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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第47話 デケぇな。ちょっとスケールまちがえている
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セイは精いっぱいの力で地面を蹴ると、水面からからだ半分もちあがってきたドラゴンの背中に飛び移った。
ドラゴンの背中は想像以上におおきく、バスケットボールのコートほどもあった。
「デカイ!」
「ああ、デケぇな。ちょっとスケールまちがえている感じだな」
「それだけトラウマの能力が高い、ってことでしょうか?」
「それか、たんなる、ええかっこしい、ってとこだな」
「あなたですか、わが輩に不意打ちをくらわせたのは」
ドラゴンの首元付近から声が響いた。声のなかに雑味のある重低音がまじる。まるでスーパーウーハーで低音をブーストしたようにも感じる。
タルボットが姿をあらわした。
「あなたがた、この世界の者ではないですね」
「ああ。タルボットさん、21世紀からダイブしてきた。あんたがここの黒幕かい」
「黒幕? わが輩はこの時代を統べる者のひとりです」
「この時代って……ずいぶんおおきい口を叩くじゃない。いったいどの時代さ」
「さあ…… 区切りは知りません。ですがあなたがたが『中世』と呼んでいる時代を担当しております」
セイはリアムとタルボットが話をしているあいだに、ドラゴンがゆっくりと空へあがっていっているのを感じていた。地上に戻るには危険な高度だった。
「リアムさん、まずいよ。もうずいぶん空へあがってる。ここらで降りないと……」
「セイ、わかってる。あまりにつよいダメージを受けると、むこうにいる本体に影響を与えるからな。だがおれたちは精神体だ。死にゃあしねぇ……」
「死にますよ」
タルボットがすごんだ。脅すような声でも、激しい口調でもなく、ただボソリと呟いただけだったが、セイはみぞおちに拳を叩き込まれたほどの衝撃を受けた。
「知らないのですか? この世界で死ねば、あなたがたは死ぬのですよ」
セイはリアムの顔をみた。暗闇のなかではっきりと表情は読み取れなかったが、すくなくとも、そこに余裕のようなものはなかった。
「わが輩は今まで、あなたがたのような未来から来たという輩を、ずいぶん葬ってきましたからね」
「そんなの聞いたことがない!」
セイはタルボットのたわごとに振り回されまいと、つよい口調で否定した。
「それは運がいい…… いえ、その運も今日で尽きたというべきでしょうか」
「ぼくらは精神体だ。いくらダメージを受けても、元の世界のからだに影響はない。あっても頭痛や嘔吐感、かるい記憶障害や気力減退、とかそういうものだけのはずだ」
「少年……いや、セイ、と言いましたか……あなたはどうにも弱い部下たちと、遭遇していたようですね」
「弱い……? 部下……?」
「ええ。あなたに自分は『死なない』と思わせるほど、戦った相手は弱かったのでしょうね」
「弱い? そんなはずはない。どの敵もそれなりに苦戦した」
「苦戦? あなたに死を思い起こさせないような部下が、つよいわけがないでしょう……」
そう言いながらタルボットは右手の指先をセイのほうへ突き出した。
その瞬間、セイのからだがうしろへはね飛ばされた。セイのからだが中空を舞い、ドラゴンの背中から放りだされそうになる。
が、セイのすぐうしろに空気の壁が現われ、ぎりぎりのところで留まった。
セイはドラゴンの尻尾の根元部分でふらふらとたちあがった。背後に現出した空気の壁にチラリと目をやってから言った。
「リアムさん、助かりました」
リアムの顔が強ばっているのがわかった。
「リアム……」
そう言いかけて、自分のからだの異変に気づいた。
セイの左腕が根元からなくなっていた。
うれしそうな表情を満面に浮かべて、タルボットが叫んだ。
「我が名はハマリエル! 黄道十二宮に属する者です」
ドラゴンの背中は想像以上におおきく、バスケットボールのコートほどもあった。
「デカイ!」
「ああ、デケぇな。ちょっとスケールまちがえている感じだな」
「それだけトラウマの能力が高い、ってことでしょうか?」
「それか、たんなる、ええかっこしい、ってとこだな」
「あなたですか、わが輩に不意打ちをくらわせたのは」
ドラゴンの首元付近から声が響いた。声のなかに雑味のある重低音がまじる。まるでスーパーウーハーで低音をブーストしたようにも感じる。
タルボットが姿をあらわした。
「あなたがた、この世界の者ではないですね」
「ああ。タルボットさん、21世紀からダイブしてきた。あんたがここの黒幕かい」
「黒幕? わが輩はこの時代を統べる者のひとりです」
「この時代って……ずいぶんおおきい口を叩くじゃない。いったいどの時代さ」
「さあ…… 区切りは知りません。ですがあなたがたが『中世』と呼んでいる時代を担当しております」
セイはリアムとタルボットが話をしているあいだに、ドラゴンがゆっくりと空へあがっていっているのを感じていた。地上に戻るには危険な高度だった。
「リアムさん、まずいよ。もうずいぶん空へあがってる。ここらで降りないと……」
「セイ、わかってる。あまりにつよいダメージを受けると、むこうにいる本体に影響を与えるからな。だがおれたちは精神体だ。死にゃあしねぇ……」
「死にますよ」
タルボットがすごんだ。脅すような声でも、激しい口調でもなく、ただボソリと呟いただけだったが、セイはみぞおちに拳を叩き込まれたほどの衝撃を受けた。
「知らないのですか? この世界で死ねば、あなたがたは死ぬのですよ」
セイはリアムの顔をみた。暗闇のなかではっきりと表情は読み取れなかったが、すくなくとも、そこに余裕のようなものはなかった。
「わが輩は今まで、あなたがたのような未来から来たという輩を、ずいぶん葬ってきましたからね」
「そんなの聞いたことがない!」
セイはタルボットのたわごとに振り回されまいと、つよい口調で否定した。
「それは運がいい…… いえ、その運も今日で尽きたというべきでしょうか」
「ぼくらは精神体だ。いくらダメージを受けても、元の世界のからだに影響はない。あっても頭痛や嘔吐感、かるい記憶障害や気力減退、とかそういうものだけのはずだ」
「少年……いや、セイ、と言いましたか……あなたはどうにも弱い部下たちと、遭遇していたようですね」
「弱い……? 部下……?」
「ええ。あなたに自分は『死なない』と思わせるほど、戦った相手は弱かったのでしょうね」
「弱い? そんなはずはない。どの敵もそれなりに苦戦した」
「苦戦? あなたに死を思い起こさせないような部下が、つよいわけがないでしょう……」
そう言いながらタルボットは右手の指先をセイのほうへ突き出した。
その瞬間、セイのからだがうしろへはね飛ばされた。セイのからだが中空を舞い、ドラゴンの背中から放りだされそうになる。
が、セイのすぐうしろに空気の壁が現われ、ぎりぎりのところで留まった。
セイはドラゴンの尻尾の根元部分でふらふらとたちあがった。背後に現出した空気の壁にチラリと目をやってから言った。
「リアムさん、助かりました」
リアムの顔が強ばっているのがわかった。
「リアム……」
そう言いかけて、自分のからだの異変に気づいた。
セイの左腕が根元からなくなっていた。
うれしそうな表情を満面に浮かべて、タルボットが叫んだ。
「我が名はハマリエル! 黄道十二宮に属する者です」
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