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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第73話 エネルギーをためている?
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「リアム様、セイが!」
背後からジャンヌ・ダルクの声が聞こえた。不安に声がうわずっている。
「ああ、わかってるさ、ジャンヌ。今すぐ加勢に行きたいとこだけどね、こっちも力を緩めるわけにゃあ、いかんのよ。なにせハマリエル相手だからな」
「では、わたしたちがセイを……」
「危険だぞ」
「敵の眼前に無防備でいるのですよ」
「安心してくれ。攻撃は封じ込めているさ」
「リアム様の体力がいつまでも持つとは思えません」
「わたしたちにも手伝わせてください」
ジャンヌが懇願するような目をリアムにむけてきた。暗がりでもわかる覚悟のまなざし。リアムは到底抗えないと感じた。
「了解。だが、ジャンヌ、キミは駄目だ。キミ以外の連中でセイを岸まで連れ戻してくれ」
「あ、はい。わかりました」
ジャンヌはそう言うなり、ラ・イールに指示を与えはじめた。ラ・イールは待ってましたとばかりに、自分の部下から精鋭数名を呼び寄せ、布陣をくみはじめた。
ラ・イールは自分と部下2名、ル・バタール、そして彼がもっとも信頼している、ジャン・ポトン・ド・ザントライユを選んだ。ジル・ド・レも行きたがったが、ジャンヌに自分の警護をするように指示され、それに素直に従った。
「ラ・イール、おれの力が及んでいる限り、ハマリエルは簡単には攻撃できないはずだ。だがヤツはどんな隠し球を持っているかはわからない。危ないと思ったら、すぐに逃げてくれ」
「リアム殿。セイ殿を救うのが最優先だ。オレ様たちだけが逃げるっていう選択肢はねぇよ」
ラ・イールたちは盾を掲げながら密集陣形で、ゆっくりとセイの作った刀剣の橋を進んでいった。彼らの動きはイライラするほど慎重だったが、それでも歩を進めるたびに、足元の剣がしなり、金属同士がこすれる音がかすかに響く。
その音はハマリエルにも聞こえているはずだったが、なにも反応してこないことに、リアムは気づいた。
ハマリエルを封じ込めている中空に目をやる。
悪魔は呪縛から逃れようともがくでもなく、悪あがきのような悪態をつくでもなく、ただじっと一点を見つめているようにみえた。
先ほど攻撃をしようとしてもちあげかけた腕は、リアムの空気の層に押さえつけられ、自分の足元から1メートルほどの場所に向けられたままだ。
が、その指先が赤くなっているのがみえた。
ひとさし指の先だけがやけに明るい。
レーザーを発射しようとしている?
どこへ?
「なんかあの光、おおきくなってるような気がしますね」
ジル・ド・レがつぶやくのが聞こえた。
おおきく——?
エネルギーをためているというのか?
その瞬間、リアムはハマリエルがなにをしようとしているかに気づいた。
刀剣の橋のうえをいくラ・イールたちは、倒れているセイを今まさに持ちあげようとしているところだった。
「ラ・イール! 逃げろ! ヤツはでかいビームで狙ってくる!」
背後からジャンヌ・ダルクの声が聞こえた。不安に声がうわずっている。
「ああ、わかってるさ、ジャンヌ。今すぐ加勢に行きたいとこだけどね、こっちも力を緩めるわけにゃあ、いかんのよ。なにせハマリエル相手だからな」
「では、わたしたちがセイを……」
「危険だぞ」
「敵の眼前に無防備でいるのですよ」
「安心してくれ。攻撃は封じ込めているさ」
「リアム様の体力がいつまでも持つとは思えません」
「わたしたちにも手伝わせてください」
ジャンヌが懇願するような目をリアムにむけてきた。暗がりでもわかる覚悟のまなざし。リアムは到底抗えないと感じた。
「了解。だが、ジャンヌ、キミは駄目だ。キミ以外の連中でセイを岸まで連れ戻してくれ」
「あ、はい。わかりました」
ジャンヌはそう言うなり、ラ・イールに指示を与えはじめた。ラ・イールは待ってましたとばかりに、自分の部下から精鋭数名を呼び寄せ、布陣をくみはじめた。
ラ・イールは自分と部下2名、ル・バタール、そして彼がもっとも信頼している、ジャン・ポトン・ド・ザントライユを選んだ。ジル・ド・レも行きたがったが、ジャンヌに自分の警護をするように指示され、それに素直に従った。
「ラ・イール、おれの力が及んでいる限り、ハマリエルは簡単には攻撃できないはずだ。だがヤツはどんな隠し球を持っているかはわからない。危ないと思ったら、すぐに逃げてくれ」
「リアム殿。セイ殿を救うのが最優先だ。オレ様たちだけが逃げるっていう選択肢はねぇよ」
ラ・イールたちは盾を掲げながら密集陣形で、ゆっくりとセイの作った刀剣の橋を進んでいった。彼らの動きはイライラするほど慎重だったが、それでも歩を進めるたびに、足元の剣がしなり、金属同士がこすれる音がかすかに響く。
その音はハマリエルにも聞こえているはずだったが、なにも反応してこないことに、リアムは気づいた。
ハマリエルを封じ込めている中空に目をやる。
悪魔は呪縛から逃れようともがくでもなく、悪あがきのような悪態をつくでもなく、ただじっと一点を見つめているようにみえた。
先ほど攻撃をしようとしてもちあげかけた腕は、リアムの空気の層に押さえつけられ、自分の足元から1メートルほどの場所に向けられたままだ。
が、その指先が赤くなっているのがみえた。
ひとさし指の先だけがやけに明るい。
レーザーを発射しようとしている?
どこへ?
「なんかあの光、おおきくなってるような気がしますね」
ジル・ド・レがつぶやくのが聞こえた。
おおきく——?
エネルギーをためているというのか?
その瞬間、リアムはハマリエルがなにをしようとしているかに気づいた。
刀剣の橋のうえをいくラ・イールたちは、倒れているセイを今まさに持ちあげようとしているところだった。
「ラ・イール! 逃げろ! ヤツはでかいビームで狙ってくる!」
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