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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第97話 ジャンヌ、救出へ
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ハマリエルの頭がぶすぶすと黒い煙をあげながら、霧消しはじめるのを確認すると、セイは教会の出口のほうへ走りだした。前回のように蘇る可能性があったので、最後まで見守りたかったが、そうさせないために、アガレスと名乗ったもう一体の悪魔を倒すほうが早いと判断した。
もし前回のように時間を操られていたとしてもアガレスを討てば、ハマリエルの復活を防げるはずだ。
セイはルーアン大聖堂から飛び出すと、ヴュー=マルシェ広場のほうへ向った。
ヴュー=マルシェ広場には火刑を見ようと、大勢の見物人が取り巻いていた。
「魔女め」
「異端者!」
「はやく火あぶりにしろぉ!」
人々は口々に罵り、はやし立てていた。刑をおこなう司祭たちや、イングランド兵たちもその雰囲気にのまれ、いくぶん怖じ気づいているようにも見えた。
ジャンヌがイングランド兵に引きずられるようにして火刑台の上に乗せられると、その異様な興奮はさらにたかまった。ジャンヌの足元にうず高く積みあげられた薪。その脇には火のついた棒を掲げ持った兵が待機し、刑の執行を待っていた。
ジャンヌは火刑柱に鎖で体を縛りつけられながら、弱々しい声で言った。
「ずっと十字架を見ていたいです。お願いします」
それを聞いて立会人の修道士のひとり、イザンバール・ド・ラ・ピエール修道士が近くのサン=ローラン教会へ十字架をとりに走り出した。もうひとりの修道士マルタン・ラドヴニューにむかって言う。
「マルタン、わたしが戻ってくるまで刑は執行しないでくれ」
「わかった」
そのやりとりを聞いていたイングランド兵のひとりが、薪の小枝を折り十字架の形に組み合わせたものを作ると、ジャンヌに手渡した。
「ああ、主よ。ありがとうございます」
ジャンヌはその粗末な十字架にくちづけをすると、大事そうに刑衣の胸元にしっかりと挿し込み、神への祈りを唱え始めた。
「天にまします我らの父よ。願わくば御名をあがめさせたまえ。御国をきたらせたまえ。御心の天になるごとく地にもなさせたまえ……」
ジャンヌが神への祈りを唱え始めると、群衆たちのあいだに戸惑いの声が漏れ聞こえはじめた。
「魔女が祈りを……」
「異端者が十字架をその身につけたぞ……」
「そんなことがあるはずがない……」
「我らに罪を犯す者を我らが許すごとく、我らの罪も許したまえ」
五指を組んで一心不乱にジャンヌは祈りを唱えていた。
セイは群衆をかきわけて、ジャンヌの元へむかっていた。
ジャンヌ、待ってて。イングランド兵たちを打ち倒してでもキミを助ける。
ひとびとを押しのけ、一番前にいきつくと、そのまま火刑台のジャンヌのほうへ向う。
「小僧、控えろ。これ以上前にでるな」
ふたりのイングランド兵が槍をつきだして、前に進み出たセイを制した。セイは目の前で交差された槍にちらりと目をくれると、手を横につきだして中空から刀を取り出そうとした。
が、なにもでてこなかった——
剣を召喚する黒い暗雲状の穴も現われていない。
なに——?
「小僧、下がれ!」
兵が槍をふるって威嚇した。セイはたたらを踏むようにして、ふらふらとうしろに下がった。さがりながらも反撃しようと、手に力を宿そうと力をこめた。
が、まったく力がはいらなかった。
もし前回のように時間を操られていたとしてもアガレスを討てば、ハマリエルの復活を防げるはずだ。
セイはルーアン大聖堂から飛び出すと、ヴュー=マルシェ広場のほうへ向った。
ヴュー=マルシェ広場には火刑を見ようと、大勢の見物人が取り巻いていた。
「魔女め」
「異端者!」
「はやく火あぶりにしろぉ!」
人々は口々に罵り、はやし立てていた。刑をおこなう司祭たちや、イングランド兵たちもその雰囲気にのまれ、いくぶん怖じ気づいているようにも見えた。
ジャンヌがイングランド兵に引きずられるようにして火刑台の上に乗せられると、その異様な興奮はさらにたかまった。ジャンヌの足元にうず高く積みあげられた薪。その脇には火のついた棒を掲げ持った兵が待機し、刑の執行を待っていた。
ジャンヌは火刑柱に鎖で体を縛りつけられながら、弱々しい声で言った。
「ずっと十字架を見ていたいです。お願いします」
それを聞いて立会人の修道士のひとり、イザンバール・ド・ラ・ピエール修道士が近くのサン=ローラン教会へ十字架をとりに走り出した。もうひとりの修道士マルタン・ラドヴニューにむかって言う。
「マルタン、わたしが戻ってくるまで刑は執行しないでくれ」
「わかった」
そのやりとりを聞いていたイングランド兵のひとりが、薪の小枝を折り十字架の形に組み合わせたものを作ると、ジャンヌに手渡した。
「ああ、主よ。ありがとうございます」
ジャンヌはその粗末な十字架にくちづけをすると、大事そうに刑衣の胸元にしっかりと挿し込み、神への祈りを唱え始めた。
「天にまします我らの父よ。願わくば御名をあがめさせたまえ。御国をきたらせたまえ。御心の天になるごとく地にもなさせたまえ……」
ジャンヌが神への祈りを唱え始めると、群衆たちのあいだに戸惑いの声が漏れ聞こえはじめた。
「魔女が祈りを……」
「異端者が十字架をその身につけたぞ……」
「そんなことがあるはずがない……」
「我らに罪を犯す者を我らが許すごとく、我らの罪も許したまえ」
五指を組んで一心不乱にジャンヌは祈りを唱えていた。
セイは群衆をかきわけて、ジャンヌの元へむかっていた。
ジャンヌ、待ってて。イングランド兵たちを打ち倒してでもキミを助ける。
ひとびとを押しのけ、一番前にいきつくと、そのまま火刑台のジャンヌのほうへ向う。
「小僧、控えろ。これ以上前にでるな」
ふたりのイングランド兵が槍をつきだして、前に進み出たセイを制した。セイは目の前で交差された槍にちらりと目をくれると、手を横につきだして中空から刀を取り出そうとした。
が、なにもでてこなかった——
剣を召喚する黒い暗雲状の穴も現われていない。
なに——?
「小僧、下がれ!」
兵が槍をふるって威嚇した。セイはたたらを踏むようにして、ふらふらとうしろに下がった。さがりながらも反撃しようと、手に力を宿そうと力をこめた。
が、まったく力がはいらなかった。
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