875 / 935
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第41話 ぼくの力(ギフト)は……
しおりを挟む
「『風』にゃあ負ける部分もあるが、空気を塊にしてぶつけりゃ、ちょっとした見えない大砲みたいなもんでね」
「リアムさん、砦を……砦の上のひとたちを助けてください」
セイはレ・トゥーレル要塞のほうを指さして叫んだ。リアムは目をすがめながら要塞のほうをみた。
「いいけど……セイ、きみはこちらの兵士をなんとかできそうかね」
「はい。両方いっぺんに救うのは難しいですが、こちらの敵だけなら……」
「ほんとうかい? けっこういるし、どいつもつよいぜ。セイ、きみの『力』はなんだ?」
セイは空にむかって手をつきあげながら言った。
「ぼくがはじめて前世にダイブしたときに願ったのは……」
セイの頭上の空間にぽっかりと穴があいて、そこから数百本の剣がゆっくりと現出しようとしていた。
「ほう……これはこれは」
リアムが空に浮かんだ剣を見あげながら感嘆の声をつぶやいた。
「そう。ぼくが願ったのは『武器』です」
セイは妹の冴の前世に一緒に飛び込んだときのことを思い出していた。
沈みかかったタイタニック号の甲板の上で、なにか得体のしれない脅威を感じて、なにか武器が欲しい、と願ったのだ。
「武器ねぇ。にしてもエゲツない量じゃないのさぁ」
「そうですか? ぼくにはリアムさんの見えない武器のほうが、そうとうエゲツないと思いますよ」
「言ってくれるね。でもそんだけの能力者なら、なんとかできそうだな」
リアムはくるりと背をむけると、「んじゃあ、あとは頼むね」と言うなり、ポーンと一発で砦の上まで飛び上がった。
人間離れした跳躍力をまのあたりにして、ラ・イールとル・バタールが口々に叫んだ。
「あ、あやつはなにものだ?」
「セイ、あの御仁は味方なのか?」
セイは自分のうしろであたふたしている様子には目もくれず、宙に浮かばせた剣に精神を集中させた。リアムが数十人を排除したとはいえ、まだイングランド兵のゾンビは100人近くいて、いたるところでフランス兵が追い詰められていた。
兵たちはお互いに背中を預けながら剣を構えて、ゆっくり近づいてくる黒い兵士を牽制していた。だが、圧倒的な力と一種の魔力をまとった死人の前には、むなしい努力であるのは間違いなかった。
黒い兵士たちが取り囲んだフランス兵たちに襲いかかった。
セイは挙げていた手を振り降ろした。
空に待機していた剣が剣先を下にして、急降下していき黒い兵士たちを串刺しにした。だが、鎧を身につけた騎士には通用しない。
セイの仕掛けた剣がはじき返される、ガコンという金属音がいたるところで響きわたる。
「リアムさん、砦を……砦の上のひとたちを助けてください」
セイはレ・トゥーレル要塞のほうを指さして叫んだ。リアムは目をすがめながら要塞のほうをみた。
「いいけど……セイ、きみはこちらの兵士をなんとかできそうかね」
「はい。両方いっぺんに救うのは難しいですが、こちらの敵だけなら……」
「ほんとうかい? けっこういるし、どいつもつよいぜ。セイ、きみの『力』はなんだ?」
セイは空にむかって手をつきあげながら言った。
「ぼくがはじめて前世にダイブしたときに願ったのは……」
セイの頭上の空間にぽっかりと穴があいて、そこから数百本の剣がゆっくりと現出しようとしていた。
「ほう……これはこれは」
リアムが空に浮かんだ剣を見あげながら感嘆の声をつぶやいた。
「そう。ぼくが願ったのは『武器』です」
セイは妹の冴の前世に一緒に飛び込んだときのことを思い出していた。
沈みかかったタイタニック号の甲板の上で、なにか得体のしれない脅威を感じて、なにか武器が欲しい、と願ったのだ。
「武器ねぇ。にしてもエゲツない量じゃないのさぁ」
「そうですか? ぼくにはリアムさんの見えない武器のほうが、そうとうエゲツないと思いますよ」
「言ってくれるね。でもそんだけの能力者なら、なんとかできそうだな」
リアムはくるりと背をむけると、「んじゃあ、あとは頼むね」と言うなり、ポーンと一発で砦の上まで飛び上がった。
人間離れした跳躍力をまのあたりにして、ラ・イールとル・バタールが口々に叫んだ。
「あ、あやつはなにものだ?」
「セイ、あの御仁は味方なのか?」
セイは自分のうしろであたふたしている様子には目もくれず、宙に浮かばせた剣に精神を集中させた。リアムが数十人を排除したとはいえ、まだイングランド兵のゾンビは100人近くいて、いたるところでフランス兵が追い詰められていた。
兵たちはお互いに背中を預けながら剣を構えて、ゆっくり近づいてくる黒い兵士を牽制していた。だが、圧倒的な力と一種の魔力をまとった死人の前には、むなしい努力であるのは間違いなかった。
黒い兵士たちが取り囲んだフランス兵たちに襲いかかった。
セイは挙げていた手を振り降ろした。
空に待機していた剣が剣先を下にして、急降下していき黒い兵士たちを串刺しにした。だが、鎧を身につけた騎士には通用しない。
セイの仕掛けた剣がはじき返される、ガコンという金属音がいたるところで響きわたる。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる