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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第83話 聖の身になにかあったら……
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「聖ちゃん、大丈夫……なの?」
「ああ…… とりあえず危機は脱したらしい。心拍も呼吸もとまったから、一時はどうなるかと思ったが…… ただ精神が完全に戻ってきているか……」
おそるおそる父、輝雄の顔をみると、そこに深い悔恨のようなものが刻まれているのがわかった。
「聖の身になにかあったら、わたしは兄さんに顔向けができない……」
「兄さん……って…… 叔父さん……聖と冴ちゃんのお父さん、行方不明なんでしょ。そんなの気にしたって……」
「事情があるんだよ、かがり。だから……」
「でも冴ちゃんが昏睡病になって、突然姿をくらましたのよ。それをお父さんは……」
「わかってくれ、かがり。詳しくは言えないが、兄さんも戦ってるんだ」
「この昏睡病とね」
------------------------------------------------------------
聖が目を開けると、知らない天井がそこにあった。
一瞬、オルレアンのどこかの富豪の家にでも運び込まれたかと思ったが、自分の口元に呼吸器があてがわれ、からだ中に計測用の端子がとりつけられているのに気づいて、自分が現実世界に戻ってきていることがわかった。
腕にさされている点滴のほうへ目をむける。
そこに自分のベッドにからだをうずめるようにして、寝ている広瀬かがりの姿があった。
「かがり……」
声をかけてみたが、呼吸器が邪魔してうまく声がでなかった。
意識がまだ朦朧としていたので、もう一度眠ろうと目をつぶりかけて、聖は自分が今、どんな状態でいるのかに気づいてハッとした。
まだここに戻ってきてはいけないはずだ——
聖は自分でもおどろくほどの力で、がばっと上半身を起こした。その振動でかがりが目をさます。
「聖……ちゃん」
「かがり! ぼく、どれくらい寝てた?」
寝ぼけ眼のかがりに、聖は責めるような口調で尋ねた。
「聖ちゃん、よかった。目を覚ましてくれた。先生、呼んでくるね」
「かがり、どれくらいぼくは寝てたんだ!」
「聖ちゃん、死にかけてたんだよ。心肺停止になって」
「死にかけた?」
「そう!」
かがりはヒステリックにそう返事をすると、聖のベッドの枕元にあった『ナース・コール』のボタンを飛びつくようにして押した。
『どうされました?』
「聖ちゃんが目を覚ましました。先生をお願いします」
「ああ…… とりあえず危機は脱したらしい。心拍も呼吸もとまったから、一時はどうなるかと思ったが…… ただ精神が完全に戻ってきているか……」
おそるおそる父、輝雄の顔をみると、そこに深い悔恨のようなものが刻まれているのがわかった。
「聖の身になにかあったら、わたしは兄さんに顔向けができない……」
「兄さん……って…… 叔父さん……聖と冴ちゃんのお父さん、行方不明なんでしょ。そんなの気にしたって……」
「事情があるんだよ、かがり。だから……」
「でも冴ちゃんが昏睡病になって、突然姿をくらましたのよ。それをお父さんは……」
「わかってくれ、かがり。詳しくは言えないが、兄さんも戦ってるんだ」
「この昏睡病とね」
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聖が目を開けると、知らない天井がそこにあった。
一瞬、オルレアンのどこかの富豪の家にでも運び込まれたかと思ったが、自分の口元に呼吸器があてがわれ、からだ中に計測用の端子がとりつけられているのに気づいて、自分が現実世界に戻ってきていることがわかった。
腕にさされている点滴のほうへ目をむける。
そこに自分のベッドにからだをうずめるようにして、寝ている広瀬かがりの姿があった。
「かがり……」
声をかけてみたが、呼吸器が邪魔してうまく声がでなかった。
意識がまだ朦朧としていたので、もう一度眠ろうと目をつぶりかけて、聖は自分が今、どんな状態でいるのかに気づいてハッとした。
まだここに戻ってきてはいけないはずだ——
聖は自分でもおどろくほどの力で、がばっと上半身を起こした。その振動でかがりが目をさます。
「聖……ちゃん」
「かがり! ぼく、どれくらい寝てた?」
寝ぼけ眼のかがりに、聖は責めるような口調で尋ねた。
「聖ちゃん、よかった。目を覚ましてくれた。先生、呼んでくるね」
「かがり、どれくらいぼくは寝てたんだ!」
「聖ちゃん、死にかけてたんだよ。心肺停止になって」
「死にかけた?」
「そう!」
かがりはヒステリックにそう返事をすると、聖のベッドの枕元にあった『ナース・コール』のボタンを飛びつくようにして押した。
『どうされました?』
「聖ちゃんが目を覚ましました。先生をお願いします」
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