852 / 935
ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第18話 傭兵の司令官ラ・イール
しおりを挟む
「生まれのいいおまえさんとちがって、ガスコン人のオレ様はこんな生き様で、ここまできてるからな。おまえさんはオレ様からみりゃ、別世界のお方なのさ。だから……」
ラ・イールのイメージミニチュア
ラ・イールの悪態がとまった。
ジャンヌがラ・イールの元にかけより、その足元にひざまずいたからだ。
「なんだ、おい!」
「ラ・イール様。足をわるくされているのに、この戦いに加わっていただけるとは、なんとフランス思いなのでしょうか」
そう声をかけながら、ジャンヌがラ・イールの脚に触れようと手を伸ばした。
「おい、おい、触らんでくれるか。メス臭いにおいが移っちまうだろうがぁ」
杖でジャンヌの手を制した。
「におい? まぁ、お鼻までわるくされたのでしょうか?」
ラ・イールの顔色が曇っていくのが、遠めにもわかった。
「敗戦続きで疲れているのかもしれませんね」
慈しみにあふれた口調だったが、ラ・イールを怒らせるには充分だった。
「なにぃ!」
すでに顔は真っ赤になり、いまにもジャンヌに危害を加えそうだった。
まずい——
セイは拳に力をみなぎらせた。横目でちらりとみると、メスも剣の柄に手をかけていた。
「ああ、よかった」
ジャンヌはラ・イールを仰ぎみながら微笑んだ。
「もうあなたは負けることはないのですから。どんなからだの不調もすぐによくなりますわ」
「負けない……だとぉ」
「はい。あなたは神に選ばれし軍隊の一員なのですから」
「まったく! 王太子様も、ここにいるヤツラも、どいつもこいつも小娘の戯れ言にだまされよって」
「わたしのことばではございません。わたしは『声』に導かれて、いまここにいるのです。神のご意志をお伝えしているだけです」
「は、フランスを救うのが神の意志っていうのなら、オレたちが戦わずともフランスは解放されるはずだ」
「【天は自ら助くる者を助く】でしょ。神様が勝利をお与えになるのは、神様の御名において、あなた達が戦うからなのです」
「ならば、おまえが神の使いだという証を見せてみろ」
「えぇ、オルレアンにいけばそこで証をお見せしましょう」
「くそったれ」
「ここは神の軍隊です! そんな汚らしいことばを使うのは許しません!」
「神の軍隊なものか! 荒くれ者だらけの統率のとれねぇ、くそったれの集まりだ」
「慎みなさい。そんな汚らしいことばを口にしてはなりません!」
ジャンヌはラ・イールを厳しい表情で睨みつけて言った。
ラ・イールのイメージミニチュア
ラ・イールの悪態がとまった。
ジャンヌがラ・イールの元にかけより、その足元にひざまずいたからだ。
「なんだ、おい!」
「ラ・イール様。足をわるくされているのに、この戦いに加わっていただけるとは、なんとフランス思いなのでしょうか」
そう声をかけながら、ジャンヌがラ・イールの脚に触れようと手を伸ばした。
「おい、おい、触らんでくれるか。メス臭いにおいが移っちまうだろうがぁ」
杖でジャンヌの手を制した。
「におい? まぁ、お鼻までわるくされたのでしょうか?」
ラ・イールの顔色が曇っていくのが、遠めにもわかった。
「敗戦続きで疲れているのかもしれませんね」
慈しみにあふれた口調だったが、ラ・イールを怒らせるには充分だった。
「なにぃ!」
すでに顔は真っ赤になり、いまにもジャンヌに危害を加えそうだった。
まずい——
セイは拳に力をみなぎらせた。横目でちらりとみると、メスも剣の柄に手をかけていた。
「ああ、よかった」
ジャンヌはラ・イールを仰ぎみながら微笑んだ。
「もうあなたは負けることはないのですから。どんなからだの不調もすぐによくなりますわ」
「負けない……だとぉ」
「はい。あなたは神に選ばれし軍隊の一員なのですから」
「まったく! 王太子様も、ここにいるヤツラも、どいつもこいつも小娘の戯れ言にだまされよって」
「わたしのことばではございません。わたしは『声』に導かれて、いまここにいるのです。神のご意志をお伝えしているだけです」
「は、フランスを救うのが神の意志っていうのなら、オレたちが戦わずともフランスは解放されるはずだ」
「【天は自ら助くる者を助く】でしょ。神様が勝利をお与えになるのは、神様の御名において、あなた達が戦うからなのです」
「ならば、おまえが神の使いだという証を見せてみろ」
「えぇ、オルレアンにいけばそこで証をお見せしましょう」
「くそったれ」
「ここは神の軍隊です! そんな汚らしいことばを使うのは許しません!」
「神の軍隊なものか! 荒くれ者だらけの統率のとれねぇ、くそったれの集まりだ」
「慎みなさい。そんな汚らしいことばを口にしてはなりません!」
ジャンヌはラ・イールを厳しい表情で睨みつけて言った。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる