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第二章 ジャスティスジャッジメントの正義

第二話 幕開き  祈りの約束

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 縁、絆、スファーリアは光に包まれて大きな建物がたくさんある街が見える丘に現れた。

「あれが帝国イズールですわ」

 絆は優雅に目の前の帝国を指差した。

「……初めてみたけどよなんだこりゃ、幸運のひとかけらも感じないんだが?」
「幸せの音を感じない、国としてよく成り立ってるわね」

 縁とスファーリアはそれぞれ自分の感じ取ったモノに嫌悪感を抱いている顔をした。

「他国民を食い物にしてるのです、そして一番私を殺したくてしょうがない国です」
「どうして絆ちゃんを殺そうとするの?」
「簡単ですわお姉様」
「あの国は『謝れない人達の集まり』なんですの、可哀想に」
「それって振り上げた拳を下げれないって事でいいかな?」
「ええ、国民も似たような性格な方々が生活しておられるようです」
「つーか本当によく国として成り立ってるな」
「お兄様? そこは悪党らしく色々と薄汚い事を色々としてるんでしょうね、だから私は最後に遅い忠告をしてさしあげようと」

 絆は自前の傘を開いて目元を隠して笑っている。

「……絆ちゃん、縁君、微かだけど助けを求める声がする」
「お姉様、その方向は?」
「待って」

 スファーリアはトライアングルビーダーでトライアングルを軽く叩き辺りに高音を響かせた。

「あの森から微かに感じる、命の音も危ない」

 帝国とは反対方向にある森をトライアングルビーダーで差した。

「行くぞ」

 縁のその言葉を発すると森に向かって走り出し、絆は優雅にふわりと少し浮きながら移動を開始。
 スファーリアはトライアングルのスピードを上げて先頭になる。
 3人は森に入りってしばらくスファーリアの先導について行くと、目の前に何かが見えた。
 それは血だらけになりながら剣を杖のように使い、フラフラになりながらも歩いている剣士が居た。

「誰か……たす…」

 剣士はそういうとバランスを崩して倒れそうになる。

「危ない!」

 走りながら縁は、鞄から折りたたまれた白いシーツのような物を取り出し、それを倒れそうな剣士に向かって投げた!
 縁の投げたシーツのような物は、見た目通りベッドにしくシーツのように広がり倒れそうな剣士の地面にふわりと舞い落ちる。

「おっ! おお!?」

 剣士はいきなり視界に入ったシーツにびっくりしてバランスを完全に崩して、シーツにダイブしてしまう。
 しかし、ふんわりベッドにダイブしたかのように、優しくめり込んで軽くバウンドして何事もなかった。

「あ、あれ? 痛くない? それに怪我の痛みがやわらいだような?」

 状況が理解出来ない剣士は体を起こしてシーツを触ったり、自分の怪我を確認したりしている。

「大丈夫ですか?」

 縁は走りの速さを殺すためにスライディングで剣士に近寄り、それに続いてスファーリアと絆がやってきた。

「お、お前達は?」
「それより何があったんですの?」
「そ、そうだ! 隊長が! 隊長が死にそうなんだ!」

 絆の言葉にハッとした剣士は、救いを求めるように近くに居た縁に右手を伸ばし肩を掴んだ。

「絆、頼んだ」
「承りましたわ……位置が特定出来ましたのでいってまいりますわ」

 そう言うと絆はスッと消えて居なくなる。

「このシーツに横になって下さい、回復効果が全身に行き渡りやすくなりますから」

 縁は自分に持たれかかりそうな剣士をゆっくりとシーツに寝かせた。

「スファーリアさん、これを地面に広げてくれ、この宝玉と一緒に」

 鞄から白くうっすらと輝きを放つシーツを取り出と赤色の玉を渡した。

「わかった」
「あ、あんた達はいったい……?」

 剣士は仰向けでリラックスした様子でそう言った、目に見えていた怪我も何時の間にか綺麗に消えていて血もない。
 その代わりにシーツが血を吸ったように赤くなっていた。

「しがない亜人の兎です、この怪我はどうしたんですか?」
「この先に帝国イズールがある、そこの皇帝の命令でやりたくもない依頼をな」
「依頼?」
「ああ、この森を抜けると鉱脈があってな……簡単に言えば鉱石を喰うモンスターの討伐を依頼されてな、俺と隊長は捨て駒にされたのさ」

 剣士は寝ながら右手を動かし、その方向を指差した。

「鉱脈を持っていた持ち主が帝国へ依頼、どんな悪巧みかしらんがその鉱脈の依頼を使って帝国は金儲けをしようとしたのか?」

 縁は剣士から目をそらし、自分に問いかけるように言葉を発する。

「ああ」
「横槍入れるけど、あなたと隊長さんが命を賭けるほど依頼って事なのよね?」
「何時もそうさ、クソ危ねぇは俺達を使うんだ」
「それに見合う給料や保証は?」
「はっ! そんなの有るわけない」

 剣士はスファーリアから目をそらし、右手を上げて地面を思いっきり叩いた!
 しかしシーツの上だったので柔らかく包み込まれる。

「あなた達は帝国に食い物にされてるって事か」
「ああ! そうだよ!」

 スファーリアの言葉にいきなり体を起こし、凄い剣幕でスファーリアを見る。

「わかった、私がなんとかする」
「なんとかって……ど、どうするつもりだよ!」

 スファーリアの予想外の言葉に剣士は動揺している。

「国を完璧に潰せばいいんでしょ?」

 あっけらかんと簡単そうに言った、兵士の開いた口が塞がらない。

「は? いやいや、何を言ってんだあんた」
「最近友達になった人の言葉に『近頃の悪党って創作物の悪党みたく見えない力に守られてると勘違いしてる』って言っててね」
「いずみか……何時の間に」
「徹底的に帝国を潰せばあなた達は自由になるでしょ?」

 また簡単そうに言ったスファーリア。

「ま、まてまて! 数人でどうにかなる相手じゃないぞ!」

 再び馬鹿を見るような目をしながら剣士はスファーリアを説得するように話している。
 剣士の言葉を聞いてスファーリアは笑う。

「帝国はね? 結果的にどうにか出来る人達に手を出しちゃったの」

 スファーリアはトライアングルビーダーを帝国の方向に向けて、最高の笑みをしながらそう言った。
 その笑顔を見た剣士は目を背けた、見てはいけないものを見てしまったような顔をしていた。

「本気で怒ってるな」
「もう一人の私は基本的には『身内しか守らない』から……私はそんな彼女の『助けたいと思った人を助けたい』と願った音なの」

 今度は優しく笑ったスファーリア。

「なるほどな」

 縁も納得したように頷いた後、優しく笑った。

「あらあら面白そうなな話ですわね、私も混ぜて下さいませ?」

 絆は何も無い所から現れた、側には生きてるかもわからない血だらけな少し老いた剣士が、身体をぐったりさせながらも座って居た。
 この老いた剣士が隊長なのだろう。

「隊長!」

 剣士は慌てて隊長に近寄った。

「バカ……やろぅ……情け……」

 隊長は剣士を見て力なく笑っている。

「そのシーツに寝かせて、その赤色の玉を握らせなさいまし」
「あ、ああ!」

 絆の言葉に剣士は頷いた。
 縁も手伝い隊長をシーツに寝かせて赤色の玉を握らせる。

「何だ? 痛みが消えて喋れるようになったぞ?」

 仰向けになっていた隊長は身体を起こそうとした。

「痛みをごまかしているだけなので動かないでください」
「なるほどな、俺に握らせたこの丸っこいのが痛みをごまかし、このシーツみたいなもんは身体を治療してくれてんのか?」

 縁を見ながらそう言った隊長、その言葉に縁は少しびっくりしながらも頷いた。

「まあそれより、俺を助けた嬢ちゃんが言ってたが帝国を潰しに来たんだって?」

 面白そうに語る隊長。

「え? あれ? 絆、忠告しに来たんじゃなかったか?」
「違いますわお兄様、これから帝国は崩壊しますわよ? と言いに来たのですから……崩壊の宣告ですわね」
「好都合、この人達の受けた苦しみは音で感じたから、私は崩壊のお手伝いをする」

 絆とスファーリアはこれから起こる事に高揚感を感じる笑みをする。。

「こ、この人達はいったい……」
「お前、聞いたことねーか? 帝国が昔っから手を焼いている神様が居るって話をさ」
「えっ!? じゃあこの人達が!?」

 隊長の言葉に目の色を変えて縁達を見る剣士。

「あ、私は神様じゃないから」

 スファーリアは両手の人差し指をクロスさせてバツを作る。

「まあ、それは置いといてそのお嬢ちゃんの話じゃ息子が世話になったって話だ」
「お兄様、覚えてますわよね? 神社に来た少年の事を」
「まさか、あの少年のお父さんですか!?」

 縁はハッとして隊長を見る。

「ああ、嬢ちゃんの話じゃクソみてぇな神様に祈ろうとして門前払いされ、あんた方の神社に案内したらしいじゃないか」
「私が何回か送り迎えしてました」
「で、息子の願いを聞いて助けにきたって所か?」
「それは違います、たまたまですが願いは運命をねじ曲げる力があるだけです」
「なるほどな、つまりあんたの意識じゃなく、息子の願いの力により運命がねじ曲がってここに居るって事でいいか?」
「はい、その考え方であってます」
「流れの傭兵してれば嫌でも身につく感だよ感、幼い息子にゃ正義の味方って説明しちまったがな」

 隊長は息子との思い出を思い出したのか優しく笑っている。

「帝国に仕えている理由は?」
「息子と娘がプレゼントしてくれた、魔力で映像を記憶するペンダントをひったくられてな」
「!?」

 隊長の言葉を聞いて豆鉄砲を食らったような顔をする縁。

「後は説明しなくともわかるだろ?」
「……なるほどな、いい度胸じゃねーか」

 縁は目に見えてブチギレている顔をしていた。

「他に盗られた物はありますか?」
「いやそれだけだ、それさえ取り返せればおさらばしてーよ」
「今取り返せますよ」
「あ? なんだって?」
「これですよね?」

 鞄から銀色の鎖で青い石が付いているペンダントを縁は普通に取り出した。

「そ、それだ!」

 隊長はペンダントを見たとたん顔色を変えて手を伸ばす。
 縁はペンダントを隊長に渡した。

「ああ、本物だ! 本物だ!」

 隊長はプレゼントを貰った子供のようにペンダントを見つめている。

「な、なあ! なんであなたが持ってんだ?」
「この鞄の能力の一つですよ『思い出の品を取り出せる』ってね」
「そ、そうか」

 剣士は目の前の事実を受け入れ難いようだ。

「じゃあ問題が解決した所でこの人達の保護をどうするかね、怪我人ほったらかしには出来ないし」
「それなら大丈夫ですわよ? ああ、誰かかこの状況を引き受けてくれれば『賞賛に値する』のですが、誰か居ませんかね?」

 絆はわざとらしく賞賛の言葉の部分を強調して喋る。

「そんなに強調しなくても」

 何もない場所に光が集まる、そこに苦笑いしながら立っているグリオード、隣には麗華が居た。

「ですが賞賛を嗅ぎつけてきたのでしょう?」
「絆様、グリオード様を賞賛ジャンキーみたく言わないで下さいませ」

 麗華は絆に対して軽く頭を下げた。

「後は任せた、グリオード」
「ああ」

 グリオードは頷くと縁達は帝国の方向へと歩き出す。

「兎のあんちゃん」

 隊長の呼びかけに縁は振り向き、スファーリアと絆は止まらずに歩いている。

「お礼言ってなかったな、ありがとうよ」
「運が良かったですね」

 隊長はにこやかに親指をグッとする、それを見て縁はフッと笑い再び歩き出した。
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