ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜

多比良栄一

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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜

第37話 あなたがたでは歯が立ちません

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「なにを言っている、セイ。さがっていろ」
 ル・バタールがすこしとがめるような口調で言った。

「ああ、セイ殿。小姓が手に負える相手ではないぞ……」
 ラ・イールもル・バタールに同調する。が、蘇ったイングランド兵が尋常ではないものであると、直感しているようだった。
「オレ様たちでも手に負えるかどうかもわからんがな」


 グラスデールたちが水の上を滑るようにして、こちらへむかってくる。
 セイは手のひらを頭上にむけた。するとそのすぐ上の空間にぽっかりと穴が開いて、なかに暗黒を思わせる空間が現われた。

『日本刀じゃあ、簡単にへし折られるかな』

 ジャンヌが腰につけている剣にちらりと目をやると、手に力をこめた。空間のなかから大剣の柄がぬっと姿を現わした。
 グラスデールたちは岸にたどりつくと、ゆっくりとこちらにむかって歩いてきた。
「みんな気をつけて!」

 そう注意を促した瞬間、グラスデールの3人の部下たちが、あきらかに人間のものではないスピードで攻撃してきた。3人はル・バタール、ジル・ド・レ、ラ・イールをそれぞれ狙っていた。
 が、まったく反応できなかった。
 剣の達人ラ・イールでさえ、柄に手をかけるのが精いっぱいだった。

 キン、キン、キン!!

 セイは暗雲のなかから3本の剣を引き抜いて、瞬時に3人の前に繰り出していた。3人の黒い騎士たちが打ち下ろしたすべての剣を、セイの太刀が見事に阻んでいた。

「な、なにが起きてる……」

 目の前に浮かんでいる剣をみて、ジル・ド・レが呟いた。
「た、助けられたのか……」
 黒騎士の振り降ろした剣を受けとめている、空中の剣をみてル・バタールがくちびるをふるわせた。
「オレ様が剣を抜けなかっただとぉ」
 剣を抜きながらラ・イールが言った。自分の不甲斐なさに、いきどおっているようで、機嫌がわるそうな口調だった。

「ラ・イール、ル・バタール、ジル・ド・レ、下がりなさい。あなたがたでは歯が立ちません」
 ジャンヌ・ダルクが厳しい口調で言った。だがまだ驚きを隠しきれず、その目はおおきく見開いたままだった。

「これは神の子、セイの相手です」

「いや、しかし、ジャンヌ。セイはただの小姓ではないのかい」
 ジル・ド・レがうしろに下がりながらくいさがる。

「はい。わたしの小姓です。ですが、『ただの』ではありません」
 ジャンヌがセイに目配せしながら言った。

「未来からきたわたしの守護神です」

「ラ・イール、下がって!」
 セイはそう叫ぶなり、ラ・イールに刃をむけている兵士にむかって飛びかかった。セイは空中に呼びだした空間から、日本刀を抜き出すと、兵士にむかって剣をふるった。
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