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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜
第5話 トラウマの気配がする
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セイが降りたった場所は城門の前だった。
あきらかにヨーロッパ風の城だったが、そこにエレガントさやロマンを感じさせるたたずまいはなかった。それはむしろ城塞と形容したほうが良いもので、物見櫓があり、石落としのような仕掛けがみてとれた。
ずいぶんものものしいな
セイは武装した門番に見つからないよう、死角に回り込むと強力な跳躍力でひょいと城壁を飛び越えた。
中庭に着地すると、立木にからだを隠して、あたりを見回した。
あの建物だ
城の西側にある3階建ての塔に、セイは目をむけた。それは城中の最大の建物で、主塔と思われるものだった。
セイはあたりを慎重に見回しながら、ゆっくりと塔へ近づくと、ふと不穏な空気を感じた。
どういうことだ?
トラウマの気配がする。
ハッとしてセイは塔のなかへ飛び込んだ。
そこになにかと戦っている騎士たちの姿があった。
そのなにかは、騎士同様甲冑を身にまとっていたが、あきらかに人間ならざる動きをしていた。天井まで届きそうなほどの跳躍をし、壁を地面のように走り、目で追えないほどのスピードで剣をくりだしていた。
そのからだは黒い靄に包まれ、強烈な邪気を漂わせていた。
すでに数人の騎士がそいつらに倒され、床に転がっている。
トラウマか!
セイは手を横に伸ばすと、空中にぽっかりと開いた空間から日本刀を取り出した。
が、すぐにこの場にそぐわないことに気づいて、日本刀を投げ捨てると、もう一度空間の穴に手を突っ込んだ。
今度はぶ厚い刃の長剣が出現した。
セイは剣を引き抜くやいなや、おおきくジャンプして、天井を歩いている黒騎士にむかって剣をふりぬいた。ガコンという鋼を叩く音がして、黒騎士の頭が刎ねとんだ。
セイは床に着地すると、今度は騎士と剣を交えている黒騎士を背後から斬りつけた。さらに横飛びでからだを沈めたまま、その隣で別の騎士にとどめをさそうとする黒騎士の足をなぎ払った。
すね当てに邪魔されて切断することはできなかったが、足を真横にへし折ることで、渾身の一撃に空を切らせることができた。膝からぽっきり折れて、黒騎士の上半身が床にバタリと倒れ込む。
そのとき兜ののぞき窓が開いて、黒騎士の顔が垣間みえた。
骸骨だった——
やはり人間じゃなかったね。
「少年、気をつけろ。囲まれるぞ」
さきほど助けた騎士が兜の目隠しをはねあげて叫んだ。
あきらかにヨーロッパ風の城だったが、そこにエレガントさやロマンを感じさせるたたずまいはなかった。それはむしろ城塞と形容したほうが良いもので、物見櫓があり、石落としのような仕掛けがみてとれた。
ずいぶんものものしいな
セイは武装した門番に見つからないよう、死角に回り込むと強力な跳躍力でひょいと城壁を飛び越えた。
中庭に着地すると、立木にからだを隠して、あたりを見回した。
あの建物だ
城の西側にある3階建ての塔に、セイは目をむけた。それは城中の最大の建物で、主塔と思われるものだった。
セイはあたりを慎重に見回しながら、ゆっくりと塔へ近づくと、ふと不穏な空気を感じた。
どういうことだ?
トラウマの気配がする。
ハッとしてセイは塔のなかへ飛び込んだ。
そこになにかと戦っている騎士たちの姿があった。
そのなにかは、騎士同様甲冑を身にまとっていたが、あきらかに人間ならざる動きをしていた。天井まで届きそうなほどの跳躍をし、壁を地面のように走り、目で追えないほどのスピードで剣をくりだしていた。
そのからだは黒い靄に包まれ、強烈な邪気を漂わせていた。
すでに数人の騎士がそいつらに倒され、床に転がっている。
トラウマか!
セイは手を横に伸ばすと、空中にぽっかりと開いた空間から日本刀を取り出した。
が、すぐにこの場にそぐわないことに気づいて、日本刀を投げ捨てると、もう一度空間の穴に手を突っ込んだ。
今度はぶ厚い刃の長剣が出現した。
セイは剣を引き抜くやいなや、おおきくジャンプして、天井を歩いている黒騎士にむかって剣をふりぬいた。ガコンという鋼を叩く音がして、黒騎士の頭が刎ねとんだ。
セイは床に着地すると、今度は騎士と剣を交えている黒騎士を背後から斬りつけた。さらに横飛びでからだを沈めたまま、その隣で別の騎士にとどめをさそうとする黒騎士の足をなぎ払った。
すね当てに邪魔されて切断することはできなかったが、足を真横にへし折ることで、渾身の一撃に空を切らせることができた。膝からぽっきり折れて、黒騎士の上半身が床にバタリと倒れ込む。
そのとき兜ののぞき窓が開いて、黒騎士の顔が垣間みえた。
骸骨だった——
やはり人間じゃなかったね。
「少年、気をつけろ。囲まれるぞ」
さきほど助けた騎士が兜の目隠しをはねあげて叫んだ。
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