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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第76話 あなたの心残りの力をもう一度ください
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「ジャンヌ、ジャン・ド・メスさんはどこに?」
セイはジャンヌに尋ねると、ジャンヌは暗闇にむかって「ジャン!」と叫んだ。メスはすぐに姿を現わした。夜陰に隠れて見えなかったが、すぐ近くでジャンヌを警護していたようだった。
「メスさん。あなたの心残りをもう一度、ぼくに聞かせてください」
「心残り…… そう…… わたしはジャンヌ・ダルクを救えなかった。『聖女』として讚えられるべきであったのに、それが果たせなかった…… わたしはその心残りを晴らしたい」
セイはからだに力が漲ってくるのを感じた。
未練の力——
この力を体力に転用できれば、リアムさんに分け与えられるのに——
セイはあふれんばかりの攻撃のパワーを感じながらも、それをうしなわれた体力の補完に使えないことに苛立った。
「ありがとう、メスさん」
セイはぐっと拳をにぎりしめて言った。
「あいつを倒します!」
そう言った瞬間に、セイのからだはハマリエルに突進していた。自分でつくった剣の橋の上を駆け抜ける。が、飛ぶようなスピードに、足元の刀がカチャリという音をたてることもない。
だが、ハマリエルは飛び込んでくるセイの姿をとらえていた。
『ほう、まだそんな威勢があるか』
ハマリエルがセイのほうへ五指をむけて、ビームを放った。セイはおそろしく正確な剣さばきでその5本のビームをはねのける。
『ギアがあがった?!』
ハマリエルが連続でビームを放ってきた。5本のビームを立て続けに数回。一気に数十本ものビーム弾がセイに襲いかかる。
目にも見えないスピードで振り回すセイの剣先が、まるで荒れ狂う暴風のようになって、あらゆる角度から飛んでくるビームをはね返した。
『まずいわ、まずい!!!!!!』
ハマリエルは指弾のビーム攻撃をさらに加速させながら、自分を拘束している見えない空気の壁から逃れようと、からだをもがかせはじめた。そのせいでビームはあらぬ方向へ飛び散りはじめた。
その光は夜空に散乱し、さながらロワール川でうちあがる光のショウのようにすら見えた。
オルレアンの街から戦いを見守っている市民たちのあいだから、感歎の声が漏れる。
「これで終わりだ!」
セイはもがいているハマリエルの首にむかって、剣を振り抜いた。
が、それより一瞬だけはやく、ハマリエルのからだが動いた。ハマリエルを拘束していた、リアムの空気の層が消えていた。
ハマリエルのからだが沈み込み、セイの渾身の剣がむなしく空を切る。
セイはジャンヌに尋ねると、ジャンヌは暗闇にむかって「ジャン!」と叫んだ。メスはすぐに姿を現わした。夜陰に隠れて見えなかったが、すぐ近くでジャンヌを警護していたようだった。
「メスさん。あなたの心残りをもう一度、ぼくに聞かせてください」
「心残り…… そう…… わたしはジャンヌ・ダルクを救えなかった。『聖女』として讚えられるべきであったのに、それが果たせなかった…… わたしはその心残りを晴らしたい」
セイはからだに力が漲ってくるのを感じた。
未練の力——
この力を体力に転用できれば、リアムさんに分け与えられるのに——
セイはあふれんばかりの攻撃のパワーを感じながらも、それをうしなわれた体力の補完に使えないことに苛立った。
「ありがとう、メスさん」
セイはぐっと拳をにぎりしめて言った。
「あいつを倒します!」
そう言った瞬間に、セイのからだはハマリエルに突進していた。自分でつくった剣の橋の上を駆け抜ける。が、飛ぶようなスピードに、足元の刀がカチャリという音をたてることもない。
だが、ハマリエルは飛び込んでくるセイの姿をとらえていた。
『ほう、まだそんな威勢があるか』
ハマリエルがセイのほうへ五指をむけて、ビームを放った。セイはおそろしく正確な剣さばきでその5本のビームをはねのける。
『ギアがあがった?!』
ハマリエルが連続でビームを放ってきた。5本のビームを立て続けに数回。一気に数十本ものビーム弾がセイに襲いかかる。
目にも見えないスピードで振り回すセイの剣先が、まるで荒れ狂う暴風のようになって、あらゆる角度から飛んでくるビームをはね返した。
『まずいわ、まずい!!!!!!』
ハマリエルは指弾のビーム攻撃をさらに加速させながら、自分を拘束している見えない空気の壁から逃れようと、からだをもがかせはじめた。そのせいでビームはあらぬ方向へ飛び散りはじめた。
その光は夜空に散乱し、さながらロワール川でうちあがる光のショウのようにすら見えた。
オルレアンの街から戦いを見守っている市民たちのあいだから、感歎の声が漏れる。
「これで終わりだ!」
セイはもがいているハマリエルの首にむかって、剣を振り抜いた。
が、それより一瞬だけはやく、ハマリエルのからだが動いた。ハマリエルを拘束していた、リアムの空気の層が消えていた。
ハマリエルのからだが沈み込み、セイの渾身の剣がむなしく空を切る。
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