912 / 935
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第78話 精いっぱいのへらず口
しおりを挟む
「ジル・ド・レ! ラ・イール!」
「セイ、ぼくは大丈夫です。それよりジャンヌを……」
「ああ、セイ殿、こんなのはかすり傷じゃ」
「は? おまえたちがあたくしの攻撃をふせいだわけじゃあるまい」
ハマリエルが苛立ちをあらわにした。
「そこの未来人の力で、ビームをはね返されただけだ……」
「だが、今度はそうはいかない。さきほどあたくしの身体を拘束して、危険な目にあわせてくれたお礼もせねばならないからね」
リアムは手を前につっぱったまま、口元をにやつかせた。
「ヤバいくらい焦ったろ。あともうすこし力がだせたら、セイがあんたの首、斬り落してたんだがねぇ」
精いっぱいのへらず口だったが、あきらかに弱々しかった。
「ああ、危なかったわ。こんなに追い詰められたのははじめて。だから……」
その瞬間、ハマリエルは弾丸のようなスピードで、リアムのふところに飛び込んでいた。
「きさまの命で落とし前をつけてもらうわ」
セイにはハマリエルのことばは、耳にはいってこなかった。カッと目を見開く。セイが血の気がひくのを感じた。
目の前の光景が信じられなかった。
ハマリエルが突き出した右手から、華々しいビームが放たれたかと思うと、その腕はリアムのお腹のど真ん中を突き抜けていた。
「リアム!」
セイが叫ぶのと同時に、ジャンヌやジル・ド・レたちも一斉に声をあげていた。みな呆然とした表情だった。
「これでこいつは死んだわ」
「いい加減なことを言うな!」
セイはハマリエルのほうに刀の切っ先をむけながら叫んだ。
「いい加減?」
「ぼくらはこの世界では精神体だ。死ぬなんてこと……」
「死ぬわよ」
ハマリエルは残酷な笑みを浮かべながら言った。
「さっきも言ったわよね。この世界で死んだら、むこうの世界でも死ぬって。肉体的に死ぬんじゃないわ。精神をやられて廃人になるのよ。植物状態というンだったかしら」
「黙れ! そんなことあるわけ……」
「じゃあ、きさまのからだで試してみたらどうかしら!」
ハマリエルがリアムのからだを貫いたままの状態で、セイのほうへふりむくと、リアムの背中へ突き出た右手からビームを放ってきた。リアムのからだ越しに撃たれたビームはセイを的確にとらえる弾道だったが、セイはおおきく後方へジャンプしてそれをよけた。
ハマリエルが突き出した右腕にぶら下がるリアムのからだは、ちからなくボロ布のようにだらりと、垂れ下がったままでピクリともしなかった。
「リアムさん!」
「セイ、ぼくは大丈夫です。それよりジャンヌを……」
「ああ、セイ殿、こんなのはかすり傷じゃ」
「は? おまえたちがあたくしの攻撃をふせいだわけじゃあるまい」
ハマリエルが苛立ちをあらわにした。
「そこの未来人の力で、ビームをはね返されただけだ……」
「だが、今度はそうはいかない。さきほどあたくしの身体を拘束して、危険な目にあわせてくれたお礼もせねばならないからね」
リアムは手を前につっぱったまま、口元をにやつかせた。
「ヤバいくらい焦ったろ。あともうすこし力がだせたら、セイがあんたの首、斬り落してたんだがねぇ」
精いっぱいのへらず口だったが、あきらかに弱々しかった。
「ああ、危なかったわ。こんなに追い詰められたのははじめて。だから……」
その瞬間、ハマリエルは弾丸のようなスピードで、リアムのふところに飛び込んでいた。
「きさまの命で落とし前をつけてもらうわ」
セイにはハマリエルのことばは、耳にはいってこなかった。カッと目を見開く。セイが血の気がひくのを感じた。
目の前の光景が信じられなかった。
ハマリエルが突き出した右手から、華々しいビームが放たれたかと思うと、その腕はリアムのお腹のど真ん中を突き抜けていた。
「リアム!」
セイが叫ぶのと同時に、ジャンヌやジル・ド・レたちも一斉に声をあげていた。みな呆然とした表情だった。
「これでこいつは死んだわ」
「いい加減なことを言うな!」
セイはハマリエルのほうに刀の切っ先をむけながら叫んだ。
「いい加減?」
「ぼくらはこの世界では精神体だ。死ぬなんてこと……」
「死ぬわよ」
ハマリエルは残酷な笑みを浮かべながら言った。
「さっきも言ったわよね。この世界で死んだら、むこうの世界でも死ぬって。肉体的に死ぬんじゃないわ。精神をやられて廃人になるのよ。植物状態というンだったかしら」
「黙れ! そんなことあるわけ……」
「じゃあ、きさまのからだで試してみたらどうかしら!」
ハマリエルがリアムのからだを貫いたままの状態で、セイのほうへふりむくと、リアムの背中へ突き出た右手からビームを放ってきた。リアムのからだ越しに撃たれたビームはセイを的確にとらえる弾道だったが、セイはおおきく後方へジャンプしてそれをよけた。
ハマリエルが突き出した右腕にぶら下がるリアムのからだは、ちからなくボロ布のようにだらりと、垂れ下がったままでピクリともしなかった。
「リアムさん!」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる