853 / 935
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第19話 確かに神に導かれた人かもしれん
しおりを挟む
「まわりをよく見なさい。この軍隊がなんの役にたたない集団に見えますか? 兵たちはもう先ほどまでとはちがっていますよ。みな神のご加護を与えられたのです」
ジャンヌは手をひろげて、まわりの兵たちを指し示した。
「わたしの目にはあなたたちの本当の姿が見えています。愛国心に満ちあふれた、神に選ばれし軍隊になることがわかっているのです。わたしはあなたたちを率いていけることを誇らしく思っています」
だれもがジャンヌのことばに、きょとんとしていた。
「もしかして、わたしの目がおかしいのでしょうか?」
ジャンヌがちょっととまどったように、眉根をよせた。
うわははははははは……
突然、ラ・イールがおおきな笑い声をあげた。
「まいった、まいった。おまえさんは確かに神に導かれた人かもしれん」
ふたりを取り巻いていた緊張が解け、まわりの兵士や司令官たちの表情がやわらいだ。一触即発にそなえていたセイも、おもわず脱力する。
ラ・イールがにっこりと笑って、ジャンヌのほうへ手をさしだした。
「オレ様はフランス国王軍傭兵隊長エティエンヌ・ド・ヴィニョール。あまりに怒りっぽいんでな。みんなからは、ラ・イール(怒り)と呼ばれている」
「そうでしょうね。だって、一番笑い顔がステキなんですもの」
「ステキ?」
「表情ゆたかな人は、よく怒ります」
ドッとあたりに笑いがはじけた。
「あの方はとても不思議な人ですね」
セイに声をかけてきたのは、ジル・ド・レだった。
「あ、元帥様。ぼくはジャンヌの小姓をやっております、セイと申します」
セイは反射的にかしこまってみせたが、ジルは手をふりながら言った。
「そんなにかしこまらないでくれないか。それでなくても若いぼくは、ここじゃあ腫れ物のように扱われているんだ。年の近いきみのような少年と、話をするときくらい、もっとフランクに話せたらって思ってる」
「ありがとうございます。では、ジル様」
「ジルさ……ま…… ん、まぁ、しかたないだろう。それでいいよ。ところでセイ、きみはジャンヌのことをどう思ってる?」
「というと?」
「彼女は本物の聖女なのだろうかってことだ。ぼくは本物にしか見えないし、そう信じたい。ちかくにいるきみの意見を聞ければ……」
「本物ですよ。ジル様」
セイは自信をもって断言した。
「ジャンヌはオルレアンを解放し、イングランド軍を駆逐し、フランス王太子を即位させます」
ジルの目がおおきく見開かれた。
「おお、そうなのか。そこまで自信をもって言ってもらえると、ぼくも高揚するなぁ。で、そのあとどうなるんだい」
「それは……それは知らないほうがいい」
「ど、どういう……ことなんだ」
「ご心配なく、ジル様。ジャンヌはぼくが守ります。どんな苦難が襲いかかってきても、ぼくがかならず。そのためにぼくはここにいるんですから」
ジャンヌは手をひろげて、まわりの兵たちを指し示した。
「わたしの目にはあなたたちの本当の姿が見えています。愛国心に満ちあふれた、神に選ばれし軍隊になることがわかっているのです。わたしはあなたたちを率いていけることを誇らしく思っています」
だれもがジャンヌのことばに、きょとんとしていた。
「もしかして、わたしの目がおかしいのでしょうか?」
ジャンヌがちょっととまどったように、眉根をよせた。
うわははははははは……
突然、ラ・イールがおおきな笑い声をあげた。
「まいった、まいった。おまえさんは確かに神に導かれた人かもしれん」
ふたりを取り巻いていた緊張が解け、まわりの兵士や司令官たちの表情がやわらいだ。一触即発にそなえていたセイも、おもわず脱力する。
ラ・イールがにっこりと笑って、ジャンヌのほうへ手をさしだした。
「オレ様はフランス国王軍傭兵隊長エティエンヌ・ド・ヴィニョール。あまりに怒りっぽいんでな。みんなからは、ラ・イール(怒り)と呼ばれている」
「そうでしょうね。だって、一番笑い顔がステキなんですもの」
「ステキ?」
「表情ゆたかな人は、よく怒ります」
ドッとあたりに笑いがはじけた。
「あの方はとても不思議な人ですね」
セイに声をかけてきたのは、ジル・ド・レだった。
「あ、元帥様。ぼくはジャンヌの小姓をやっております、セイと申します」
セイは反射的にかしこまってみせたが、ジルは手をふりながら言った。
「そんなにかしこまらないでくれないか。それでなくても若いぼくは、ここじゃあ腫れ物のように扱われているんだ。年の近いきみのような少年と、話をするときくらい、もっとフランクに話せたらって思ってる」
「ありがとうございます。では、ジル様」
「ジルさ……ま…… ん、まぁ、しかたないだろう。それでいいよ。ところでセイ、きみはジャンヌのことをどう思ってる?」
「というと?」
「彼女は本物の聖女なのだろうかってことだ。ぼくは本物にしか見えないし、そう信じたい。ちかくにいるきみの意見を聞ければ……」
「本物ですよ。ジル様」
セイは自信をもって断言した。
「ジャンヌはオルレアンを解放し、イングランド軍を駆逐し、フランス王太子を即位させます」
ジルの目がおおきく見開かれた。
「おお、そうなのか。そこまで自信をもって言ってもらえると、ぼくも高揚するなぁ。で、そのあとどうなるんだい」
「それは……それは知らないほうがいい」
「ど、どういう……ことなんだ」
「ご心配なく、ジル様。ジャンヌはぼくが守ります。どんな苦難が襲いかかってきても、ぼくがかならず。そのためにぼくはここにいるんですから」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる