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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第74話 セイじゃなく、オレを狙ってたのか!
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ハマリエルの指先に一気におおきな火の玉が広がった。そのおおきさは軽自動車並くらいあった。ロワール川の中心が日がさしたかのように明るく照らされる。
『これなら腕があがらずとも、すべてを飲みこんでくれる』
炎に照らされて、ハマリエルのいびつな笑顔が浮かびあがる。
指先から火の玉が放たれた。
軽自動車ほどのおおきさの火の玉が、剣の橋の上をものすごい勢いで転がり、ラ・イールたちのほうへむかっていく。
ラ・イールの動きは速かった。避けきれないと判断し、セイを担いだまま川へ飛び込んだ。ル・バタールやザントライユもすぐに反応した。が、ラ・イールの部下は盾で火の玉を受け流そうと試みた。
ふたりの部下は一瞬で火に包まれた。火の玉は盾を跳ね飛ばしたが、勢いを緩めることはなく、リアムのほうへ向ってきた。
ちっ! セイじゃなく、オレを狙ってたのか!
リアムは突き出していた両腕の構えをとくと、左手を横になぎ払う仕草をした。空気の槌が、目の前まで迫っていた火の玉を跳ね飛ばす。火の玉は一度跳ねて、あたりを煌々と照らしながら、ロワール川のなかに落ちた。あたりの水を猛烈な勢いで蒸気に変えながらも、火の玉はその光と威力をうしなわない。
あぶねぇなぁ。直撃したらひとたまりもなかったぞ
リアムはふっーとおおきく息を吐いた。
その瞬間、頭に鋭い痛みが走った。
なんだ?
頭に手をあてようとしたが、額から上の頭の左側がなくなっていることに気づいた。どくどくと頭上から噴き出ている血が、左目をふさぐ。
その血でかすむ目に、ハマリエルが自由になった腕をこちらにむけているのが映った。
ハマリエルは余裕のある表情で笑うと、5本の指先からビームを放った。
その5本のビームは一本も外すことなく、リアムのからだを貫いた。
------------------------------------------------------------
顔にふりかかった水飛沫で、セイは飛びかかった意識を取り戻した。
が、同時に口や鼻のなかに水が入ってくるのを感じて、あわてて目を開いた。
目の前にラ・イールがいた。
そしてみるみる沈んでいっていた。
セイは状況が把握できずに、あわててあたりを見回した。
川底に沈んでいっているのは、ラ・イールだけではなかった。すこし離れたところで、ル・バタールがなにかに捉まり足を漕いでおり、ザントライユと思われる影が沈むまいと必死であがいていた。
三人とも甲冑の重みのせいで、なすすべがないのは明らかだった。
時間がない——
セイは手を上につきあげた。
とたんに体中にビリビリと痛みが走る。おもわず呻いて、口から泡とともに空気が漏れでる。
ふざけるな。苦しんでる場合じゃないっっ!
『これなら腕があがらずとも、すべてを飲みこんでくれる』
炎に照らされて、ハマリエルのいびつな笑顔が浮かびあがる。
指先から火の玉が放たれた。
軽自動車ほどのおおきさの火の玉が、剣の橋の上をものすごい勢いで転がり、ラ・イールたちのほうへむかっていく。
ラ・イールの動きは速かった。避けきれないと判断し、セイを担いだまま川へ飛び込んだ。ル・バタールやザントライユもすぐに反応した。が、ラ・イールの部下は盾で火の玉を受け流そうと試みた。
ふたりの部下は一瞬で火に包まれた。火の玉は盾を跳ね飛ばしたが、勢いを緩めることはなく、リアムのほうへ向ってきた。
ちっ! セイじゃなく、オレを狙ってたのか!
リアムは突き出していた両腕の構えをとくと、左手を横になぎ払う仕草をした。空気の槌が、目の前まで迫っていた火の玉を跳ね飛ばす。火の玉は一度跳ねて、あたりを煌々と照らしながら、ロワール川のなかに落ちた。あたりの水を猛烈な勢いで蒸気に変えながらも、火の玉はその光と威力をうしなわない。
あぶねぇなぁ。直撃したらひとたまりもなかったぞ
リアムはふっーとおおきく息を吐いた。
その瞬間、頭に鋭い痛みが走った。
なんだ?
頭に手をあてようとしたが、額から上の頭の左側がなくなっていることに気づいた。どくどくと頭上から噴き出ている血が、左目をふさぐ。
その血でかすむ目に、ハマリエルが自由になった腕をこちらにむけているのが映った。
ハマリエルは余裕のある表情で笑うと、5本の指先からビームを放った。
その5本のビームは一本も外すことなく、リアムのからだを貫いた。
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顔にふりかかった水飛沫で、セイは飛びかかった意識を取り戻した。
が、同時に口や鼻のなかに水が入ってくるのを感じて、あわてて目を開いた。
目の前にラ・イールがいた。
そしてみるみる沈んでいっていた。
セイは状況が把握できずに、あわててあたりを見回した。
川底に沈んでいっているのは、ラ・イールだけではなかった。すこし離れたところで、ル・バタールがなにかに捉まり足を漕いでおり、ザントライユと思われる影が沈むまいと必死であがいていた。
三人とも甲冑の重みのせいで、なすすべがないのは明らかだった。
時間がない——
セイは手を上につきあげた。
とたんに体中にビリビリと痛みが走る。おもわず呻いて、口から泡とともに空気が漏れでる。
ふざけるな。苦しんでる場合じゃないっっ!
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