ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜

第81話 すげぇな。黄道十二宮だぜ

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 リアムはうっすら目を開けた。

 死んでない!!
 
 セイはほっとした。目から涙があふれる。
「リアムさん、戻ってください! 現世にはやく!」

「セイ、たお……したか……」
「ええ。ええ。リアムさんのおかげです。ハマリエルを倒しました」

 リアムは弱々しく微笑んだ。
「そう……か…… すげぇな。黄道十二……宮……だぜ」
「倒しましたから、リアムさんははやく戻って、むこうで手当てを受けて……」
「む……り……なんだ」

「無理?」

「ちからを……ぜーーんぶ、使っちまった……。戻るちか……らもない……」

「ちから? だったら、ぼくの力を使って……」
「バカ……言うな…… おまえだって満身……創痍……だろうが……」
「でも、でも……」
 セイはあふれでる涙をこらえきれなかった。声がつまる。
「おりゃぁ、ここ……まで…… あとを……頼む……」
「リアムさん、そんなこと言わないで!!」

「しかたねぇよ。ハ……マリエルだ……ぞ、たおしたの……」
「ハマリエルがなんなのサ! 生きて帰らないと、ミッション完了したなんて言えないじゃないかぁ」
「ーーったく、そーーだよな」
 

「それも……うんめい……さ」
 リアムはか細い声でそう言ったまま、動かなくなった。満足そうとも悔しそうとも言える表情を浮かべていた。

 うわぁぁぁぁぁぁぁぁ

 セイはリアムのからだに抱きついて、大声をあげて泣いた。

 自分に力を与えたばかりに——
 ハマリエルの標的になることがわかっていながら無謀な作戦を決行したばかりに——
 自分に一撃で倒しきれる能力がなかったばかりに——

 セイの脳裏に後悔の念がわきあがる。

「神の子、セイ……」
 ジャンヌがセイの肩に手をかける。 

 その瞬間、セイのからだをなにかが貫いた。
 なにが起きたかわからないまま、ゆっくりと振り向いた。

 ハマリエルの指から放たれたビームだった。
 すでに下半身は黒い霧となって消えていたが、残っていた上半身が遠隔で動いていた。

 がはっ!!

 大量の血が口から吹きだした。
 戦いの最中にも浴びていたが、ハマリエルの最後の攻撃はじつに正確に急所を射ていた。 
 目がかすむ。
 その視界にハマリエルの頭が映った。

 ハマリエルの頭はもう鼻から下しか残っていなかった。
 が、その口元をいまいましげに歪ませながらハマリエルが言った。
 数十メートル離れているはずなのに、それはしっかりと聞こえた。意識下に直接送り込まれてきたようだった。

「黄道十二宮のわたしをこんな目に遭わせたヤツを、ただで帰すわけにはいかないわよ」
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