上 下
42 / 293
第一章 レアスナタの世界へ!

第五話 演目 道徳のシスターシンフォルト降臨!

しおりを挟む
「ダメですよ、暴力はどうしようもならない時の最終手段! それで解決しようとしては! 道徳が足らない証拠です!」

 シンフォルトはゆっくりと隷属の神に近寄っていく。
 隷属の神は走るのを止めて情けなく後退りをしていて、顔からは余裕を感じられない。

「く、くるな!」
「さあ! 貴方にも道徳と清らかな心を!」

 シンフォルトは神に祈りを捧げるように跪いて祈った。

「うあああああぁぁぁぁぁ! 止めろ! やぁぁめぇぇぇろ! や、やもえん!」

 隷属の神は苦しみだし、地面をのた打ち回りながらも黒い霧となり消えた。
 
「忘れんぞ! この恨み! 必ずや貴様等を根絶やしにしてくれる!」
「コラ! 懺悔は最後までしなさい!」

 シンフォルトはムッとしている。

「えっと縁、こちらの強烈なシスターさんは?」
「シンフォルト、道徳の加護を持ってるシスター」
「それはさっき本人が言ってたじゃん、私が気になったのは何をしたか」
「道徳心を植え付けた」
「道徳心?」
「あの神は隷属を司る神だったんだがな?」
「ふむ」
「簡単に言えば悪人にキラッキラな道徳心植え付けられたら発狂するだろ?」
「ああ~自己嫌悪に陥ると」
「ハッ!? いけません! この村は悪しき神の加護により! 道徳からかけ離れています!」

 シンフォルトは辺りを見回してお祈りを始めた。

「このシスターさん、大丈夫?」
「行動には一貫性があるんだがなぁ」
「主よ! 道徳有る者に主の祝福を! 無き者には懺悔の時間を!」

 シンフォルトは気合いの入った祈りをしている。
 鳴り響いている鐘の音が大きくなる。
 すると目の前に放置されいた、なんちゃって盗賊団と村のあらちこちらから奇声が聞こえてきた。

「違うんだ! 俺は悪くねぇ! ウァーン先生が!」
「あの娘が悪いのよ! あの娘が!」
「俺は金を稼いだだけだ! 稼いだだけなんだ!」
「フタの裏のヨーグルト舐めましたぁぁぁぁ!」
「悪戯で靴にプルプルスライム入れましたぁぁぁ!」
「醤油を薄口にすり替えて、健康に気を使うように仕向けましたぁぁぁ!」

 村のあちらこちらから地獄の様な阿鼻叫喚が聞こえてきた。

「ああ! 皆様の懺悔が聞こえます! 皆様! 罪の告白を聞かせて下さいまし!」

 ある意味地獄絵図のような懺悔が聞こえてくる、シンフォルトはニコニコしながら、祈りを捧げている。

「久しぶりに見たが地獄じゃねーか」
「ほう? 斬銀殿も知っておるのか? 何時見ても見事なお祈りですな、ハッハッハ」
「いやいや少々やり過ぎでござるよ」
「てか縁、あのシスターさんは普段何してんの?」
「シンフォルトは世直しをしているのさ、で、殺さずに悪人を改心させて被害にあった人達のケアも忘れない」
「ほうほう」
「普段は孤児院を経営している教会のシスターだ」
「……どんな場所か見てみたい」
「いや、教会自体は普通だぞ? 今度案内しようか?」
「準備に何かいる?」
「山登りじゃないんだから」
 
 そんな話をしていると鐘の音が鳴り止み叫び声も無くなった。
 それと同時に死体の様に横たわる山賊達、建物の中に居る村人達も同様だろう。

「皆様の懺悔! 確かに聞き届けました! さあ! 汚れ無き身に生まれ変わったのです!」

 シンフォルトはニコニコしながら、両手を広げている。

「あら? どうしました? 皆様?」

 首を傾げて不思議そうに縁達を見た。

「あらあら? 初めましての方ですわね?」
「うお!? な、何!?」

 シンフォルトは音も無く風月に近寄っていくが、彼女は怖がって斬銀の後ろに隠れた。

「フッ、俺に隠れるとはな、守ってやるぜ? 鉄壁の斬銀とは俺の事よ」

 斬銀は天使のような笑顔を風月に振りまいたが、げっそりとした顔をして筋肉から離れて縁の後ろに隠れた。

「あらあら、相変わらず上半身裸なのですね斬銀さん? 着るものを寄付しましょうか?」
「久しぶりにあったセリフがそれかよ」
「まて皆の者、それよりこの惨状どうするでござる?」
「気絶から目を覚ますのを待つしかありませんな! ハッハッハ」

 フォルクの高笑いが村に響いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

青い星の管理人

孤太郎
SF
 大宇宙にぽつんと浮かぶ青い星。 そこには80億人もの人間たちが住んでいる。 湾曲した星の表面には幾つもの国家が存在し、多種多様な文化圏があり、幾つもの言語があり、 肌や目の色が違う人種が各々の生活を営んでいた。  だが、そこは星などではなかった......。 球体上の世界ではなく、広大な平面世界の一画にある収容所と呼ばれる施設の中だった。 施設の外周は分厚い氷の壁で取り囲まれ、内側に住む人々は外の世界の存在を誰も知らない。 地図上にある陸地や海が世界の全てだと思い込まされていた。 壁の内側に住む人間たちは囚人と呼ばれていた。  収容所の外側にも世界があった。 そこにも多くの人間が住んでいた。 そこで生まれ育った好奇心旺盛なひとりの若い女性が旅に出る。 彼女は一般人には窺い知ることができない収容所の中を見てみたいという一心から収容所の管理人となる。 年に一度の内部監査で収容所の中に入ることができるからだ。 収容所内を分割統治しているのは外の世界から派遣された(看守)と呼ばれる工作員だった。 所内にいる六人の看守たちを訪ねる一風変わった出張旅行が始まる。 彼女は目を輝かせて入ってゆく、収容所の中へと......。  そこで目にするあらゆるものが彼女の心の奥深くまで浸潤し、次第に魂が変容していく。 初めて対面する見知らぬ自分......、 触発され浮き彫りになる自身の本質......、 所内で繰り返されるおぞましい洗脳......、  迷走する彼女の目に映る異世界は楽園なのか、それとも奈落なのか......。 囚人と呼ばれる人間たちは何者なのか......。 連載長篇小説 青い星の管理人 

現実的理想彼女

kuro-yo
SF
恋人が欲しい男の話。 ※オチはありません。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

トランスフォームビューティークリーム

廣瀬純一
SF
性転換するクリームで女性に変身する男の話

泣く牛

salmon mama
SF
泣く牛

Recreation World ~とある男が〇〇になるまでの軌跡〜

虚妄公
SF
新月流当主の息子である龍谷真一は新月流の当主になるため日々の修練に励んでいた。 新月流の当主になれるのは当代最強の者のみ。 新月流は超実戦派の武術集団である。 その中で、齢16歳の真一は同年代の門下生の中では他の追随を許さぬほどの強さを誇っていたが現在在籍している師範8人のうち1人を除いて誰にも勝つことができず新月流内の順位は8位であった。 新月流では18歳で成人の儀があり、そこで初めて実戦経験を経て一人前になるのである。 そこで真一は師範に勝てないのは実戦経験が乏しいからだと考え、命を削るような戦いを求めていた。 そんなときに同じ門下生の凛にVRMMORPG『Recreation World』通称リクルドを勧められその世界に入っていくのである。 だがそのゲームはただのゲームではなく3人の天才によるある思惑が絡んでいた。 そして真一は気付かぬままに戻ることができぬ歯車に巻き込まれていくのである・・・ ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも先行投稿しております。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...