898 / 935
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第64話 傷の修復に精神力を集中させろ!
しおりを挟む
セイは飛びそうになる意識を必死で保っていた。
リアムから精神力の欠片をわけてもらっていたが、自分のダメージは自分でしか修復できないのだから、ここで意識をうしなってしまっては絶対に駄目だった。
傷の修復に精神力を集中させる。
だが、思考は別のことにをひたすら考えていた。
一撃しか喰らわなかった——
ふいをついたとはいえ、両指から連続して撃たれる可能性もあった。いや、それよりもあの光の矢をあっという間に夜空に現出してみせたのだから、一本の指からでも連発をうけてもおかしくなかったはずだ。
だがたった一撃——
一撃で充分だと思ったのか、それとも……
ふと、先ほどハマリエルが光の矢を作りだしている光景を思い出した。ひとさし指を立てて両手を空にむけて、リズミカルにふりながら、光の指弾を撃ちだしていた。
左右の指から交互に光が撃ちだされていき、光の矢となって中空に留まっていく。
両方いっぺんじゃない!
そう、ハマリエルの攻撃は両指から一緒に発射されたことはない。
ドラゴンの背中で切り落としたはずの左腕から撃たれたとき、同時に右腕から出ていない。
つまり、連続攻撃はできても、一度に発射できるのは左右の指、どちらか一方だけなのだ。交互にしか攻撃できない可能性が高い。
さきほどわざとらしく自分の弱点をさらけ出したのは、この事実を隠すためだったのかもしれない。
「リ……アムさん……」
「セイ、しゃべるな。今は回復に専念しろっ!」
「あいつ……一撃……しか……だせない……」
「は?」
「りょう……腕から……いち……どに撃て……ない」
それだけでリアムはセイの言いたいことを理解してくれたようだった。セイの胸の穴に手を押しつけたまま、なにかを思い出そうとするように左上に目をむけたかと思うと、ぼそりと呟いた。
「たしかに……そのとおりかもしれん」
セイに目をむける。
「あいつはおなじ指から続けざまにビームを出せない。いや、出せるが、そうしようとしたら、溜めの時間が生じる。まぁ、たかだがゼロ・コンマ何秒かだがな」
「ええ……」
「どうすれば……」
「もう一度……腕を斬り……落とします。それを……封じれば……」
「そうか。あいつの攻撃力は極端に弱まる」
リアムはセイの胸からゆっくりと手を離すと、様子を見ながら立ち上がった。心配そうな目をむけてはいたが、あとは何とかしろ、という合図にもみえた。
「おれが時間を稼ぐ。セイ、そのあいだに回復させろ。おまえさんの剣が必要だからな」
リアムは手の中に力を漲らせながら言った。
「おまえさんが、あいつの腕を斬ってくれりゃあ、そのあとはおれがなんとかする」
リアムから精神力の欠片をわけてもらっていたが、自分のダメージは自分でしか修復できないのだから、ここで意識をうしなってしまっては絶対に駄目だった。
傷の修復に精神力を集中させる。
だが、思考は別のことにをひたすら考えていた。
一撃しか喰らわなかった——
ふいをついたとはいえ、両指から連続して撃たれる可能性もあった。いや、それよりもあの光の矢をあっという間に夜空に現出してみせたのだから、一本の指からでも連発をうけてもおかしくなかったはずだ。
だがたった一撃——
一撃で充分だと思ったのか、それとも……
ふと、先ほどハマリエルが光の矢を作りだしている光景を思い出した。ひとさし指を立てて両手を空にむけて、リズミカルにふりながら、光の指弾を撃ちだしていた。
左右の指から交互に光が撃ちだされていき、光の矢となって中空に留まっていく。
両方いっぺんじゃない!
そう、ハマリエルの攻撃は両指から一緒に発射されたことはない。
ドラゴンの背中で切り落としたはずの左腕から撃たれたとき、同時に右腕から出ていない。
つまり、連続攻撃はできても、一度に発射できるのは左右の指、どちらか一方だけなのだ。交互にしか攻撃できない可能性が高い。
さきほどわざとらしく自分の弱点をさらけ出したのは、この事実を隠すためだったのかもしれない。
「リ……アムさん……」
「セイ、しゃべるな。今は回復に専念しろっ!」
「あいつ……一撃……しか……だせない……」
「は?」
「りょう……腕から……いち……どに撃て……ない」
それだけでリアムはセイの言いたいことを理解してくれたようだった。セイの胸の穴に手を押しつけたまま、なにかを思い出そうとするように左上に目をむけたかと思うと、ぼそりと呟いた。
「たしかに……そのとおりかもしれん」
セイに目をむける。
「あいつはおなじ指から続けざまにビームを出せない。いや、出せるが、そうしようとしたら、溜めの時間が生じる。まぁ、たかだがゼロ・コンマ何秒かだがな」
「ええ……」
「どうすれば……」
「もう一度……腕を斬り……落とします。それを……封じれば……」
「そうか。あいつの攻撃力は極端に弱まる」
リアムはセイの胸からゆっくりと手を離すと、様子を見ながら立ち上がった。心配そうな目をむけてはいたが、あとは何とかしろ、という合図にもみえた。
「おれが時間を稼ぐ。セイ、そのあいだに回復させろ。おまえさんの剣が必要だからな」
リアムは手の中に力を漲らせながら言った。
「おまえさんが、あいつの腕を斬ってくれりゃあ、そのあとはおれがなんとかする」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる