出しするよ?」

 あゆさは右手の人差し指を左右に振っている。

「だってさ、長谷川君」
「口出しってプロデュースするみたいな言い方だな?」
「ふふん、悪しき出会いはをちょきちょきいたしますわよ?」

 絆の雰囲気を出しながらあゆさは両手でピースを作り、それをカニの様に動かしている。

「これは今度お参りロールフラグ」
「自分の社にお参りか」

 和気あいあいと話していると。玄関からタクシー運転手が入ってきた。

「ご予約された長谷川様はいらっしゃいますか?」

 手馴れているように入ってきた運転手はあたりを見回している。

「あ、はーい! んじゃ行きますか」
「ああ」

 長谷川達はタクシーで飲み屋が集中的に集まっている場所へと向かう。
 タクシーは三階建ての細長い建物の入り口前に止まった。
 三人はタクシーを降りてその中へと入る。
 細い一本道には左右に様々なお店の看板と扉。

「目的地は何処のお店?」
「あの店だよ」

 あゆさは『スナックルル』と書かれた看板を指さしをした。
 店の前までやってきた3人。

「よし、突撃ー」

 扉をゆっくりと開けるあゆさ、チリンチリンと扉に付けられたベルが鳴る。

「こんにちは~ルルちゃーん」

 あゆさを先頭に三人は店の中へと入っていくと、女性客が一人居る。
 カウンター席が6席、ボックス席が3席。
 カラオケ、カウンターの後ろの棚には大量の酒、『店内は』普通のスナックに見える。

「あら! あゆさちゃんに羽島君じゃないの! 久しぶりね! ささ! 座って座って」

 カウンターに居たのはがっちりした体格の女装した男性だった。
 お化粧のノリがバッチリなマスター……いや、ママであるルルは見かけよりも雰囲気が『いい女』を漂わせている。
 3人はカウンター席へと座った。
 ママはささっと3人の目の前におしぼりとコップを置くコースターを出した。

「ルルちゃん、今口開けてるの空になったら新しいボトル開けて」
「了解よ、ウイスキーの飲み方は?」
「私は最初水割り」

 あゆさはサムズアップをする。

「私も同じのを」

 荒野原は軽く頭を下げた。

「……俺はロックだ、水もお願いします」

 長谷川は哀愁漂う顔でそう言い笑った。

「すぐに用意するわね、これ食べてて」

 ルルはつまみの盛り合わせを真ん中に座っている荒野原の目の前に置いた。

「ルルちゃん手際よすぎ!」
「何十年こういう商売やってるとおもってんの?」
「何年?」
「ヒミツよ」

 あっという間に手早く3人が頼んだお酒がコースターへと置かれていく。

「「「乾杯!」」」

 長谷川、荒野原、あゆさはグラスを合わせた。

「そうそう羽島君、今日は素敵だったわよ?」

 ルルは長谷川にウィンクをした。

「やっぱり見られてたか……」

 ロックのウイスキーが似合いそうな顔をしている長谷川。

「そりゃロール非公開にしてないからね」

 長谷川は俯きあゆさはニヤニヤと笑っていた。

「ふふ、あの愛の叫びはスファーリアちゃんも嬉しかったでしょ」
「もちろ――」

 荒野原が答えようとしたその時!

「スファーリアに愛の叫びだと!」

 それまで黙っていた静かに飲んでいた女性客がいきなり大声を上げた!
 見るからに酔っぱらっている!

「おうおうその話かルルちゃん! あの兎君はマジで私の娘を好きなんだろうな! 見るからに演技の壁ぶち破ってたもの! あたしゃ今日ほどうれいし事はない! 2人を祝福して乾杯!」

 女性客はコップに入っている少量の酒を一気飲みした。

「その話は分かったし嬉しいのはわかったから詩織、あんた少々飲み過ぎよ? それにその兎君なら隣に居るわよ?」
「あん?」

 詩織と呼ばれた女性客は隣を見た。
 一席開けて隣には長谷川が座っている。

「あ、やっぱりお母さん」

 荒野原は動じる事無く先に店に居た女性を見ている。

「え! お、おおお、お母さん!?」

 長谷川はマジビビリな顔で荒野原を見る。

「……おう? 何で娘がここに? ルルちゃん教えて~」

 荒野原の母詩織は、幸せそうにゆらゆらと左右に揺れ軽く手を叩いたりしていた。

「そうねぇ……詩織は嬉しくてここに来た、お嬢さんは兎君達に連れられ打ち上げの場所をここにしたってところかしら? まあ私があゆさちゃんに連絡したんだけどね」
「ルルちゃん、完結で解りやすい」

 あゆさはまたサムズアップをする。

「……ちょっと待って、今私は娘の彼氏の前で醜態を晒してるのでは? いや駄目だろ、私が原因で2人が破局したらどうするねん」

 詩織の表情が幸せそうな顔から真顔になった。

「ルルちゃん、キンキンに冷えた水カモン」
「はいはい」

 ルルはわかっていたかの様に氷入りの水を詩織に渡した。
 それを一気飲みする詩織。

「もう一杯」

 また冷水を一気飲みする。

「……よし」

 詩織は気合いを入れるように両手で軽くほほを叩いた。

「お手洗いでお色直ししてくるわ」

 ハンドバックを持ってお手洗いへと向かう詩織。

「騒がしいお母さんでごめんね」
「ああ……いや、大丈夫……かな?」

 長谷川は何を言われるか気が気でなかったのだった。
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