僕の名前は、猫将軍眠留

初山七月

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八章

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 光の粒を放ちながら優雅に歩む伝説のイケメンに、
「「「ギャャ―――ッッ!!」」」
 絶叫がホールを揺さぶる。酸欠で失神するのではないかと危ぶむほど声の限りに叫び続ける女の子たちが、観覧席の最前列に多数見受けられた。あの子たちはおそらく、湖校一年の光源氏である真山へ恋心を抱く、真山ファンクラブの女子なのだろう。真山の人となりを知っている僕は、いや、幾つもの秘密を打ち明けられ真山の人となりを最も知っている可能性の高い僕は、ファンクラブの子たちに混ざって絶叫したい気持ちを、苦労してねじ伏せねばならなかった。
 束帯そくたいと呼ばれる平安貴族の正装は、黒の上着に白袴という地味な色合いの服だったと伝えられている。けれどもそこは、古代随一の貴公子たる光源氏。金糸銀糸をふんだんに用いた、絢爛豪華な衣装を真山は身に着けていた。体の線など一切出ない服装をしているのに脚の長さが一目でわかるその姿に、僕はとうとう我慢できず、ファンクラブの即席会員として絶叫しまくったのだった。
 それはさておき、いやそうこうしているうち、真山は鵺と対峙する。立ち昇る神気に耐えられず、鵺が一歩、また一歩と後ずさってゆく。すると不意に、
 ふわり
 真山が両手をかかげた。僕が同じことをしても間抜けな万歳にしか見えないのに、真山がすると神聖な儀式の始まりとして目に映るのだから凄い。超絶イケメンには世界を書き換える能力があるのではないかと、僕は半ば本気で考えた。
 手が掲げられたのを合図に、真山の後方5メートルを歩いていた四人の若手貴族が、真山の前方に進み出てきた。そして四人の足元に、サッカーボールほどのまりがそれぞれ出現する。その鞠を四人は優雅な動作で、
 ポ~ン
 と蹴った。四つの鞠は流麗な放物線を描き、隣の貴族の足元へそれぞれ落ちてゆく。それを四人はまた、
 ポ~ン
 と蹴る。そう四人は、当時の男性貴族たちが好んでしていた蹴鞠を始めたのだ。真山ほどではないにせよ豪華な衣装に身を包む四人の若手貴族が蹴鞠をするさまは、風雅に映ったのだろう。観客席から四人へ、温かな拍手が贈られた。けれども僕はホールを包むほのぼのとした雰囲気に反し、激しく手を叩いていた。なぜなら僕は知っていたからだ。四人がその優雅な動作を身に付けるためどれほど苦労し、そしてどれほど努力したのかを。

 ちょうど、二週間前。
 余興の初会合が開かれた三日後の、月曜日。
「なあ猫将軍、相談があるんだけど、いいかな」
 一限目と二限目に挟まれた休み時間に、川端が僕へ声をかけた。「白銀さんゴメンね」と謝る川端の眼差しに深い憂慮を感じた僕は、二つ返事で首肯し立ち上がる。そして彼を教室の外へ連れ出し、提案した。
「なんとなく時間がかかりそうだから、研究室を一つ押さえようと思うんだけど、どうかな」
 それは悪いよ、という否定の言葉が咄嗟に口を突くも川端はしかし、最後の「よ」を発音することができなかった。口ごもる彼を自然に視界から外すべく僕はハイ子を取り出し、研究室の使用申請を出す。生徒を常に見守っている教育AIは川端の様子から僕の意図を汲み、即座にそれを許可してくれた。
 僕が選んだのは四階西端にある、机と二脚の椅子しかない研究室。広さは四畳ほどでも、利用者が落ち着けるよう照明と色調に多大な配慮を施した部屋だった。座り心地の良い椅子も助けになったのだろう、右隣に座る川端から、内に秘めていた憂いの薄まる気配が伝わって来た。僕は体を机に向けたまま、「クリスマス会について悩んでいるのかな」と切り出してみる。川端は息を大きく吸ったのち、打ち明けた。AI制御の3Dボールを蹴るだけなら自分にもできると思ったが、実際にやってみると、運動音痴の自分にはそれすら不可能だった、と。
「わかるよ。三年前まで、僕も運動音痴だったからさ」
 川端は机に肘をつき両手で顔を覆う。だがそれでも、
「ありがとう」
 声を震わせ、彼はそう言ったのだった。
 湖校を始めとする研究学校には、平均より運動能力の高い生徒が集まる傾向がある。だが、何事にも例外はあるもの。運動に自信のない生徒ももちろんいて、そしてその生徒は少数派であるが故に、肩身の狭さを一層強く感じる事となる。どんなに高い人格を備えていてもどんなに優れた頭脳を持っていても、運動音痴の影を払拭するのは難しい。僕らの年齢の男子は、そういうものなのだ。
 よって北斗は、要求される運動能力を三段階に分けて台本を書いた。たった二週間と少しで妖魔との近接戦闘を習得せねばならない、槍班と刀班。遠隔魔法であってもその際のポーズを洗練させねばならない、法具班。そしてAIの制御する3Dボールを優雅に蹴るだけの、必殺武器班。プレゼンでも校庭の初会合でも北斗は明言しなかったが、自他の区別なく運動能力に多大な関心を寄せる僕ら男子は、台本に込められた北斗の意図を十全に理解した。班の応募に初回でほぼ定員が集まった理由は、それだ。譲り合いが行われ即座に班が決定したのもそうだし、「配役を考えていないのは嘘だよな」と京馬が指摘した根拠もそれ。北斗はクラスメイトの運動能力と性格を考慮し、それぞれに目星を付けたうえで、定員を決めていたのである。それでもなお、初会合の日の夜、北斗は僕にこんなメールを送っていた。
 ――俺にできるのは、目星を付けて定員を決めるまでだ。それ以降は、俺には対処不可能な領域になる。だが眠留は違う。眠留が三年前まで運動音痴だった事と、その改善方法を研究している事は、クラスの誰もが知っているからな。然るに土日の自主練を経た月曜、必殺武器班の誰かが、沈痛な面持ちでお前に相談をもちかけるだろう。その時は、力になってあげてくれ――
 北斗は多分、同じ趣旨のメールを教育AIにも送っていたのだと思う。僕はクラスメイトの悩みを担当する委員ではないのに、二時限目を川端と研究室で過ごす許可を、あっさり貰うことができた。それは川端の悩みに僕の研究が役立つことを、アイが事前に知っていたからだと僕は考えている。
 その想いのもと、隣に座る川端へ、明るい口調で語りかけた。
「じゃあ川端、まずは僕が運動音痴だった小学校のころの映像を、一緒に見ようか」
 川端は僕に、自分の劣等感をさらした。
 ならば僕も、それをせねば男がすたるからね。
 という僕の想いを、腹で理解したのだろう。川端は肘を机から離し、姿勢を正して頷いた。そして映像を見ながら「わかる、猫将軍わかるよ」と、何度も何度も口にしてくれた。運動会のダンスで滑稽な動きをする僕を見ても笑みの一つも浮かべず、クラスの足を引っ張る僕の苦悩を理解し、ただただそれへ共感を示せるのは、同じ経験をした者のみに可能な事。僕と川端は苦い過去を共有し、そしてそれを経ることで、僕は彼と同じ土俵に立った。口先だけじゃない、上から目線でもない、対等な存在として彼の悩みと向き合う資格を、僕は得たのである。
 続いて、翔刀術の訓練の話をした。翔化の話はできずとも、僕の神社に古流刀術が伝わっているのを川端は知っていたから、刀術での体験を僕は次々打ち明けて行った。そのどれもに彼は深い同情を寄せ、そして僕が心の中で母に謝っていたと伝えると、涙を目から溢れさせてくれた。その涙に僕は初めて、あのころの自分を誰かに心底理解してもらえたと、思うことができたのだった。
 そして話はついに、運動音痴を克服するきっかけとなった天啓へと至った。身を乗り出し顔を輝かせる川端が、その半分を僕へ、そしてもう半分を自分へ向けていることを知り、僕は気づいた。苦悩は確かに人を成長させるがその幅は、自分一人の苦悩より、自分のせいで他者へ迷惑をかける苦悩の方が、より大きいのだと。
 その気づきを胸に、つい最近書き上げた論文を開示する旨を告げた。
「今話したように、ゆっくりした動作は、運動音痴を克服する解答の一つだと僕は考えている。神経の成長を軸にそれを研究した論文が、最近やっと完成したんだ。意見があったらどんどん言ってね」
 川端の返事を待たず、僕は画面を操作しその準備を始めた。僕は川端の研究を知らないし、たとえ知っていたとしても輝夜さんがそうであったように、それが真の研究であるとは限らない。それは現代の研究者にとって当然のことだが、それでも高潔な心を持つこの友は、研究を秘匿している自分を後ろめたく感じるかもしれない。それを避けるべく、僕はあえて友の返事を待たず、論文開示の準備を進めたのである。
 まあでもコイツに、そんなことはお見通しだったのだろう。川端はズバッと頭を下げ、
「猫将軍ごめん、僕は海洋資源開発ロボットという畑違いの研究をしているから、基本的な質問を沢山して、猫将軍を煩わせてしまうと思う」
 と、質問を沢山することのみを事前に謝罪した。改めて思う。やっぱコイツは、大した漢だなあと。
 それから一時間強、川端は有言実行の鬼と化し質問をしまくった。僕はその一つ一つへ丁寧に答えたため彼が納得したのはそろそろ三限目が終了する時刻だったが、それは僕にとって非常に楽しい時間だった。畑違いであっても頭脳明晰な彼の質問は的確で、かつ理解力も相当なものだったからである。
 それから暫しの休憩を挟み、僕らは体を動かせる広さと設備のある研究室へ場所を変えた。
「必殺武器班が扱う鞠はAIの映し出す虚像だから、ボールコントロールは度外視していい。よって川端が習得すべきは二つ。一つは、規則正しい呼吸を継続する事。そしてもう一つが、片足で立つ筋肉を鍛える事だ」
 AI制御の虚像だと頭では分かっていてもボールが目の前に落下してくると、運動音痴の人達はほぼ100%の確率で、焦る。焦ると人は、呼吸が乱れ浅くなるのが常。ただでさえ体を動かすのが苦手なのに、それに酸素不足によるヘロヘロが加わるのだから、結果は散々なものとなってしまう。よって何より重要なのは呼吸だと、僕は説いたのだ。
 次は、片足で立つ筋肉を鍛える事。平均的身体能力の持ち主はそれを当然なこととして省き、ボールの蹴り方等々の説明を始めるが、それこそが根本的な間違い。運動音痴の人達の多くは運動に親しんでいないため、片足で立ち続ける筋力を持っていないことが多い。よって先ずはその筋肉を鍛える必要があると、僕は考えたのだ。
 この二つをもとに、僕はゆっくり右足を持ち上げ、そして床に下ろすという基本動作をした。僕の心拍数を計り、メトロノームで鼓動のリズムを刻み、二拍で足を上げ、二拍で足を下げる。呼吸も同調させ、足を上げる時に息を吸い、下げる時にそれを吐く。その動作の見本を僕は示したのだ。川端は、真摯にそれを行った。左脚に疲労が溜まる前に軸脚を右へ変えたにもかかわらず、川端はたった一分で限界を迎えた。その事実に川端自身、驚愕していた。休憩を兼ね、筋肉の幾何級数的疲労と筋肉痛の関係について説明した。また陸上部で教わった、乳酸駆除マッサージを一緒にした。川端は昼休み開始のチャイムが鳴るまで基本動作を繰り返した。そして昼休み終了の予鈴と共に、蹴鞠を担当する他の三人も僕の所にやって来た。清掃時間が終わるなり僕らは実技棟へ行き、川端も加えた五人で五限目を過ごした。蹴鞠の四人は文科系の部に所属していたが、運動音痴であることを正直に打ち明け事情を説明し、二週間の特別休暇をもらっていた。
 そしてその日以降、四人は一日も欠かすことなく、最終下校時刻になるまで蹴鞠の練習を続けた。
 そう、彼ら以外では僕だけが、彼らの苦悩と決意と、そして努力を知っていたのである。
 だから僕も練習場所へ毎日足を運んだ。するといつの頃からか、彼らは僕を団長と呼ぶようになった。照れくさかったけど、班が違い班長ではないからそうなったのだろうと、僕は黙ってそう呼ばれていた。すると他の奴らも、僕を団長と呼ぶようになった。さすがにそれは恥ずかしかったので異議を唱えようとした僕に、真山が深々と頭を下げた。
「何の力にもなれない班長の代わりを務めてくれて、ありがとう、団長」と。
 その直後、クラスの男子全員が気を利かせて、僕を揉みくちゃにしてくれた。
 そうでもしないと人目をはばからず僕が泣いてしまうと、皆知っていたのである。
 十組の野郎どもは皆、そういうヤツらだからね。

 そんな、ここ二週間のあれやこれやを思い出した僕は、万感の想いを込め胸中叫んだ。
「みんな、頑張れ――!!」
 優雅に蹴鞠をする四人に「頑張れ」と言うわけにもいかず胸の中で叫んだだけだったが、それでも四人は僕だけに分かるよう、親指をグッと立てそれに応えてくれた。
 それを合図にしたが如く、彼らは輝く霊気を放ち始める。そしてその霊気を、彼らは鞠へ移して行った。そのたびに彼らの輝きは消えるが、それでも彼らは光を復活させ、鞠へ光を注いでいく。己の命を削り、鞠を霊気で満たしてゆく。動作に優雅さがなくなり、顔に苦悶の表情が浮かぶようになっても、彼らはそれを続けた。観客達もそれに気づき、頑張れと応援を送るようになっていた。蹴鞠の四人が本物の苦悶のただ中にいると、観客は本能的に察知したのである。その通りだった。川端達四人は本当に苦しんでいた。二週間の練習を経て彼らは時間と質の両方で要求される蹴鞠ができるようになったが、それはあくまで練習での話。本番は練習と何もかもが異なる、まったく別次元の世界なのだ。それを彼らは今、人生で初めて実感していた。そして、それを乗り越えようとしていた。過去の自分には不可能だったが、二週間の練習をやり遂げた今の自分なら、それを乗り越えられるかもしれない。生まれて初めて、その壁を越えられるかもしれない。いや、何が何でも越えてみせるんだ。彼らのその想いを我が事として感じた僕は、喉の痛みを忘れて叫び続けた。
「もう少しだ、あとほんの数回だ、みんな頑張れ!!」
 そして遂に、その時がくる。四つの鞠がその輝きを一段増し、まばゆいほどの光りを放ち始めた。彼らはそれを隣ではなく、上へ蹴りあげる。上空で一つに合わさった四つの鞠は物質の境界を超え、霊気を凝縮した光球となった。光球が真下へ落下してくる。それに合わせ、
 真山が駆ける。
 四人が命を削り練り上げた光球へ、光源氏が疾走する。
 距離としては僅かだったが、地を這う炎の如きそれに一年生全員が息を止める。
 そして、
 シュバ――ン!!
 貴族の重厚な正装をものともしない鋭利なフォームで、真山は光球を蹴った。
 なお一層輝きを増した光球が鵺へ迫る。
 恐怖に染まりながらも己の運命を悟った鵺の、その暗黒の鎧を光球が貫く。
 鵺はその場で灰と化し地に積もるも、光の球は輝きと速度を少しも損なわず、
 夜空の彼方へ消えて行ったのだった。
 中央図書館にいた全生徒が、その日二度目の音をはっきり耳にしたと言う。
 隣のホールから聞こえてくる、大歓声を。

 鵺を退治してからは慌ただしかった。僕らに割り当てられた時間が、あと十秒しか残っていなかったからだ。
 初稿の台本では、一分もの時間が残ることになっていた。この一分に着目する生徒は多く、プレゼン後の質疑応答で「女子も加わり全員で会場を一周しないか」という案が出て、多数の賛同を得たほどだった。けれども北斗はそれに難色を示した。
「研究者を目指す皆なら、プロジェクトの進行とともに推定予算が増えていく事をよく知っているだろう。今回の余興ではその予算が、所要時間に相当する。実際にやってみたら想定外の要素が噴出し、時間は増加して行くと考えてほしい」
 例えば巨大な橋を建造するような、沢山の人と物を長期間導入するプロジェクトが、机上の計算通りに進行することはまず無いと考えていい。量子AIすら予測不可能な出来事が次々起こり、建設期間と予算は増えていくものなのである。よって予測不可能な事態が発生することを事前に織り込み、プロジェクトは計画されている。その前提のもと北斗が試算した推定所要時間は、六分三十秒。そう北斗は、余興は少なくとも台本の三十秒増しになると、最初から考えていたのだ。
 しかしそれでも不十分だと北斗の勘は囁いていた。然るに演劇部のホープである中島に相談したところ、熱気に流される要素が欠けているとの指摘を北斗は頂戴する。
「劇が楽しければ楽しいほど、観客は統合された意思を持つようになってゆく。笑える場面ではもっと笑いたいと一斉に思い、ハラハラする場面ではもっとハラハラしたいと一斉に願うようになるんだ。観客席から押し寄せるその熱気は、プロですら撥ね除けるのが困難とされる。俺ら素人では、言わずもがなだな」
 中島は北斗から渡された台本を凝視し、数か所に数字を書き込んで行った。そして最後にこう呟く。
「流される時間は、最大で二十秒」と。
 つまり北斗と中島が予想した最大所要時間は、六分五十秒。それはクリスマス会の余興で僕らが実際に費やした時間と、完全に一致したのである。
 それがあったため、残り十秒でも僕らは慌てなかった。慌ただしくはあっても東の観客席へ向かって整列し、ありがとうございましたと一礼。すかさず回れ右をし、西の観客席へありがとうございましたと一礼。そして肩を組み飛び跳ねながら、十組のスペースへ僕らは帰って行った。
 そう、僕らは帰った。
 ホールを包む割れんばかりの拍手の中にあっても、二十クラスという八百人を超す生徒達の中にあっても、一瞬でそれとわかる場所へ僕らは帰って行った。
 なぜならそこには、平安時代のお姫様の衣装に身を包む二十一人の女の子たちが、僕らを待っていてくれたからだ。
 そのあまりの出来映えに「やっぱり最後は皆で会場を一周しようよ」という意見が男子達から続出しても、「私達は頑張った人達を労うためにこの衣装を作ったの」と首を横に振り続けた、二十一人のお姫様たちが待っていてくれたからである。
 僕ら男子は口々に「ただいま」と言い、十組のスペースに戻っていった。
 そんな男子へ女の子たちは皆、花の笑顔でこう返してくれたのだった。
「お帰りなさい」と。
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